崩壊と絶望
「あれからもう一ヶ月ですよ!
何も情報をつかめていないんですか!?
警察なのに!」
「まぁまあ落ち着いてください前川さん」
「石橋さんすみません」
「いや大丈夫です。
それからこちらの方も申し訳ない気持ちでいっぱいです。
本当にすみません。
前にも言いましたように、操作は慎重にならざるを得ませんから」
「そのことで一つ私から提案があります」
「どのような提案なのでしょうか前川さん」
石橋は目を見開いて言った。
浩一は目を細めた。
鋭い眼差しだった。
「前にも申し上げましたが、私は三井恭平の父三井陽平と面識があります。
そこで一度私と三井で石橋さんと会いたいのですがどうでしょうか?」
石橋は少し考えて言った。
「私は構いませんが奥さんはよろしいのですか?」
浩一は慌てて妻の方を見た。
幸い、浩一が見た時にはぁりはなしは聞いたらいなかったらしく浩一は安心した。
そして石橋との話を続けた。
「少し疲れましたね。
少しこの部屋から離れませんか?」
そう言って浩一は立ち上がり石橋の方により紙を渡した。
その紙にはこう書かれていた。
私と三井の妻は精神を病んでしまっている。
まともな話はできない。
外でもう少し話をしたい。
石橋もその紙を見ると立ち上がり外に出た。
そして別室に移動して浩一と話を続けた。
「無理を言ってすみません。
ただ妻には聞いて欲しくなかったものですから」
「いえ大丈夫ですよ。
それで前川さんも何かわかったことがあるのですか?」
「はい。
先日石橋さんに教えていただいた私が買収した会社の退任した社長の身辺を調べていたんですが、とんでもない事実がわかりました。
実はその社長の夫の弟が私の会社の役員をしていました。
本人に話を聞くと私に恨みはないそうです。
しかし兄夫婦は違うそうです。
つまり私を恨んでいるということです。
三井にも色々と調べてもらいました。
わかったことがあるそうです。
そこで明日三井と伺っても大丈夫でしょうか?」
「なぜそこまで慌てているのでしょう?」
石橋は冷静に聞いた。
「私と三井の妻の精神状態がおかしくなっていつ、それが爆発するかわからないんです。
私としてはそれは不本意だ。
それと警察でも何かわかったことがあるんでしょう?」
「はい。
お伝えします。
裏野ランドを調べている際に設計図を見せて貰いましてね、一つわかったことがあるんです。
あのランドには公式にある設計図にも載っていない地下空間があるそうなんです。
そしてそれがあるのがドリームキャッスルの真下だそうです。
一応複数の建築家にも見ていただきましたがどうやら本当のことのようです。
この地下空間が大きな鍵を握ると私は考えています。
捜査を入れるには証拠もない。
証拠がなければ裁判所の令状も取れません。
もう少し時間がかかりそうです」
浩一はしっかりと聞いていた。
そして神妙な表情をして言った。
「地下空間ですか…
あの遊園地の都市伝説は本当なのかもしれませんね。
それが意図して出た情報なのかそれとも偶然誰かがふざけて出したでまかせなのかは分かりませんが」
石橋はその話に相槌を打った。
「私もそう思います。
しかし手がかりがつかめない。
とりあえず今日は終わりましょうか。
これ以上長くなると奥さんも心配されるんじゃないですか?」
「そうですね。
それでは明日もよろしくお願いします。
場所もこちらでよろしいですよね?」
「構いません」
そうして前川夫妻は警察署を出た。
妻は浩一に聞いた。
「石橋さんと何を話していたの?
私に話せないことなの?」
「警察と私以外に知られてはいけないことをはなしていた。
心配はいらないよ。
絶対に優太は無事だから」
優しく浩一は答えた。
「私、信じていいの?」
「信じても大丈夫。
俺も今全てを使って調べてる。
まだ確証がないから話せないけど色々とわかったことがあるんだ」
そんな会話をしながら二人は家に帰っていった。
翌日は晴れていた。
しかし妻の気持ちが晴れることは無かった。
優太のいる時の前川家はおはようから始まっていた。
そしてご飯の時は話をする。
そんな明るい家庭だった。
しかし優太が誘拐されてからは前川家からは笑顔と会話がなくなってしまった。
妻の疲れによる精神的なものも大きかった。
浩一は妻を精神科にも連れていった。
診断結果は、軽い鬱。
今では精神安定剤を常用している。
朝ごはんを食べ終えると浩一は警察署に出かけた。
「あなた、いってらっしゃい」
「あぁいってくる」
普通のやりとりだった。
浩一は家を出て車に乗ると独り言を言った。
「三井の家に行ってあいつと一緒に行くのか。
三井は大丈夫かな…」
「社長どうかされましたか?」
その声の主は浩一の車の運転手だった。
「いやなんでもない。
それよりも無理言ってすまない」
「いえいえ構いませんよ。
これも仕事ですし何よりも優太くんの命の危機ですから…」
「ありがとう。
妻もあんな状態だからなかなか難しいんだ」
「そうですか。
それでは今日の予定の確認ですが、三井氏の自宅に行き三井氏を乗せて警察署に行く。
これでよろしかったですか?」
「あぁ問題ない。
頼む」
「それでは出発します」
三井の家は車で数分のところにあった。
家の前ではスーツを着た三井が待っていた。
車に乗るなら三井は言った。
「お前の車は相変わらずだな」
「それはどういう意味だ?」
「わかってるくせに。
お前はどうしてこういう時は黒のセダンにしか乗らないんだ?
他にもミニバンとか持ってるだろうに」
「それは白の車ばっか乗ってるお前には言われたくないな。
それに二人だからそんなでかい車で行く必要もないだろう」
「もっともな意見だな。
それでお前はあれから何かわかったのか?」
突然笑顔から真剣な表情に三井の顔が変わった。
それに浩一も答えた。
「少しだけだが進展はあった。
ここで話すのは警察で話すことだから二度手間になるから話さないがその様子だとお前もなんかわかったことがあるんだろう?」
「相変わらずだな。
俺もあるにはある。
量としては少ないけどな」
三井は外の景色を見つめながら言った。
浩一はそんな様子の三井が心配になり会話をしようとした。
「お前の奥さんもどうなんだ?」
「恭平がいなくなってからひどいよ。
最近は家から一歩も出てない。
というか部屋からもほとんど出てないんだ。
家もそれじゃあれちゃうから今は使用人を雇ってる」
浩一は失敗したと思った。
重い話題だったのだ。
「普段から週に2回くらい掃除の業者頼んだ方がいいかもな。
その方が家が綺麗に維持できるかもしれない」
浩一の言葉に三井は笑った。
「それは無理だな。
だってもう少し汚いもん」
「それもそうだな!」
二人はそういうと笑った。
その後はこれから訪れる重い話を背けるかのように昔話をして40分くらいを過ごした。
警察署に着くと入り口には石橋がいた。
「お待ちしていましよ。
前川さん、三井さんどうぞこちらに」
警察の入り口では免許の更新に訪れた一般の人に驚いた表情をされた。
当然である。
日本のトップ企業のトップと急成長中のベンチャー企業のトップが並んでいたのだから。
陰口が二人には聞こえてきた。
「あの二人ってあの前川グループとメモリーエッセンスの社長じゃないか?
こんなとこにいるなんて、あれだな。
多分賄賂でもしたんだろう」
「そうねでもあんな人たちにとったら日常茶飯事なんじゃないの?」
その言葉を聞きながら、三井と浩一は拳を握っていた。
部屋に入るなり浩一は言った。
「なぜいつもの裏口ではないんですか?」
「申し訳ありません。
実は故障してしまいまして」
「まぁまぁ前川別にいいじゃないか」
落ち着いたところで石橋は話を始めた。
「三井さん、前川さんお忙しいところ申し訳ありません。
実は昨日前川さんが帰られた後に連絡がありまして、早ければ一週間後にはあの遊園地を家宅捜査できます」
浩一は驚いて聞いた。
「一体何があったというんですか?」
「はい、実はあの遊園地に粉飾決算と思われることが書かれた文章が出てきましてそれでなんとか家宅捜査をすることができるかもしれないというわけです」
浩一は納得したような表情で頷いた。
「今日は三井も連れてきましたし分かったことを交換し合いましょう。
三井から話してほしい」
三井は頷いてから話を始めた。
「石橋さん初めまして。
私が三井智則です」
「初めまして三井さん 。
私は石橋と言います。
よろしくお願いします」
「それでは早速ですが始めます。
私はこの遊園地について調べていたんですが、この前アフリカに出張に行った時に興味深い話を向こうの役員から聞きましてね。
なんでも日本のあるテーマパークでオークションをしているっていうんですよ。
それで色々と調べてもらいました。
裏から調べてもらったんですが、どうもそこでは少年少女に関するオークションが行われているということでした。
情報としてはかなり信用できる筋のものとだけ言っておきます。
私が得た情報はこれくらいです」
石橋はショックを受けたようだった。
浩一はある程度わかっていた話だったのか、じっと目を閉じていた。
「私からは運営会社についてです。
あの会社実際のところは息子が運営していたんです。
それも最初から。
だからかこそ設計の段階から手を加えるのも容易だったのでしょう。
問題はなぜ父親も加担しているのかということですが、父親は何も知らない。
色々と調べましたがこの結論に落ち着きました。
根拠はもちろんあります。
一つ目の根拠は、あのレベルの企業のトップがこんな犯罪に手を染めるのか。
そして二つ目は、息子に経営権を受け継ぐための教育のために遊園地の運営を任せた。
しかし信用は足りていないのでトップは自分ということにした。
三つ目ですが復讐する動機が見つからないんです。
実は妻の会社が買収された時に合理主義を貫いていたこの父親はこう言ったんだそうです。
よかったじゃないか。
下手な情に流されて、会社を潰す前に買ってくれる会社があって。
これを言われてかなというもの夫婦仲も険悪になったんだそうです。
父親の真意としては、妻に会社をやめて欲しかったんだそうです。
二人とも忙しく働いてると二人の時間も取れない。
そんな意図があったそうですが、妻はそうは受け止めなかった。
だから私は動機がないと思うんです。
それからこれは三井の話とも少しかぶりますけど色々とその地下について調べていたらあそこでは人体解剖ショーをしている。
そしてそれを売っているという話があるんですよ。
そんな恐ろしい話私は信じたくはありませんが」
石橋な様々な話に驚きを隠せなかった。
「一体あなた方はどんな人脈をお持ちなんですか?」
二人は声を揃えて言った。
「「聞かない方がいいと思います」」
三井がそれに付け足した。
「あなたが知るとそれはあなたの命に関わりますよ。
石橋さん覚えておいてください。
ある程度の大きさの企業かトップはそういった人脈を持っているんですよ」
石橋はそれを聞いて小さく頷くと、とったメモを見ながら話を始めた。
「私は最初に言った通りです。
もしお二人の言ったことが本当に地下でされているのだとしたらそれは本当にヤバい事件ですよ。
でもそれならもう優太くんと恭平くんには時間があまりないかもしれませんね。
急ぎましょう。
後一週間で全てのけりをつけます」
「期待しています」
浩一は短くそういうと、三井とともに家に帰宅した。
全く血が出てきませんでした。
すみません。
次は思いっきり沢山出します。
苦手な方はご注意ください。
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