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元・暗殺者の新聞屋  作者: きいまき
5/8

駒にするのは止めとこう

『第2王子、男色疑惑浮上。


 秘密の逢引場で、第2王子と1人の青少年が抱き合っていたとの、目撃情報あり。

 お相手の身なりは良くなく、王子とは身分差のある恋だと思われる。


 これまで決まったお相手がいなかったのは、第2王子が男色である事が理由だと、実しやかに囁かれ……』



 記事にするなら、こんな感じだろうか?

 手を握るを通り越し、ルデュロスに抱きしめられた状態で、呼吸を整えつつウィプは構成を練る。


 前回に続けて王室ネタだし、第2王子って名指ししてるから、今度こそ不敬罪に問われる可能性大。

 それなら新聞屋は通さずに、ビラでも撒くかな~と、考えがまとまったところで、ウィプはルデュロスの勘違いを訂正する。


「体で払えっていうのは、だな。例えば……今年はこの色の染花が天候や虫にやられずに、大量に手に入ってるんだ。おかげで、いつもより染まった物を安く仕入れられる」

「ふむ?」


 着ていたベストが、たまたま都合が良い事から始まったウィプの説明が唐突だった上に、適当な為、ルデュロスからは分かっているようないないような、相槌が返って来る。


「で、服飾業界としては、安く準備出来る物を大量に売り払いたくて、広告宣伝を出したり、噂を広めたりして、この色を流行らしたいわけだ」


 流行が起こってから、物を作るのでは遅い。

 儲けを見込んで大量に作った頃には、廃れている場合もあるからだ。


 服飾業界としては、事前に自分達が決めた流れに、人々が乗ってくれるのが、損益を出す事もなくて一番楽。


 巧みなキスの影響も薄れ始め、もうふらつく事なく立てる気もするが、ルデュロスにもたれたままウィプは続ける。


「そこで、女ウケしそうな顔の男の出番。男色家疑惑を出しても、それとこれは別で問題ない」

「……私の出番だ、とでも言うのか?」


 ここが肝心とウィプは頷く。


「ご名答。この色を着たり、使っている女がいたら、褒めるんだよ。自分好みだと言ってもいい。もちろん、さりげなく。そこら辺は王子様スキルがあるし、大丈夫だろ?」

「……」


 戸惑ってはいるが、一応ルデュロスは理解したらしい。


「あっちこっちの行き先で、体よりも口先を使う。見事流行を起こせれば、服飾業界からの宣伝料の後金にも色が付いて、次からも依頼が来る。するとオレの勤め先も儲かって、嬉しい……OK?」


 広告料と、それなりに+αな前金は既にもらっているし、今のところ稼ぐ必要のない新聞屋なのだが、それはルデュロスに告げなくていいだろうとウィプは思う。


 王城での噂をルデュロスに仕入れて来させて、情報提供してもらう事も考えたが、そうするとネタ探しという名の暇潰しが出来なくなる。

 なので、それも言わない。


「しかし、そうなると……」


 心配そうなルデュロスに、ウィプは笑った。


「キスは料金外でしような、ロス?」


 ハイ、新聞記者は王子様に襲われましたとさ。





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