萌え話がシリアスに
『今季の流行色はこれだっ!
近頃、ファッションリーダーとして名高い某嬢が、この色を好んで取り入れているのをご存知だろうか?
この色を身につければ、それだけで不思議と華やかな雰囲気に。
全身を包むも良し、一部に装っても素敵である。
衣服だけではなく、帽子や日傘、小物入れ等に、この色を使った物を持つのもお勧めで……』
「ウィプ。なぜ私は君に頭を撫でられているのだろうか?」
「それはだな、ロス。お前のこの表情が、オレのツボだからだ。いわゆる、萌え」
ウィプがそう言うと、ますますルデュロスは戸惑い顔になる。
「大人しくロスはオレにこうされているべし」
撫~で撫~で撫~でこ~。
この表情もいいが、感触もたまらんな~。
堪能堪能っと。
ウィプは変態オヤジよろしく、にやにやした。
ウィプが撫で続けていたせいで、ルデュロスに別スイッチが入ってしまったらしい。
ややもしないうちに、ルデュロスは戸惑い顔を消し、ある特定の意図を持って、ウィプに手を伸ばして来た。
それをベシッと叩き落として、ウィプはルデュロスに問う。
「その前に。何かオレに言いたい事があるんじゃないか、ロス?」
「私からもウィプに触れたい」
「これを言ったら、オレに嫌われるかも知れない。嫌な思いをさせるかも知れない、から言わないのか?」
真面目な口調でウィプがそう尋ねると、ルデュロスの表情は自分から触れられない不満から、不安の色へと変化した。
「嫌いになるかどうかを決めるのはオレで、ロスじゃないぞ」
「……何もない」
言い渋るルデュロスに、ウィプはとどめの一言を放つ。
「今日の触れ合いタイムはなしかな~、これは」
「!?」
それでようやく焦ったらしいルデュロスに、わたわたとウィルに差し出して来たのは……潤滑剤。
「媚薬入りだそうだ」
「ほっほ~」
意地悪い顔で、ウィプはルデュロスを追い詰めた。
「ロスは、これを、オレに使いたいわけだ?」
当然、ルデュロスはたじろいだ。
「その、……興味はある。だが、これは、使わない」
「ん?」
目の前にある媚薬に興味が沸くのは分かる、実に素直でよろしい。
が、ルデュロスの言葉の後半の意味に、ウィプは引っ掛かりを覚える。
「ウィプ、触らない方がいい」
しかも手に取ろうとして、ウィプはルデュロスに止められた。
「毒か? ロスの勘は何だって?」
「これは……強くはないが、悪い物だ」
それだけで、何となく正体が分かってしまった。
立て続けにウィプは質問を重ねる。
「これを渡された時、何か言われたか?」
「もっと入り用なら、声を掛けてくれと」
「それだけか?」
ルデュロスは頷いた。
「1回の使用量を間違えるとマズイ薬か、それとも中毒性があるのか」
「どう、マズイ? 中毒とは?」
自分の答えにルデュロスがすっかり強張ったのを見て、ウィプは少しだけ口調を和らげた。
「気持ち良過ぎて、もあるし、逆に最悪な幻覚を見て、錯乱・発狂する。それを免れても最終的には、ロスよりも薬を欲しがるオレになるかもな~」
しかし、あまりその効果はなかったらしい。
「媚薬というのは、一般的に使われている物なのか?」
「王族貴族は子孫を残す義務があるし、媚薬の使用注意をロスが知っていると思って、何も言わなかった可能性はある」
けれども。
ルデュロスを抱き込む為の借りを作りたいから、相手はワザと黙っているだろう。
「ロス。娼館、って知ってるか? 仕事上、店側が媚薬を使ってるとこもあるにはあるが、それより客が持ち込んだ媚薬で、頑張っている子達が壊されたりする」
ここまで話したのだし、ルデュロスも話題を変えて来なかったという事は、最後まで聞きたいのだろうと媚薬が起こした数々の事件をウィプは話し続けた。




