家庭の事情とやら
『王太子殿下に第4王女、産まれる。
昨年の第3王女に続けて、慶事が続く王室。
しかし王位継承権は王子しか持つ事が出来ない為、次こそは男児をという声が高まっている。
王太子は男兄弟の多い、妾妃を新たに迎え入れるかどうかを検討中との噂があり……』
「王太子である兄上にはまだ男児がいない。だから兄上に何かあれば、私が王太子だ。私にそのつもりはないのだが、兄上は私の存在に、なぜか酷く神経質になっていて……」
「もしかして……」
元・同業者っぽい、あの連中は……。
ウィプの呟きに、ルデュロスはにっこり笑う。
「君は強いな。兄上の手の者を一時的にだが、遠ざけてくれて感謝する」
握られていた手が上に導かれたかと思うと、ウィプの手の甲にはルデュロスの唇が一瞬触れた。
それを黙殺して、ウィプは考えていた。
つまり男色家だとなれば、例えルデュロスが王太子の座を簒奪したとしても、跡継ぎは産まれない。
もしかしたら、王太子が自分に神経を尖らせる事もなくなるのでは? と、ルデュロスは期待しているようだ。
その一方で、ルデュロスの話は続いていた。
「君にそのつもりがなかったのは、私にも分かっている。だが君以上の能力を持つ、次の者を探そうにも手間取る事は間違いない。君は私にこれからについて、考える猶予を与えてくれたのだ」
時間こそは稼げたが、その次の者が、ルデュロスが太刀打ち出来ない者になってしまう可能性もある……はず。
それはこの頭の良さ気なルデュロスも分かっているに決まっている。
だからこそ、『男色家』の噂を広める事に前向きなのだ。
考えなしに元・同業者っぽい者を追い払ってしまったウィプにも問題があるのだろう……たぶん。
それに対する責任とか、罪悪感を覚えるものなのかも知れない……普通は。
しか~し。
「男色家だと広めたい場合、広告宣伝費として、記事掲載料に加えて新たに別料金が発生する」
ウィプはここぞとばかり、要求した。
ルデュロスが戸惑っているようなので、費用の意味も説明する。
「私は自由に使えるお金があまりないのだが、足りるだろうか?」
ルデュロスの身包み一式剥げば、買い叩かれたとしても、それなりの額となるに違いない。
「足りなければ、体で払ってもらおっかな~」
「……私は」
あれ、握る手の力が強くなった?
「待っ……んっ、んんんっ」
広告宣伝費とかは知らなかったくせに、なぜ体で払うに、こ~ゆ~意味があるっていう事は知ってるんだ、王子様っ。
知識が間違った方向に、偏ってんじゃないかっ?
というウィプの訴えは、口腔内で消えた。
何というか……。
ルデュロスのキスは非常に深く、んでもって巧みだった。




