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元・暗殺者の新聞屋  作者: きいまき
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3/8

分かっちゃいたけど

『記者は見たっ! これが王子の寝室だっ!


 足首まで埋まりそうな、ふかふかの絨毯。

 その心地好い感触。


 金糸銀糸で、王族の紋章が織り込まれたタペストリーと、見事な調度品の数々。

 思わず、ため息が零れる美しさだ。


 この部屋にお気に入りの女性を呼ぶ事も? との質問に、王子は意味深な笑みを浮かべ……』



 全体的に質はべらぼうに良かったが、実用品ばっかりで実際はもっと地味だったな、うん。

 出来上がった記事を読み返しながら、ウィプはルデュロスの部屋を思い起こす。


 もちろん読み手も、新聞記者ごときが王子の部屋に入れるなど、本気で思ってはいないだろう。




 不敬罪を問われたら、逃げるのみ。

 捕まるようなへまをやる連中は、今のところこの新聞屋にはいない。


 と、思うんだが……。

 先程からウィプは何やら、嫌な予感がしていた。


 本日のウィプは王城で面白いネタが転がっていないか、探しに来ている。


 記者は標的を追う事はあっても、追われる事はない……はず。

 しかし、嫌な予感は気配となって、どんどんウィプに迫りつつあった。


 逃げようと思えば、逃げられた。


 しかし王城に来るたびにこれでは、のんびりネタ探しも出来ない。

 いくら暇潰しとはいえ、それをせかせかしながらするつもりは起きないウィプだ。


 仕方がないと人の輪から外れていき、勝手知ったる王城の人気のない場所に向かう。

 迎え撃つ気満々で、ウィプは嫌な気配が自分に追い付いて来るのを待った。



 果たして、その正体はっ!?

 や、分かってたけどね、分かってはいたけどねっ。


「あ~?」


 ガシッと両手を握り締められているのは、なぜっ?

 しかも見下ろして来る目が非常に嬉しそうなんですけど、この王子様っ。

 ウィプは完全に、ルデュロスをボコるタイミングを逸した。


 新聞屋なので、殺しはしないが。

 どこをどの程度やれば、どれくらいのダメージが与えられるか、もしくはHP0にまで出来るかも、ウィプは熟知している。

 ようは加減次第だ。


 ……で? 何かな~?


「やはり居たな、見つけた」

「もしもし、王子様。ここはもちろん、さっきいた場所も、ふつ~王族は立ち入る様な所じゃないんだけど」


 しかもルデュロスは、普通の王族ならぞろぞろ連れているはずの、金魚の糞すら1人も後ろに連れていない。

 さっさと自分のいるべき場所に戻れよと、ウィプは言外に匂わすがルデュロスには通じなかった。


「こちらの方に、君がいると思ったから来た」

「何ですか? 王子様の勘ですか? 何にしろ迷惑」


 これでどうだ、とウィプがずばっと言うと、さすがにルデュロスの表情が翳った。

 しかし、両手は握られたままだ。


 その上に、だ。


「私の事はロス、と。君の名を教えてくれないか?」


 来たヨ、来ましたヨ。

 

「オレ記者なわけ、分かる? 名前くらい教えてもいいけど、その場合、第2王子の男色家疑惑の記事を書かせてもらうぞ」


 王都は女子の識字率もそれなりにある。

 読者の中には当然、腐女子が存在するのだ。

 もちろん逆に、GLな記事も需要がある。


「男色家、か。そう広めるのも良い手かも知れない」


 嫌がるでもなく、喜ぶ事もなく、やけに真面目顔で反芻するルデュロス。

 そしてルデュロスはウィプが聞いてもいないのに、家庭の事情を語り出した。





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