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性癖全開!キャンティマロン~◎セイシをかけて、勝手に戦え!◎~  作者: 石鬼 輪たつ
第2章 VS.マ・ラ 双成町・バキバキ通り編
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最終話★ 地球のご当地ヒーロー

 虚幌須うろぼろす市は、双成そうせい町中央。


 トリニティたちを中にむかえ入れた「ビッグモス」が、クリスマスイブのイルミネーションを彷彿ほうふつとさせる神秘的なかがやきをはなち始める! 


 もし「ビッグモス」自体が発光しているならば、目をくらますほどの輝きに()()()()()()()()すらも隠れてしまうはずだ。


 だが、たった今起こったそれは()()()()()かられ出したもの。


 「ビッグモス」の体組織表面(ひょうめん)にヒビ割れた模様もようが入りつつ、外へ向く光は強さを増していく。



 ブチッ! ブチブチブチブチ――ッッ!



 そのとき、「ビッグモス」に異変が起こる! 


 体組織が波打なみうち、またさらに繊維せんい断裂だんれつ音を響かせながら膨張ぼうちょうする。


 元はエイリアンの巨人とでも言うべき骨格こっかくであったものが、じょじょに――人間ホモ・サピエンスに近しいもの――まるで「()()()()()()()()()」ような姿すがたに変形していくのだ!


 やがて、どう四肢ししが完全に地球人のシルエットとなる。



「ん――ッ! ん――ッ!」



 最後に残ったマジモス由来のハエフェイス下から、苦悶くもんの声が上がる。


 声の主は我慢ならずに頭のマジモスに手をかけるなり、両(うで)で上へと!


 がばッ! った!


 下からあらわれたのは、『商店戦士トリニティ』のにわとりマスク。

 白い塗料がかがみのように、月光げっこうを反射する。


 ()()()()()()()



 一体何が起こっているのか? 

 何をするのか? 


 巨人の行動を、町民も現場中継をる人々も、戦うべき相手である「テュポーン」すらも、固唾かたずを飲んで見守っている。


 ――ついに、よく知った声が発せられる。





変身へんしんッ!」



 巨人はビッグなマジモスを頭にかぶる! 


 マジモスが変形し、グロテスクな紅玉の瞳・するどい触角・たてがみのごとき剛毛をかたどる。


 すでに全身()()かたこしには、真っ赤な手足の意匠いしょうからみつき、腹部のカサブタからうごめく触手が伸び、円環えんかん模様もようかたち作った。


 その装いはまさに戦闘特化の触手しょくしゅスーツだ。



「――おれの名はッ」



 言おうとするも、巨人の声はそこで途切とぎれる。


 考え足らずといさみ足が重なり、特段とくだんそこで名乗るべき名前もないままにノリといきおいで語り出してしまっていた。


 数秒間の、重苦おもくるしい沈黙が流れる。


 巨人は、ヒントはないものかと俯瞰ふかんした先に、とある駅舎えきしゃのよく目立つオレンジの文字を発見する。



清栗きよくり駅……くり……マロン……そうか!)





「俺の名は『()()()()()()()()』、()()()()()()()()()()ッッ!」



 戦士の雄叫おたけび! 


 「キャンティマロン」、その名はほこり高き戦士たるオスのみが名乗れる名だ!



 明確めいかく脅威きょういを前に、生存本能か敵意かも知れない衝動しょうどうから「テュポーン」は青白い光線こうせんを吐き出す。


 ただれたやみたる口とどうの穴のほかに、首から肩にかけてのラインに1メートルけいの穴が無数に開き、それらからも一斉いっせい掃射そうしゃする。


 光線は日輪にちりんのごとき網羅もうら性をもちながら、地上をはらう――、



 かに思われた! 


 「キャンティマロン」はかたからわきから触腕しょくわんを伸ばし、触腕は追尾ついび性を発揮はっきして「テュポーン」の光線にぶち当たる。


 そのことごとくをふせぎ切った。


 かれた触腕が香ばしいけむりを立てて炭焼すみやきとなり、夕飯ゆうはんどきの町中に降り注ぐ。



「――()()()()()?」



 冬の蒼穹そうきゅうにぽつんと立つビッグな「キャンティマロン」の耳元へ、ほこりらしきものが取りつく。


 ほこりにしては人型をして、白と梅鼠うめねずみの色合いが気になる……間もなくそれがペルウィアと気づく。



「人間……たのみごとをされてほしいノ。恐らくセーメンティスの力をいっきに使った影響だと思うケド、どうやらテュポーン(あのこ)()()()()()()()()()使()()()()()()()


「使えない? 今の、ビームみたいなのは普通の攻撃だっつうことか?」


「そうネ。相当、からだの外も中もグチャグチャになって……もう後継生物こうけいせいぶつどころか、ものと呼んでいいかすらもわからない。だから、『かならころして』ほしい。それが救うことになるんだヨ」



 飄然ひょうぜんとしたキャラを演じてきたペルウィアすらも同情を向ける。


 「テュポーン」の人間(よう)をした上半身は、天をもらわんと巨大化を続け、触手が黒いかたまりをなした下半身も勢力せいりょく範囲を広げている。


 もはや天衝椿あめつばき地区にとどまらず、かの魔手ましゅ清栗きよくり駅、商店街にもれんばかりの状況だ。



「……わかった。納得いかねえが……お前を信じる。その代わり、俺からも()()()()をしたい。ペルウィアッ!」



 オオン……地殻ちかく変動かと錯覚する地鳴じなりを起こして「キャンティマロン」が前進する。


 「テュポーン」は来るな、と言っているのだろう立て続けに光線こうせん照射しょうしゃするが、すべてを肉がにかえす。


 「キャンティマロン」が両腕を伸ばす!

 正面、くらき黒の、かろうじてものをかたどっているうで部分を拘束こうそくした。


 駄々(だだ)っ子のように暴れる「テュポーン」。


 しかし、うで触手しょくしゅなぐられ、ひるまされようとも、肉色の巨人「キャンティマロン」はつかみかかり、「テュポーン」を押さえつける。


 「キャンティマロン」は天地に叫ぶッ!



「ペルウィア! コイツを()()()()()! たのむ、()()()()を貸してくれッッ!」



 真っ赤な肉におおわれたヒーローのからだからペルウィアへ、何かが発射される! 


 ペルウィアは「穴」を使い、物体を手元てもとに引き寄せる。

 トリニティの私用スマホだった。

 ある画面をうつし出している。



「この場所――フフ、道連みちづれにでもするのかと思ったケド。まだ、戦うのネ。いいワ!」



 ダウナーな表情を一転いってん、戦士のそうに変えるとペルウィアは光となる。


 マジカルパウアーの最大出力だ!


 巨人たちの後方に、町一帯(いったい)み込むほどの「ワームホール」があらわれる!



「あとはまかせたヨ、人間!」


「ああッ!」



 返事を合図に、「キャンティマロン」は渾身こんしん水平すいへいりを繰り出しッ、「テュポーン」の全身をおおきく後方へとかたむけてみせる。



「いい場所知ってんだッ、連れてってやるよオラぁ!」



 「キャンティマロン」は飛びかかる!


 2体の、目にうるさい色をした巨人たちは、そうして一緒になって「穴」の中へと転がっていった。



 ◆



 膨張ぼうちょうするやみ、「テュポーン」の巨体が天からってる! 


 「穴」の入口は横向きに、出口はたて向きに開いていた。


 巨体が落ちた衝撃によって()()()()はざあああんッととどろきめくれ上がり、「テュポーン」に打ちつける。


 「キャンティマロン」も追って「穴」から落下する。

 「穴」内部のほんのわずかな時間で、「テュポーン」へちを見舞みまったのだろう。


 つと、足元の水がくるう。



 場所はおおいなる水のはら


 津羅海づらかい


 虚幌須うろぼろす市北部に広がる雄大ゆうだい内湾ないわんだ。

 水面は空をも飲み込み、果てしない濃紺のうこんうつす。


 「キャンティマロン」は正面に、「テュポーン」――ものそこないの姿すがたをとらえる。



「グオオオぅ!」



 「テュポーン」は威嚇いかく絶叫ぜっきょうし、攻撃を繰り出す。


 「キャンティマロン」はけない。

 すべて攻撃を自身のからだで受け止め、前進しながら反撃をする。


 巨躯きょくの全長はやや「テュポーン」の方がまさるが、闘争心とうそうしんのかけらもないさまから「キャンティマロン」にはかなわない。



「……ィ、タイヨ、ママ……イタイヨ、ママ!」



 いきなり、判然と聞こえてきた。


 「キャンティマロン」は耳をうたがった。

 しかし……「テュポーン」の出生しゅっせいを思い返せば、この()()()()()()()らしき鳴き声には妥当だとう性がある。



「お前は何も、悪くないのにな。ごめんな。だからッ、俺がお前のいのちぜんぶ、背負ってやる!」



 それは意味上において、すべての後継こうけい生物せいぶつに向けた「キャンティマロン」の誠意せいいでもあった。



 つみなきいのちに、ばつあたえる。

 まったく人間の傲慢ごうまんだろう。


 だれしもが生まれたくて、その場所に、その親のもとにまれたわけではない。


 「てき」になりたかったわけではない。


 だからこそ、何かを守る者は、また同時に何かをはいする者であるべきだ! 


 それが、悲しくもヒーローなのだ。



 「キャンティマロン」は――トリニティは――珠辻たまつじ 園治えんじは、理解していた。



(お前とだって、『家族』になってやりたかった! けど、もうわねえ。だからそのぶんッ……俺がお前にとって()()()てき』になってやる!)



 「キャンティマロン」は攻撃の手をゆるめることなく、「テュポーン」に立ち向かう。



「トリニティいぃぃーッ!」



 男の野太のぶとい大声が、人混ひとごみ……なんてない、海上にひびきわたる。


 「キャンティマロン」は振り返る!


 ペルウィアが開けた「穴」はそのままになり、純白じゅんぱくの出口から一方的に双成そうせい町の音がもれ聞こえてくる。


 はじめはただの騒音だった。

 しだいに音は、はっきり彼を鼓舞こぶする数多くの声援せいえんへと変わっていった。



「がんばえー、トリニティー!」


「トリニテーッ! 負けるんじゃねえぞー!」


園治えんじくーん!」



(誰も『キャンティマロン』って呼んでくれねえな……けど、まあいいか!)



 声たちは呼ぶ。

 何度も何度も。


 遠くても、どこかでヒーローが戦っていると信じて。



「アルウゥス、セーメンティス……準備じゅんびはいいか?」



 彼は『トリニティ』として問いかける。


 闘志とうしおくで、一体いったいとなった2人の戦士が、彼にうなずき返す。



「「「いくぞ!」」」



 ちからみなぎる合図あいず! 


 「テュポーン」へのさらなる猛攻もうこうに出る。

 「キャンティマロン」のそれは相手をいためつける暴力にあらず、相手の敵意をくじく体術だ。


 「テュポーン」は大きく体勢をくずした。



「イタイッ! ヤダ、ママ……ヤダ! イタイヨォ!」



 だが、足りない。


 「テュポーン」を構成する細胞は、生き物としての尊厳そんげんをうしなった代わりに、として生きるための強大な生命力をもたらしていた。


 苦痛をなげき、しきりに抵抗ていこうする()だが――どうしてだろう、「ヤメテ」だとか「コロシテ」だとか、()()を求める言葉をはっしないのだ。


 そんなことを思いつきもしないというように。



 「キャンティマロン」はついにむねが苦しくなり、攻撃の手を制止した。



「ッ……くそ、俺はどうしたらッ」


園治えんじ、あきらめないで! ()()()なら! もう、終わりにできる!』



 ――からだの内側で、アルウゥスが示してくれる。


 アルウゥスも苦しい。セーメンティスも当然だ。

 心がかよっているからわかる。 


 そして今、彼らにはあって、『トリニティ』にないものが、はっきり1つだけあることも、わかっている。



「……あとは勇気ゆうきを出すだけだ。ケリをつける、ってな!」



 覚悟を決めるのに、10秒を要した。


 たったそれだけで、生まれ変わったような気分になる。



 「キャンティマロン」は上方、雲をもつらぬき成層圏せいそうけん付近まで飛び上がる! 


 はるかな先に漆黒しっこく特異点とくいてん捕捉ほそくし、足を突き出す。


 足は、ほのおうず白煙はくえんをまつわらせながら、一直線に! 

 落ちていく!



さけべッ!」



 そのたましいで!





「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「


 必殺ひっさつ厘月りんげつ隕石いんせきストライぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃクぅッッ!!


」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」





 文字通り、必殺ひっさつの一撃。


 いのちうばうための技。


 けれど、確かに誰かを()()()()()()()()だ。



「――お母さん! あれッ隕石いんせきだよ!」



 虚幌須うろぼろす市のどこか。

 人々の熱狂ねっきょうを遠方からながながめていた親子。


 小さな男の子はあたまの上を指さしながらうったえる。


 母親も息子のそれにしたがい、空をあおぐ。



 くもひとつないほしの海の夜空よぞらに、()()()が流れていた。

 またたく星とまったく別の、はげしく点滅する光だ。

 燃えているようにも見えた。



 母親はまた、息子に向かって、ゆっくりほころぶように笑みを浮かべる。



ちがうわよ? あれはね……」



 ◆



 ドガビシャア! 



 けたたましい破裂はれつ音が、膨張ぼうちょうするやみ、「テュポーン」の巨体からはなたれる。


 「キャンティマロン」のりに心臓しんぞうをうち抜かれた怪物は、侵攻しんこうめ、みるみる瓦解がかいしていく。


 ただし、それは最期さいごどうしようもなくものだった。


 真っ赤な鮮血せんけつが、よくわからない体液が、海にけた。

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