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性癖全開!キャンティマロン~◎セイシをかけて、勝手に戦え!◎~  作者: 石鬼 輪たつ
第2章 VS.マ・ラ 双成町・バキバキ通り編
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第47話★ 神をも殺す獣

 虚幌須うろぼろす市は、双成そうせい天衝椿(あめつばき)地区。


 オフィスビルが立ち並ぶ、裏――欲望のうずく歓楽街は、地元住民から「バキバキ通り」と呼ばれ避けられつつも、したしまれていた。


 18時半。

 よく晴れた夜闇の中で、トリニティとセーメンティスはいちど熱い抱擁ほうようわした。


 彼らの頭上から祝福するように、あるいはロマンチストめとやかすように、白々(しらじら)しい月光が降り注いでくる。



「いったん帰ろうぜ」



 トリニティの言葉。


 それに耳をかたむけ、ゆっくりセーメンティスがうなずく。


 今さらだがセーメンティスは冬場と思えぬ軽装けいそうであり、れると氷のように冷たかった。


 彼に、トリニティは急いで自身の着ているジャケットを着せ、常備している手袋てぶくろをつけさせる。



あせくさい」


「お前のせいだお前の……とりあえず、ネットカフェでアルウゥスとごうり――」



 トリニティは不自然に言葉を切った。


 何事なにごとかとセーメンティスは思い、トリニティの視線の先をたどる。


 それは小川にわたした橋の、欄干らんかんの上。


 月明つきあかりがたよりという夜の景色でも、ハッキリ視認しにんしうる発色いい黄緑きみどり色をした()()()()()()が立っている。


 ダッ! 

 突如とつじょ全力疾走(しっそう)する影!


 トリニティたちに向かってくる。


 逃げる間も与えられず、影は前方10メートルほどの場所まで接近してきた。



()()()……」


「はあ? あれが?」



 衝撃的事実に、トリニティは耳を疑う。

 唐突なせりふにはある程度抵抗(ていこう)がついてきたと自負していたが……。


 セーメンティスの発言はあまりに予想外だった。


 巨大なナニかは背筋せすじをピンと伸ばし、2本の後脚うしろあし仁王におう立ちする。


 ――ナニかとは()()()()()


 それはまさしく、トリニティがずっと追い続けていたマ・ラの姿。


 体長は2メートル超、首元の鳴嚢めいのうらしき器官が二股ふたまたにパンパンにふくれ上がり、またしたぱらもでっぷり太っている。



 しかしもっとも驚くべきはマ・ラの摩羅まら


 ()()()()()もある立派な()()()()がそそり立っていた。



「まさか……あいつ、化石骨かせきこつをなんつうところにッ!」



 マ・ラは自身の摩羅まらを守るため、貝釣ばいづり大学から強奪ごうだつしたかの()()()を、摩羅袋コッドピースにしているのだ!



 トリニティは怒り心頭しんとうはっする。


 巨大カエルの蛮行ばんこうは、厘月りんげつ町民ひいては虚幌須うろぼろす市民の文化を、ほこりを冒涜ぼうとくするものに他ならない!


 憤怒ふんぬの感情を身にまとうトリニティをよそに、マ・ラは湿しめった足音を立ててこちらに歩み寄る。


 ついに、前方5メートルほどまでせまってきた。



「セーメンティス……?」



 ふくろめにされたような、ひどくくぐもった、加えて金属の振動しんどう音にも似た耳障みみざわりな声が呼ぶ。


 マ・ラのものだ。


 マ・ラに名を呼ばれたセーメンティスは、トリニティから()()()()()()()()()()し、すぐに、血みどろ汗みどろの彼のに隠れてしまった。



「そう、であるか……」



 まったくカエルでしかない黄緑きみどり面構つらがまえは、それでどのような気持ちを受け取ったのだろうか?


 人間にはわかるはずもない。


 一拍いっぱくを置くとついにマ・ラは、トリニティの前に「後継生物の主」たる威光いこうしめしたのだ。



「――おろかなる人間よ……ワガハイを待たせるとは、見上げた勇者ゆうしゃマラな! あるいは、ワガハイに恐れをなした軟弱なんじゃく者マラか?」


「なッ、んだその取ってつけたような語尾ごびと口調はよお!」


「ええい、どちらでもよいマラ。ワガハイが出向でむいたからには、貴様きさまの命運もこれまでと心得こころえよ!」



 トリニティは怒りともあきれとも言い切れない感情からえた。


 実際じっさい後継生物こうけいせいぶつ親玉おやだまの名が「マ・ラ」と知れた、かなり前の時点から、当然そのカリスマについて疑問視していた。


 とはいえ、種々(くさぐさ)の後継生物とわたり合い、彼らの存在はトリニティの中で確実に重要なものへと変わっていったはずだ。



 そのく先が「コイツ」でいいのか……?



 トリニティは、過去の自身に憑依ひょういされた感覚がし、めまいをきたした。



「まあ……さがものに足がえて自分からやって来たと思えば、余計な手間がはぶけてラッキーか」


「何を勘違かんちがいしておマラ? ワガハイはつぶしに来たのマラ……愚劣ぐれつな『因果』をな。()()()()()()()! どうせこの人間には、機がじゅくすまで()()()()()()だったのであろマラ?」


「何の話だ。セーメンティス?」



 マ・ラの意味深長(しんちょう)物言ものいいの矢印やじるしが向いた、セーメンティスへ。


 トリニティは気軽に呼びかけた。


 すると彼の思いえがいた、おまし顔のセーメンティスはどこにもいなかった。


 まさにセーメンティスは、瞳孔どうこうちぢめ、いかにも脆弱ぜいじゃくそうな()()()()()()()()()をしているのだ。



「時に、人間よ。ワガハイの崇高すうこうなるちからは、いかにして行使するものか存じておマラか?」


「マジカルパウアーのことか? ……知ってるぜ、イヤってほど聞かされてな。キャンティマん中で『無頭症むとうしょう』が起きると、それが脳にある睾丸力こうがんりょくに伝わって、力を使えるようになるんだろ。ホントなんつう話だ」



 トリニティは素直に答えてみせる。


 マ・ラは鳴嚢めいのう収縮しゅうしゅくさせる。

 愉快ゆかいな音を鳴らした。



「いかにマラ。しかし、おろかな貴様は力の神髄しんずいをわかっておらぬマラ。力の神髄……それはキャンティマではなく、『無頭症むとうしょう』から生じる()()()()マラ!」


「ああ、何が言いたいッ?」


「ゲヒェヒェ。貴様ら人間がおのずから法でしばるように、キャンティマを頼ることは力にくびきをつけるがごとき愚行ぐこうマラ。……もっとも、キャンティマの造精能ぞうせいのうを超えて、伝達物質をきゅうすることができうるのマラ、力はこの宇宙をも支配するものとなるはずマラ!」


「だから何の話だつってんだろ!」


「こたび、ワガハイはちからくびきはなつッ! ワガハイと()()()()()しか知らぬこのわざで、人間を……地球テッラをワガハイのものとするマラああッ!!」



 カエルの奇声。


 そして、不意打ふいうちの号令だった。



れ、()()()()()ッ!」


「なにッ――」



 マ・ラの思惑おもわく通り、あわてて背後の気配に振り返ったトリニティ。


 彼を、強烈な頭突ずつきがおそう!


 吹き飛ばされるトリニティ! 

 地面に這いつくばり、見上げた先には、()()()()()()()()()()()()()勇猛ゆうもうらしい姿すがた。 


 ミセ・ヤリ。

 トリニティが厘月りんげついんせき公園で交戦したものの逃げられ、行方ゆくえ知れずとなっていた後継生物の1体。



「ヒヒィィン! 悪いな、兄弟きょうだい……オレサマの安寧あんねいのため、犠牲ぎせいになってくれ」



 ミセ・ヤリは音もなく、すでにセーメンティスの後方でかまえており、一瞬のすきに――彼が髪につけている()()()()()()()()()()()()()へとみついた。



「いやッ!」



 気がついたセーメンティスはウマづらを手で払おうとする。


 しかしミセ・ヤリは「おっと!」と、含み笑いをして軽々(かるがる)手をかわす。


 その流れでからだをピンクに発光させると、マジカルパウアー「さわったもののサイズを変える力」により、セーメンティスの髪飾かみかざりの左1つを巨大風船とばかりに大きくした!


 髪飾かみかざりは元の大きさではわかりづらかったが、内部を()()()()()たしている。


 カチッ――と、機械音。

 髪飾りからだろうか。


 直後、液体はみるみるかさを減らしていく。


 時を同じしくてセーメンティスはかつてない激しい発光に全身をつつまれ、雷鳴らいめいと泣き叫んだ。



「あああああ――ッ!! 痛い、痛いッ、ああッあぁ! いやああああッッ!」



 もはやセーメンティスの発光は、夜闇を照らす太陽というまばゆさで、双成そうせい町にかがやいた。



 ミセ・ヤリから頭突きされ、軽い脳揺れに苦しむトリニティはじょじょに、()()の広域に違和感いわかんを覚える。


 冬の寒さをして服をまくり上げると、アルウゥス色のカサブタがうごめいている。



「何がッ、起きて――ぐ、う、くっそいてえな……まさかこれ、()()()からかッ?」



 激痛が腹部に腰部、胸の下まで広がる。


 ゆっくり、激痛が膨張感ぼうちょうかんによるものと思い知らされる。


 ブチッ――。

 水気みずけのある重い音。


 音がした場所にあらわれた、それは、触手しょくしゅだ。


 どす黒い、あらゆる光を吸い込もうとする闇の色をした触手。


 タコのあしさながらの柔軟じゅうなんさと、ウニやナマコといった棘皮きょくひ動物に似たツヤをもち、蠢動しゅんどうをしている。


 どこからいてきた触手だろう? 



 ――と、たどった先にはふくれ上がった腹部を穿うがたれ、中から()()()()()()()()トリニティの姿がッ! 


 触手は絶え間なく、まだまだい出してくる!



「目覚めよ、かみよ、『界物種かいぶつしゅ』よッ!」



 マ・ラの召喚に応じようと、いっきに大きなやみかたまりが産まれる。


 闇には、顔とどううでがある。


 「まれる」と言っても、その言葉の正しい解釈かいしゃく通り、メスの産道から出てくるのではなかった。


 トリニティのはら(アルウゥス)色の皮ふを突き破って。


 トリニティを脱皮だっぴがらのごとく打ちてる。



 惨劇さんげきの終わりには、トリニティから剥離はくりしたたいらな臓器――胎盤たいばんと思われるものも、大地へと投棄とうきされていた。

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