No.141 死闘の果て
実は前話と今話で1つのお話にした状態で書いてたんですがなんかここ分けたいな、と思って分けました。
1万字に達してなかったのになんでだろう
さて……と
コメント:
神凪:こんなときで申し訳ないんだけどユウさん
うん?
コメント:
:びっくりした
:神凪先生!?
:いきなり来たな
神凪:お兄ちゃん……えっと、ななみちゃんのことなんだけど、多分龍人にトドメさせないからトドメはユウさんがお願い
:え
:えっ
:そーなん?
『……なんとなくそんな気はしてた』
というか、これまでのななみちゃん見てたら分かるような気がする。
加えて今は判断力がなくなってるような状態でもあるから余計に、かな?
コメント:
神凪:トドメをお願いした私が言うのもだけど無理はしないようにね
:無理?
:無理……?
:無理って?
神凪:お兄ちゃんの娘ちゃんが気づいたけど今やってるのだいぶキツイでしょう
……気づかれてるし。
『気をつけるよ』
コメント:
神凪:本当に気をつけてね
:なんの話してるか分からない……
:うちも
:わいも
:説明欲しい……
:それ
神凪:ユウさんの根幹に関わることだから私からは教えない
:おっふ
:おふ
:姫の根幹?
神凪:でも本当に気をつけて、皆が求めてる“姫川ユウ”はあなたしかいないんだから
……ねぇ、神凪先生?貴女ボクの正体気づいてないよね……?
『っと、集中しなきゃ───』
自機弾を放とうとしたところで人形の銃弾が途切れる。
それと同時に、龍人の頭部側にいる彼女と目が合った。
『……!』
───来い。
『───“犠牲の盾”!!!』
その目を見た瞬間、ボクは慣れ親しんだスキルを唱えた。
コメント:
:!?
:!?!?
:姫!?
“犠牲の盾”。“総てを捧げる守護者”下位スキル。
その効果は今まで見た通り“全武器及び全状態変化を解除した上で任意のパーティーメンバー眼前への転移”。
ボクのメイン武器である“大盾”は武器扱いだから当然解除対象。状態変化っていうのは“魔力纏”とか“毒属性付与”とかそういうの。
ざっくり説明すれば自らが鍛え上げた肉体を以て仲間の盾となれ、というようなスキル。
今回唱えたことで何が起こるかというと───
『っ』
───彼女に向かっていた銃弾の前に転移する。
コメント:
:姫!?
:やばいって
:今そのスキルはやばいでしょ
:なんで……!
:どうして……!
彼女の目を信じる。今、私ができるのはそれだけ。
───トン、と背中に何かが触れた。
『───“時渡”』
そんな声か聞こえた瞬間、私の身体がバラけた。
……ような、変な感覚。麻酔をかけられた感じ。
その上で、視界が複数になってグルグルと変わってる感じがする。
コメント:
:へ?
:へ……?
:何々、何が起こってるの!?
:運営配信側見てる奴状況報告!!
:姫の視点じゃわからん!!
:さっきより酔いそう……!!
:運営配信側だと姫とななみちゃんが花びらになったんだけど……
:花びら?
:花びら…?
:“花びらになった”って何さ
:そうとしか言えないんだが
花びらになったって……えっなにそれ
……あー、でもそれならこの謎の視界もなんとなく理解できるかも。
つまり、私の視覚が複数の花びらに付与されてバラバラになってるんだ。
『15秒後に戻る、準備しておくように』
なんかエコーがかかったような声。でも彼女の声なのは間違いない。
『わかった』
そして私の声もなんかエコーかかってる感じがする。
この声も多分視界と同じ理屈だね。発声が複数の花びらから行われているせいで多重化されちゃってる。
ついでに当たり判定が散らばったせいで“自機狙い”ができなくなってる感じかな……人形の動きが止まってる。
……まぁ、それはそれとして。
龍人のゲージはもうだいぶヒビが入っていて、だいぶ限界が近いのが見て取れる。
大火力を叩き込めば壊せそうだけど……
……と、そんな事を考えていたら視界が1つになった。
コメント:
:え
:えっ
:えっ
:ふぁっ
:ふぁえ?
チャット欄のみんなが驚くのも無理はない。
だって───
「ギッ!?」
───私達が具現化したのは、龍人の目の前なのだから。
『“魔力纏”』
暗示のお陰もあるのか身体は勝手に“魔力纏”を起動させる。
……なんというか
『───“霊華神炎”!!!』
考える時間すら与えてくれないの!?
『───“妖蝶神泉”』
私の手からは炎を纏った花びらが吹き荒れ、隣にいる彼女の手からは水を纏った蝶が吹き出す。
これは自機弾幕───“ボム”と呼ばれるそれだから一瞬で終わる。
時間にして3秒ほど。
そんな一瞬でも凄まじい激痛が私を襲う。何とか耐えてはいるけど意識を持ってかれるかと思うくらい。
───それは、元々使えないものを無理矢理使っている代償。
圧倒的に処理能力が足りていないものを、無理やり使っている代償だ。
「ガァァァァ!!!」
けれど、私と彼女のボムは重傷を負っていた龍人には決定打となったようで。
ゲージが割れると同時に爆発音がした。
コメント:
:割った!!
:割ったぞ!!
:すごい、勝っちゃった……!!
:ホントにすごい……!
:UNLIMITEDに勝っちゃったよ姫……!!
:いや待てまだ終わってないぞ!!
:終わってない……!!
:HPゲージちょこっと残ってる!!!
冷静な人達の言うとおり、龍人のHPはまだ残ってる。
でも、ななみちゃんの説明が確かならもう龍人は何もできない。
龍人も落下し始めてるから落下ダメージで絶命する可能性もある───
『……!』
そんな事を考えていると私の背中を押す手の感覚。
『行ってこい』
そう、確かに聞こえた。
コメント:
:え
:え
:ななみちゃん……?
───あぁ。
『……』
───あくまで。
キミは、私の補助としての立ち場を離れるつもりはないんだね。
例え、そんな状態であっても。キミは私の補助を全うする気なのか。
『……行ってきます』
そう言ってからその場から龍人へ向かって落下を始める。
コメント:
:!?!?!?
:姫!?
:超高所からのスカイダイビングですか!?
:高い高い高い!!!
:あんま気にしないようにしてたけど高ぇな!?
:怖いって
───実行してある3つの自己暗示から。
“姫華日奈子”と“花園ななみ”の自己暗示を解除。
『……』
落下しながら考える。
龍人のHPゲージは残り数ドット。
でも今の手持ちの武器で有効打を与えられそうなのは細剣くらい。
その細剣も、破壊不可じゃないから正直この高さから龍人の鱗を貫くと考えると不安がある。
ななみちゃんと同じニュートラルレイピアを使えば、という話もあるだろうけどそもそもボクの初期武器は細剣じゃない。
『“魔力纏”』
だからといって初期武器だと削れる体力量じゃないから。
『アレを、やろうか』
コメント:
:お
:お……
:まさか
:姫!?
:アレをやるんですか!?
:アレをやってくれるんですか!?!?
「ギッ!?」
『───“四手一殺”』
龍人に近づいて呟くと同時に四肢それぞれに別の属性が宿る。
『水!』
水を纏った左脚による下顎蹴り上げ───名を“水面蹴り”
『火!』
火を纏った左腕……正確には爪による首元の引き裂き───名を“狐火裂き”
『風!』
風を纏った右腕……捻れる貫手による胸部の刳り貫き───名を“旋風削ぎ”
『土!!』
土を纏った右脚による腹部押し蹴り───名を“土壌抜き”!!
「グェァッ!!!」
コメント:
:出たぁ!!
:これぞリーダーズの絆の証!!
:それぞれが教え合った想撃を用いて一連の攻撃にする“四手一殺”!!
:だいぶマナちゃんの風が殺意高いんだよなぁ
:シン様の土も殺意高いけどね
:いや全員殺意高いぞ
:姫の水が少し殺意低めなくらいじゃない?
:てかアレでもまだ足りねぇのかよ
:どんだけしぶといねん
それでも、1ドット。たった1ドットが残る。
ならば
『“バタフライフェザー”』
ウインドウを操作して手元に出現させたのは“ニュートラルグレートシールド”。
『これで───』
初心者用のその大盾を大きく振りかぶって
『終わり!!』
唱えるべきは。
『───“シールドバッシュ”!!!』
ボクのはじまり。姫川ユウとしてこのゲームを始めて、一番最初に取得した“大盾”基礎スキル“シールドバッシュ”!!!
「グォ………」
『───“魔力纏”』
魔力を纏い、蝶の羽を畳む。
纏った魔力を背中から噴射するようにして加速。
「グォォァァァァ!!!!!」
『───消し、飛べぇぇぇぇぇぇ!!!』
コメント:
:草
:草
:物騒すぎて草
:そういえば姫がここまで怒鳴るかのように叫ぶのあまり聞かないような
:あー……
:言われてみれば?
:確かに全力全開の絶叫みたいなのはあまり聞かないね
:今回がだいぶ異質
落下感覚とチリチリと削れてるような感覚かしばらく続いて。
そして───
バツン、と。
「ギァァァァァァァァァァアアアアア!!!」
龍人の大きな断末魔。
『───へっ?』
それから、支えを失ったボクの呆けたような声。
その後ろで───大きく爆ぜた音がした。
『……終わっ───』
というわけでこのお姫様。“姫川ユウ”、“姫華日奈子”、“花園ななみ”の三重暗示とかいうかなり負担のかかりそうなことをやってました。
前話と今話で一人称が“私”になってることが多かったのはそれが原因です。
で………“妖蝶神泉”と“霊華神炎”に関しては本文で書いた通りなので説明はしません。一つ追加情報で言うとすればあの2つはどっちもななみちゃんの使う自機弾幕なのでユウさんの処理能力では全くスペックが足りません。




