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カゲビト  作者: 永眠布団
第四章 帰省

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第4話 『時間短縮方法』

 


 あれから、何事も無く二日間が経過した。

 その間も真城は“いつも通り”のスケジュールを繰り返す。

 朝起きて修練場。昼食を挟んで午後からは研究室で実験、或いはジムで肉体作りといった毎日だ。


 そしてそのルーティンは例え今日とて変わらない……はずだった。



 朝起きて、真城は修練場に移動する。

 そして前日と同様に回避訓練を開始した。


 今日も前日とほとんど変わらないスケジュール内容を進めてく。


 回避訓練を二十分。休憩を十分間。

 それを何セットも繰り返す。


 二時間が経過した頃だった。

 茶髪の青年、切矢祐真(きりやゆうま)が修練場へと顔を出す。


「おぉ、なんだもう始めてるのか。相変わらず早い奴だな。……俺なんてどうにも、朝が弱くてしょうがない」


「あ、切矢さん。おはようございます」


「あぁ、おはよう。っていい加減その“さん”付けを止めてくれって。何だかむず痒いんだよソレ。ふぁ~……あぁクソ、まだ眠い。中々頭が起きて来ない」


「……すみません。どうにも名前の呼び捨てに慣れなくて」


「そりゃ言わなきゃ慣れていかんだろうよ……」


 はぁ、と切矢は溜息を一つ付き、すかさず思考を切り替える。


「まぁいい。とっとと始めようぜ。このままじゃ眠くなる一方だ」


 切矢が修練場に来た理由。

 それは真城と同様、戦闘訓練をする為だ。

 幽霊騒動の任務以降、自身の力不足を痛感したのは何も真城だけではなかった。

 切矢もまた、黒羽(くろば)との戦いに敗れた事で更なる強さを追い求め、真城と一ノ瀬の修行場まで行き着いた。

 そうして一ノ瀬と真城に頼み込み、参加する許可を得たのだ。


 真城としても、それはありがたい提案であった。

 何せ、一ノ瀬とて暇ではない。毎日つきっきりで真城の特訓につき合える訳じゃない。

 『戦闘部隊』が任務中、予期せぬ“フェイズ4”と遭遇した時。或いは『調査部隊』の任務時に、“フェイズ4”が関わっている可能性が高い時等々に、一ノ瀬が派遣されるケースがあるからだ。

 現に今も、一ノ瀬はそういった事情で修練場に来ていない。


 真城を一早く成長させるといった目的がある手前、一ノ瀬が戦闘訓練に専念出来るようにと神崎があれこれ調整してくれてはいるのだが……他の“影狩り”を疎かにして良いわけがないので、それは当然とも言えるだろう。


 ……が、そんな時、真城は一人での訓練となっていた。

 もちろん“戦闘訓練用ロボット”があるので、一応は一人でもこなせるが……一ノ瀬の他にも相手をしてくれる人物がいるというのなら、断る理由は無い訳だ。

 まぁ実質監禁状態の真城とは違い、切矢は任務に呼ばれる事もあるので一ノ瀬・切矢が共に不在。といった事態もままある訳ではあるのだが。


 現に切矢も昨日まで本部にはいなかった。

 が、任務を完全に修了し、やっと戻ってきたのだろう。



「そういえば、影人を捕まえて来てくれてありがとうございます。お陰で久々に“力”の修行が出来ました」


「いいさいいさ、気にすんな。それはこっちにも利がある話だ」


 だから例の件にはよろしくな、とでも言いたげな含んだ笑みで答える切矢へと『そうですね』と短く返して真城は位置に着く。

 真城は戦闘開始のアラームをセットしてお互いに向かい合う。いつでも始められるといった面持ちだ。


 しかし真城は周囲を見渡して、一つの違和感を察知した。

 いつもはいるはずの人物が見当たらない、といった事に今更ながら気が付いた。


「あれ? 今日は立花(たちばな)さん、ついて来ていないんですね」


「ん? あぁひなたなら阿久津(あくつ)の奴を見に行ってるぜ。あいつが自分で“影狩り”に誘った手前、何かと思う所があるんだろうな……。最近は色々と気にかけてるみたいだし、任務中もよく『心配だ心配だ』ってぼやいていた」


「あぁ~、なるほど」


 切矢との修行時には立花も一緒に顔を出し、訓練が終わるまで修練場の端っこでちょこんと座って待っている。といった光景をよく見たのだが……今日はそういった事情があるらしい。


 阿久津遼汰(りょうた)もまた、別の場所で訓練を受けている。

 “影狩り”に来て以降、“影結晶”を使っての“影操作”の特訓をしている様なのだが『入団した者が初めに経験する難所ポイント』と言われるだけの事はあるらしく、未だ苦戦中との事だった。


「ま、ひなたが助けたいって言ったんだ。俺としてはそれを尊重するしかあるめぇよ。……理由は、分からなくもないからな」


「もしかして寂しがってたりします?」


「馬鹿言え!! 寧ろホッとしてるぐらいだよ。ひなたはああいった性格だから中々人と馴染めなくてさ……。どういった理由であれ、まともに話せる相手が増えるってのは良い事よ」


 我が子を想う親の心境。といった表情で切矢は小さく笑みを零すと、


「ほら、そんな事より」


 ピピピッとアラーム音が鳴り響く。


「――戦闘開始、だ」


「ちょ――ッ!!」


 一気に切矢が詰めてくる。

 真城と切矢の、影と影が激突する。



 …… ……



「そういえばよ、実験でついに“後遺症が出ない分離”が出来たって話じゃねぇか。良かったな、これでまた一歩理想に近づいたって訳か」


 一度目の戦闘訓練が終了した休憩時間。

 切矢が思い出した様に、そんな事を口にした。


「はい、ありがとうございます」


 真城も昨日成せた偉業に口元を緩ませる。が、すぐに顔を曇らせた。

 何せ、まだまだやるべき事。やりたい事の問題点が山積みだ。


「ん? 何だ、あんまり嬉しそうじゃなさそうだな」


「いえ、そういった事ではないんですが。如何せんまだまだ改善したい点が多くあり……」


「ほう。一体どんな事なんだ? 話してくれりゃ何か改善のヒントくらいは俺にも浮かぶかもしれないぜ? ……まぁそういった専門家って訳じゃないから期待には答えられないかもしれないが」


「あぁいえ、そんなはありませんよ。もしかしたら別視点からの切り口みたいな考えが浮かぶかもしれませんし。……そうですね」


 真城は昨日浮かんだ問題点を打ち明けた。

 それは影人一体の分離に対して、精神的な疲労が大きい事。

 また、その作業を終えるのに多くの時間がかかる事。そして、


「このままただ“力”の制御について理解を深めるだけでは、どうやっても実戦で使えるレベルにまで行かない気がして……。いや、もちろん“力”の制御を深めていく事も重要だとは思ってるんですが、もっと大きく時間を短縮してこちらの負荷を減らせる方法が何か無いものか、と」


「なるほどねぇ」


 切矢は目を閉じて腕を組むと、唸りながら考え込む。真剣な面持ちだ。

 そして時間にして五分ほど考えに考えて、切矢は一つの疑問を口にした。


「なぁ。真城が見つけたっていうその“混沌点”の事なんだけどさ、その“混沌点”ってのを全部綺麗に引き離す事が本当に(・・・)後遺症が出ない条件なのか?」


「それは間違ってないですよ。現に実験で綺麗に剥がした二名とも、後遺症が出なかったと報告を受けていますし」


 一人目に後遺症が出なかった事。

 その事で研究員達と喜んだあの情景を思い浮かべる。あの時の喜びを真城が間違える訳がない。

 二人目だって同様だ。その日の深夜、二人目にも後遺症が出なかったという知らせを安室からちゃんと受け取った。

 着信履歴だって残ってる。決して夢ではないはずだ。


「でもそれってさ、つまりは“混沌点”ってのを全部綺麗に引き離したから(・・)、後遺症が出なかったって事の証明にはならなくないか? 影人は二体とも全部綺麗に引き離している訳だから、“全部を綺麗に引き離さなかった場合”の結果サンプルが無い訳だし。もしかしたら影人に“混沌点”が三つあった時、一つ混ざったままの状態で分離しても、或いは後遺症が出なかったかもしれないだろ?」


「……いや、でも、流石にそれは」


 切矢の言葉に、真城が答えを詰まらせた。

 確かに、絶対にそうじゃないとは言い切れない。


 そういった実験をしていないのだから、当然どうなるかなんて分からない。

 確かに切矢の言う様に全部を全部、綺麗に引き離す必要はないのかもしれないが……しかしそんな状態で、後遺症が出ないなんて事があり得るか?


「後遺症の発生条件と“混沌点”に何かしらの因果関係があるのは明らかですし……。もしも後遺症の原因が“混沌点”を綺麗に離せずに人の部分が損傷してしまったが為に起こるものだとするのなら……、やはり“混沌点”を雑には扱えないですし、その逆で人の部分に“混沌点”が残ってしまった場合でも、人体に何らかの悪影響なり後遺症が起こる可能性は否定出来ないじゃないですか」


「……本当にそうなのかな、俺が気になったポイントってのはソコなんだが」


「……?」


 疑問符を浮かべて小首を傾げる真城へと、まだ分からないのかといった表情で切矢が言葉を補足する。


「いや、だからさ? 真城の今までの口ぶりだと“混沌点”ってのは悪者で元凶!! みたいに聞こえてくるけどさ、正直“混沌点”ってそんなに悪いもんなのか? ってのが俺の言いたいとこなのよ。……そりゃあ何でも“やりすぎ”ってのは良くないが、真城の言う“混沌点”って要するに“侵食率”の事だろう?」


「…………え?」


 一瞬、真城は何を言われているのかが理解出来なかった。

 素っ頓狂な声を上げ、頭の中が白一色に覆われる。

 身体も数瞬停止して、危うくこけそうにさえなっていた。


「何だ、どうかしたのか?」


 真城の反応を見て取って、切矢は怪訝そうな顔をする。

 何か間違った事を言ったのか? とでも言いたげだ。


 しかし真城は気が気じゃない。

 さも新発見の様に扱って、考えてもなかったが……言われてみればそうなのだ。


 真城が“人と影の混じり合う箇所(混沌点)”と呼んでいた場所。

 “侵食率”で表されるその同化具合。その、影と同化した肉体部分。

 それらが示すものは、どちらも全く同じものだろう。

 等しく、“人と影の混じり合う箇所”である。


 無意識下で、真城は“混沌点”と呼ぶ箇所が全て『悪影響を及ぼしかねない悪い部分』であるのだと勝手に考えていたけれど……。

 もしも“混沌点”の中には『綺麗に分離しなければ後遺症が出る箇所』と『混ったままでも問題無い箇所』があるのだとしたのなら?

 “そう”である前提で、もしも『綺麗に分離しなければ後遺症が出る箇所』と『混ざったままでも問題無い箇所』を判別し、『綺麗に分離しなければ後遺症が出る箇所』のみを綺麗に分離出来たなら?

 それは、分離作業を大幅に短縮しうる“画期的な方法”と言えるのではなかろうか?


(今の今まで、さも『俺が新発見しました!!』みたいな顔でいたのか……。恥ずかしくなってくるな)


「真城?」


「あぁ、いや。……問題ないです」


 真城は思考を切り替える。

 切矢へと意識をシフトする。そして、


「切矢さん。もしかしたら、方法が見つかったかもしれません」


「……ッ!? マジか!!」


「はい。その方法なんですが……」


 真城は浮かんだ方法を切矢にも共有する。

 その過程で情報を整理して、新たな発見にも気が付いた。



 それは真城が“混沌点”を発見して以降、より考える様になった疑問点。“後遺症が出なかった人達”についての事だった。

 今までの真城は、過去に『“後遺症が出なかった人達”といった存在が何故現れたのか?』といった疑問に答えを出せてはいなかった。

 しかしそれも、今回得られた方法が事実であると仮定した場合、一つの仮説が立てられた。


 それは、数ある“混沌点”の中で『綺麗に分離しなければ後遺症が出る箇所』へと奇跡的に“力”がヒットして、綺麗な分離が出来た。といった可能性であった。


 ……うん。

 まぁ、言いたい事は分かる。

 結局『“奇跡”で片づけるのか?』といった所だろう。


 しかしそれでも、奇跡的な偶然が重なって『影人の“混沌点”全て(・・)が綺麗に分離した』などというよりは、余程現実味が湧いてくる。

 少なくとも真城はそう感じた訳である。

 何せ、『綺麗に分離しなければ後遺症が出る箇所』というものが少なければ少ない程。或いは、一つだけであったなら、それだけ“奇跡”が起こる可能性も高くなる。


 綺麗な分離も、“混沌点”が複雑に混ざってない限りは簡単だ。

 それこそあの実験の一回目で扱った影人のような状態あったなら、“力”で撫でるだけで簡単な分離が出来るのだ。



「『綺麗に分離しなければ後遺症が出る箇所』か、なるほどな。確かに“混沌点”ってのの中にそういったもんがあるのなら……時間の短縮になるわなぁ。“ソレ”のみを分離すれば良いんだから、“混沌点”全てを分離する必要も無い訳だ。ただ“ソレ”があると仮定して……問題は“ソレ”をどうやって見分けるか」


「それなんですよねぇ。いい方法が浮かんでるとは思うんだけどなぁ」


 良い解決法は無いものか?

 真城は再び頭を悩ませる。


「俺はその実験ってのをちゃんと見た事ねぇんだが、真城の言う“混沌点”ってのはまずどうやって見つけるものなんだ?」


 切矢からの質問を受けて真城は、そういえばと思い返す。

 切矢があの研究室に来ていたのは真城がまだ分離実験に慣れていない最初期の時だった。

 その頃は、まだ真城も分離実験の方法を確立してはなかったし、色々な機材に囲まれて集中もままならない頃だった。

 切矢は切矢で、見ているだけでは流石に退屈だったようで、次第に研究室には来なくなり自身の訓練に専念する様なった。

 その内に切矢は別の任務に参加する様にもなり、そうこうしている間に捕獲していた影人が尽きてしまったのだった。


「“力”を溜めた右手を影人に当てるだけですね。やる事自体は切矢さんが知っているやり方とそう変わっていませんよ。ただ、その純度を適当な加減まで下げる必要はありますが」


「純度を下げる?」


「はい」


 真城は今までの経緯を振り返る。


 真城の持つ“力”とは、ただ“使う”だけではその効力を十全に発揮しない。

 右手が光り輝いて、辺りを眩しく照らすだけである。

 いやもちろん、その光だけでも影人にとっては毒の様なものではあるのだが……しかし“影を無効化し、影の攻撃に対処する”といった点ではあまりにも“力”が弱すぎた。

 “光”が影を無効化するよりも速く、その攻撃が真城へと到達してしまうから。


 故に真城は右手の平に“力”を収束させる事で、その純度を上げて対処した。

 結果、“影を無効化し、攻撃に対処する”といった点においては問題なくその機能を発揮した。……のだが、“影人から人を分離する”といった点においてはあまりに“力”が強すぎた。


 “力”の純度は高ければ高いだけ良いだろう。

 そんな真城の考えを、改める事となったのだ。


「今までの……というより切矢さんが知っている当時のままだと、溜めた“力”の純度が高すぎて効力が必要以上に出てしまうんですよ。一瞬にも近い速度で“混沌点”が無理やり分離してしまうので分離“作業”をする間なんてありませんでした。なので、作業が出来る様にする為にあえて“純度を下げる”事にした訳です」


 真城は右手を前に出すと、その手に“力”を溜めていく。

 右掌が白く淡い光を放ち出す。

 この純度の加減を考える事にも大分苦労させられたのだが、まぁその話は良いだろう。

 真城は続いて左手に影を纏わせると、その影で30cm程の槍を作り出す。


「その結果……」


 右手で影の槍の先端を掴み取る。

 が、影の槍は霧散しない。


「この様に、“力”を発動中の右手で握ってもすぐに消し去らない様にする事が出来るまでになりました」


 真城が影の槍を掴んでから約十秒。

 ようやっと“力”が影の槍に浸透し、影を霧散させていく。


「これは俺の感覚の話なので傍から見ても分からないとは思うのですが……影の槍に“力”で触れてから霧散するまでの十秒間。そこで行われているのは『“力”の浸透』です。“力”を影人の身体に徐々に行き渡らせていき、人と影が分離しやすい状態へと変えていく訳ですね。くっ付いたシールをはがす時に濡らしたり温めたりしてはがれやすくする前準備、といった感じでしょうか? それだけでも大抵の箇所は簡単に分離してくれるんですが」


「簡単に分離出来ないのが“混沌点”ってな訳か」


「はい、そうです」


 “力”の浸透。

 それがまるで水面に指をツンと一瞬付けた時の様に触れた点から波及していく中で、船舶レーダーが捉える障害物の様に捕捉して感じ取れる場所こそが……“混沌点”なのだ。


「“混沌点”には特に違いとかは感じないのか?」


「『綺麗に分離しなければ後遺症が出る箇所』を見分けられそうか、という意味でなら何も分からないですね。現状、違いといっても“混じっている”程度の差ぐらいでしょうか」


「そう、か」


 切矢も頭を悩ませる。


「そうなると……やっぱり、全部を綺麗に剥がすしか無い訳か」


「……、」


 話がここで息詰まる。

 “いい案が出た”と思っただけに、悔しい気持ちが溢れ出る。

 二人は俯いた顔を見合わせて、盛大な溜息を零した。


「……う~~ん。“混沌点”の全てが後遺症の有無に関係する訳じゃない、って線を聞いた時は何か行けそうな予感がしたんですけどねぇ」


「仕方ねぇさ。“混沌点”の中に『綺麗に分離しなければ後遺症が出る箇所』がある。そういった仮説が立っただけでも良しとしようぜ? 今度影人が捕まって来たら色々と試してみて、そんで“答え”を出せばいい。ソレが実際に有るか無いか。それが分かるだけでも色々と話が違ってくるしな」


「まぁ、そうですね」


 もしも“ソレ”が有ったなら、“ソレ”を見分ける方法を模索する。

 もしも“ソレ”が無いのなら、別ベクトルからのアプローチを模索する。


「ま、何をするにしたってまず影人が捕獲されない事には始まらないんだけれどもさ」


「それなんですよねぇ……本当に」


 真城はその事実を思いだし、溜息を深くする。

 影人無くして、実験は行えない。その事にどうしようもなく歯噛みする。


「ほら、休憩は終わりだ。とっとと戦闘訓練を始めるぞ」


 ぐったりとする真城の肩に手を置き、切矢は話題を切り替える。


「……、」


 切矢の声で我に返った真城は頭のモヤモヤを払拭して立ち上がる。

 距離を取り、構える切矢を見て取って、真城も同様に身構える。


 しかし戦闘開始の時間が刻一刻と近づいて、――戦闘開始。のその瞬間。

 真城がまだ、心半分……ここにあらずなのがまずかった。


 戦闘開始のその直後。

 開始と同時に距離を一気に詰めてきた切矢への反応が、完全に遅れてしまっていた。



「――――――ッ」


 直後、切矢からの攻撃が、全く防御も間に合わずに立ち尽くす真城に直撃する。

 ゴッッと鈍い音を響かせて、……真城が勢いよく吹っ飛んだ。



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