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カゲビト  作者: 永眠布団
第二章 初任務

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第19話 『呪いの桜』



「これがいわゆる、“呪いの桜”って奴ですね」


 真城はそう言うと、目の前にある一際大きな桜の木を指さした。

 桜の木と言えばやはり印象的なのはピンク色の花に彩られた美しい姿だろう。

 しかし、今は夏である。

 綺麗な花は既に散り、現在は青々とした葉を茂らせている最中だ。


 朝起きると、真城と桜井は大学が開くのを待ってから足を運んだ。

 そうして早々、“呪いの桜”のある桜広場へと赴いたのである。


 栗枝教授の件は後回し。

 もしかするともう大学にも来ているのかもしれないが、別段急ぎの用でもない。

 そもそも会って話すわけでもない上に、今回の任務に関係があるかも不明な状況だ。

気になった方から行くとしよう。



 桜広場。

 それは送られてきた端末の情報。並びに真城の知識でも知るように、人の立ち入りが禁止となっているエリアである。

 桜広場一帯を工場現場などで見受けられる金網フェンスと白いシートで覆っており、中の状況を覗き見る事が出来ない状態に加え、所々には鎖が巻かれ、完全に人の侵入を拒んだものとなっていた。


 これではもはや、逆に“呪いの桜”の噂が真実であると言っているようなものである。

 まぁそれでも、こうやって桜広場を完全封鎖してみれば、嘘か真か『桜の所為で怪我をした』等の話が減ったらしいのだから仕方ない。

 別に、運を吸われるだの何だのといった噂を信じる訳では無いにしろ、触らぬ神に祟りなし。……要は近づかなければ良いだけだ。



 因みにそんな厳重な閉鎖エリアに二人がどうやって侵入をしたのかと言えば、ご察しの通りに“影世界”経由である。

 ……流石は“影世界”、超便利。


 

 桜広場はサッカーコートほどの大きさの四角いエリアであり、その四角い形に沿うようにして桜の木が植えられていた。

 そしてそのエリア中央には、一際大きな桜の木が一つ鎮座している。


 一際大きな桜の木。

 それこそが、“呪いの桜”と言われる代物だ。


 何故この桜だけが周りの桜に比べて大きく成長しているのか?

 それもまた、この噂に拍車をかける要因となっていた。


――人から吸った“運気”を糧に急成長でもしたのだろう。


 ……まぁ、そんなところだ。



 確かに、桜の木というものを庭などに植えるのは縁起が悪いとされるらしい。

 その理由として、桜の木は成長の為により多くの養分を必要とするが故に、庭に植えてある他の植物が育つのに必要な養分までもを吸い取ってしまい、周りの植物を枯らしてしまうから……だとかなんとか。


 周りの養分を吸い取る代わりに人から“運気”を吸い取って成長する桜の木。


 ……噂を作る方もそれはそれでよく考えるものである。

 

 

「中央のこの桜。

 そんな噂が立つ前は、『この木の下で告白すると結ばれる』……みたいな噂が囁かれていたらしいよ~。

 端末からの情報によれば、だけど。

 人を幸せにするような噂から一転、人を不幸にする噂に変わるとは……なんともねぇ」


 そう言って、桜井は“呪いの桜”の幹を撫でた。



 噂とは、そのほとんどが“何者かの得の為”作られた代物だ。

 客寄せがしたい。流行らせたい。

 そういった思惑があるかもしれない。

 嫌わせたい。人気を落としてやりたい。

 そういった逆恨みや嫉妬からくるものもあるだろう。

 理由自体は様々だ。

 

 “呪いの桜”。

 その噂が作られた理由も、きっと何かあるのだろう。

 大学への嫌がらせ……などは、一番ストレートな考えだ。

 元々の噂が縁結びであった事を考えるなら、恋が実らなかったという腹いせというのもあるかもしれない。

 理由は様々。千差万別。考えるだけでキリがない。


 しかし一つ言えること。


 この桜の木は、そういった“思惑”によって利用されてしまった物であるということだ。



(可哀想に……)


 桜井は内心でそう思う。

 木の幹を撫でながら目を閉じ、桜の木に対して黙祷をするように祈りを捧げる。

 この木だって本当は、人を不幸になんてしたくないはずだ。

 もっと色々な人に桜の花を見てもらいたいはずなのだ。

 

 わざわざこんな広場に植えられて、誰にも見てもらえないなんて悲しすぎる。



 ……と、そこまで考えて。


(……うん?

 そういえば……この桜の木。

 噂が流行り始めた時期を考えれば、“黒隠”が関与している可能性はかなりある。

 噂の内容からしても、これが“影人工場”に一役買っているのは間違いない。


 ……けれど、だとすると。

 どうして“黒隠”は、この噂を放置したままなの?


 ……いや、それ以前に。

 どうしてそんな噂が立つまで放置していたの……?)



 ふと、桜井の脳裏に疑問が浮かぶ。


 噂が流れて四年間。

 今現在に至るまで、“呪いの桜”といった噂は根強く残り続けている。

 その理由は“恐怖”からくるものだ。


 木を切り倒そうとした業者に起こった事件。悲劇。

 それにより、それまでは半信半疑であった噂に信憑性が加わった。


 『近づけば不幸になる』

 『触らぬ神に祟りなし』

 そういった“恐怖”が今の状況、……桜広場の閉鎖といった事態を生み出した。


 ……しかし。

 しかし、である。


 本来そういった状態は、“黒隠”からしても本意ではないはずだ。

 影人化を起こすなら、定期的なストレスを人間に与え続けなければ意味が無い。

 もしも噂通りに、人間を不幸に出来るとしても、対象であるはずの人間が近くにいなければその効果を見込めない。

 この桜の木一本で、大学全域をカバー出来るとしても、わざわざそれを教える義理は無いはずだ。

 人足を遠退かせ、さらには立ち入りまで禁止する。

 禁止された状態を、そのまま放置している。

 それでは目的があべこべだ。

 

 ……もし桜井が“黒隠”の立場なら、こんなヘマは犯さない。

 この桜の木と同様の仕掛けをいくつも用意できるなら尚更だ。


 人を不幸にする以上、そういった噂が立つのは仕方がない。

 が、わざわざ切り倒しに来た業者を返り討ちにするのはやり過ぎだ。


 仕掛けがバレたのなら大人しく、桜の木には切り倒されてもらえばいい。

 その裏で、同じ様な仕掛けを別の所に設置し直せばいいだけだ。



 ……これではまるで、


(この桜の木に人を集めさせたく無いような……?)


 そんな考えが頭を過る。


(……一体、“黒隠”は何を考えて)


 ――いるのだろう。

 そういって、思考を区切ろうとした桜井の考えが中断する。



 唐突に現れた気配。

 それに反応し、即座に思考を切り替える。


 立ち入り禁止のこの場所に、来れる者など限られる。



「誰だ!!」


 気配のする方へ向け、同じく気配を察した真城の声が木霊した。

 

 真城と桜井。

 互いに同じ個所へと視線を向ける。

 視線の先、……桜広場を囲うように植えられた桜の木。その一つへと。

 

 

「……おっと。

 驚かせるつもりは無かったんだ。申し訳ない。


 ただ少し、……ここで何をしているのかなって思ってね」


 すっと、木の影から姿を現す者。

 それを目にし、真城達の警戒が強まる。


 何故ならそれは、本部で目にした顔写真。

 足立尊(あだちたける)、その人だったからである。


 真城達の目的。

 討伐対象。――“黒隠”だ。



 ……



 まず真城に浮かんだのは疑問だった。

 “黒隠”足立尊の人物像。それをしっかりと理解したわけでは無い。

 しかしそれでも、この“黒隠”という人物が今ここで姿を現す事には疑問を感じた。


 “黒隠”。影人にして“フェイズ4”。

 その戦闘スタイルや保有する能力は未知数。

 この四年間、凪原町を拠点に据えて活動を続けてきた存在。

 意図的に人々の影人化を促進させ、影人を生み出す“影人工場”の主。


 大まかな情報としては、まぁそんなところ。


 さらにここ数日。

 “影狩り”がこの件を影人案件だと気づき、動いてから分かった追加情報。

 “黒隠”が凪原大学に対し何らかの執着。或いは目的を持っていると考えられる事。

 そしてその“何らか”の為になら、折角生み出した影人達でさえも囮に使えるという事だ。


 真城は疑り深い人間だ。

 人からの厚意に対し、裏があると勘繰ってしまう人間だ。


 だからこそ思うのだ。

 この者……“黒隠”は頭の回る人物だ、と。

 悪く言うなら『狡猾』か。


 この四年間。

 “影狩り”に見つかることなく“影人工場”を成立させてこれた事。

 それこそが、何よりの証拠である。


 行方不明が続くなら怪しまれるのが当然だ。

 しかし消える人間の期間を適度に調整し、且つ行方不明のバリエーションを増やしていったからこそがこの結果。

 一年で見れば二、三人程度の行方不明者。

 まさか四年間で見た時に十一名も居なくなっているとは思うまい。

 この情報だって、“影狩り”がいくつもの情報を漁った結果見えたこと。

 例え凪原町に住んでいたとて、身近な人間が消えた以外は噂でしか知り得ない。

 体感で見れば、それほどの人間が消えているとは気づかない事だろう。


 ……まぁ、一部の“噂話”や“迷信”を信じるおじさまやおばさまの活躍で“ドッペルゲンガー”なんて話が流行っていたわけではあるのだが、それはそれ。


 加えて、仲間の影人を駒として扱う姿勢。

 『影世界専門部隊』との交戦では影人達の後ろへと身を潜め、目的の為になら影人を潰してでもこの凪原大学に潜伏し、また侵入者である真城達に向け女の影人をも放ってきた。


 『影世界専門部隊』との接触はイレギュラーな事態だとしても……本来であるのなら、駒である影人に指示を出し、“黒隠”自身は後方で隠れ潜むのが常套手段。

 ……そんなふうに思っていた。

 軍師の様なタイプだと、真城はそう考えていたのである。


 だからこそ、今までは逆に違和感が無かった。

 軍師なのだから、大学を捜索してもそう易々と見つける事は出来ないだろう、と。

 女の影人が襲ってきた時もそうである。

 まぁ、そうだよな……“黒隠”自身ではなく別の影人を差し向けるよな、と。




 真城の感じた疑問とは、まさにそれである。


 何故今姿を現した?

 行方不明者数からしても、まだまだ使える手駒はあるはずだ。

 ……にもかかわらず、“黒隠”から接触をしてきた意味。


 一体、何が目的だ?



 警戒心を解くことなく、“黒隠”を睨み続ける真城。

 相手の出方をまずは窺わなければならないからだ。


 真城と桜井が“黒隠”の存在を認識するまでのラグ。

 それは間違いなく、“黒隠”にとっての好機であったはずなのだ。

 にも拘らず、“黒隠”はそれを放棄している。

 それにも必ず理由はあるはずだ。


 少なくとも、すぐに戦闘を始めようという気ではない様子。


 ……とはいえ、それでもその油断が命取りにならないとも限らない。


 真城は拳を強く握り締める。

 今現在、真城の両手は素手である。

 真城の武器、革手袋は今も懐に収納中。

 今現在が夏であり、革手袋などしていると熱い上に周りから怪しまれるという理由で付けてなかった訳ではあるが、人の立ち入りの制限された桜広場に入る時点で“こういった事態”になる事を警戒出来ていなかった事に歯噛みする。


 例え今、目の前にいるのが“黒隠”では無かったとしても、別の影人が襲ってきていた可能性は十分にあったのだ。


(……くそっ、どうする?)


 横目でちらりと桜井を確認すると、桜井も真城同様に“黒隠”へと視線を向けている事が分かった。

 その右手は腰にぶら下げていた警棒を抜刀する姿勢で止まっている。

 一体いつから警棒を腰にぶら下げていたのだろうか?

 少なくとも、真城宅を出るときはそのような恰好ではなかったはずだ。


 桜井が昨日の夜、いくつかの小道具を大きめリュックから取り出して、小さいリュックに詰め替えていたのは分かっている。

 桜井は今その小さいリュックを背負っている訳なのだが、女の影人と戦いを始めた時の様に“今”警棒を取り出した気配も感じなかった。

 ……ということは、まず間違いなく桜広場へと入るタイミングでそうしていたのだろう。


 これは影人との戦闘経験。

 任務での成功と失敗の経験。

 その賜物だろう。


 桜井との初対面。

 加えて真城宅でのエロ本騒動などでは、正直な所『なんだこいつは?』とか『抜けてる所があるよなこの子は』とか『あざとい』とかいう印象くらいのものであったが、任務中は違うらしい。……流石である。

 


 対する“黒隠”。

 真城達からの警戒と敵意を受けてなお、動じる様子は感じない。

 それどころか、自身が武器を持ってはいないのだとアピールするかのように、両手を開いてヒラヒラする。


「まぁ、待ってくれ。

 俺は話し合いをしに来たんだよ。お前達と」


 そう言って、一歩前に進み出る。


「……そんなこと言って油断させようとしても無駄だよ。

 気付いてないとでも思ってるの?

 もう一人、隠れているよね。後ろにも」


 桜井の言葉を聞いて、真城も気が付く。

 どうやらもう一人、“黒隠”とは別の影人が桜の木を背にして隠れている事に。


「あぁ、彼の事は気にしなくも良い。今のところはね。

 お前達が俺の話に応じてくれるのであれば要らぬ警戒だ。


 お前達が話に応じず、俺に危害を加えるといった場合の対策。……とでも思ってくれればいい。

 それ以外で、お前達に危害を与えるつもりは無い」


「それで、はいそうですか。なんて言うとでも?」


「こればかりは仕方がない。

 お前達が俺を狩りに来ている以上、俺が何の対策も講じないはずは無いだろう?」


 “黒隠”と桜井。

 二人の会話が平行線になっている事を察した真城は、


「……それで、話ってのは?」


 二人の会話に割って入る。

 どの道、真城達の対応は変わらない。

 影人を斃す事が“影狩り”の任務である。

 しかし、そこを抜きにしても一応は相手の意見を聞いてやる必要もあるだろう。

 その上で断る。それがこの状況で一番いいやり方だ。


 真城の言葉を受け、桜井の会話も止まる。

 どうやら桜井も真城の考えを察したらしい。

 結局の所、“黒隠”の話とやらは聞かねばならない。

 でなければ話も状況も前には進まない。

 どんな理由であったとしても“黒隠”がこうして姿を現すこと自体は、願ったり叶ったり。

 このまま何もせず、姿を晦まされる事だけは避けねばならない。



 少しして、真城達が聞く姿勢に入った事が伝わったのだろう。

 “黒隠”が話を始める。


「まず俺は、お前達に興味が無い。

 更に言えば、お前ら“影狩り”と影人達との戦いにさえ興味が無い。


 何故なら俺は、ある男へと復讐する為にしか動いていない」


 そんな事を言う“黒隠”。

 しかし、そんな“黒隠”の言葉に対して、すかさず真城は反応する。


「嘘をつけ!!

 なら何故、影人を生み出し続ける!!

 それも目的だって言いたいのか!?


 ……、原田を影人化させたのだって、お前の仕業だろ!!」


 ピクリ。と、“黒隠”が反応する。


「あぁ……、原田が殺したがっていたのはお前だったか。

 確かに、そう言う原田の意見を組んで殺し方を教えてやったのは俺達だ。

 ちゃんと殺し終えたなら、“黒鉄”や“黒点”の下で働く事を条件にして、な。


 ……でも、原田の奴は俺の“力”とか関係ないぜ?

 もしかしたら少しばかりの後押しはあったかもしれないが……、どの道あいつの影人化は時間の問題だったのさ。俺に当たられても困る」


「原田の事だけを言ってるんじゃねぇ!!

 何人!! ……何人の人間を影人にしたと思ってる!!


 それも興味が無い事だってのか!?

 それもその計画とやらに必要な犠牲だとでも言いたいのか!!」


 真城は、昨日の夜。――自身の端末に送られてきていた行方不明者リストを思い出す。

 凪原町で十一名。

 隣町での二名を加えて、十三名。

 原田を入れれば更に増える。

 この中に、“黒隠”が関与した失踪事件がいくつある……?

 

 半数は確実。……と、言ってもいいだろう。


「あぁ、無論だ。

 俺の計画を邪魔されない為には、お前達“影狩り”のみならず影人共も黙らせる必要があったからな。

 定期的に影人を生み出して送り付ける。それだけであいつらは静かになる」


「そんなことの為に……ッ!!」


 自然と拳に力が入る。

 ギリリと奥歯を噛みしめる。


 これ以上、野放しにすることなんて出来やしない。

 これ以上、不幸な人を増やせない。……増やしてなるものか。


「ここでお前をぶっ倒す!!」


 拳を構えて影纏わせる。

 眼前の“黒隠”を睨みつけ、戦闘態勢へと切り替える。

 今は素手だが仕方がない。どこかで隙を見て革手袋をはめるとしよう。


 そんな真城を見て取り、一つ溜息をする“黒隠”。

 視線を真城から桜井へと移し様子を窺う。


 『お前はどうだ?』……と。



「……残念だけれど、あなたの要求は呑めないわ」


 “黒隠”の視線を受け、静観していた桜井が口を開く。


「理由は三つ。

 まず、これ以上この町の状況をほっては置けない。

 あなたの復讐ってのが成就するまで、影人を生み出し続けるって言うのなら尚更ね。


 それにあなたが復讐をしようとしている男性。

 何をしたかなんて知らないけれど、その男性も私達“影狩り”の保護対象。

 危険が及ぶと分かっていて、私たちが知らん顔出来る訳ないでしょ?


 そして最後。

 復讐を遂げた場合のあなたが、何をしでかすか分からない事。

 もし仮に、あなたが『大人しく投降する』と言った所で、私達が素直に頷けると思う?」



「……、」



 桜井からの答え。

 その答えを聞いた“黒隠”は、しばし天を仰ぎ見る。少しの静寂。……後、


「はぁ~~~~~~~~~~」


 “黒隠”は今度こそ大きな溜息を吐いた。


「交渉は決裂、……か。


 松田のやつが帰還した。

 もし仮に今回の“影狩り”達が、影人を殺す事に抵抗や躊躇いがあるならば或いは……戦う事無く穏便にとも思ったが、……時間の無駄だったらしい」


 失望と後悔。そして怒り。

 あらゆる感情が入り交じる表情で、真城と桜井を見据える。


「――ッ、こい!!」


 突如、声を上げる“黒隠”。

 その言葉に反応し、桜の木が大きく揺れる。

 人影が一つ、大きな曲線を描きながら跳躍してくると、“黒隠”の手前へと“黒隠”を守護するかの様に着地する。

 ガタイの良い、大柄の男。


 それは、桜井が先程警戒していたもう一人の影人だ。



「邪魔者は排除する。――死ね、“影狩り”!!」


 “黒隠”の発する言葉と共に、大柄の影人が攻撃を開始する。

 真城と桜井も同時に動く。



 ――開戦。



「“黒隠”!!

 お前は必ず、ここで止める!!」



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