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カゲビト  作者: 永眠布団
第二章 初任務

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第3話 『“影世界”について』



 眼鏡をかけ白衣を纏った、二十代後半くらいの男性。


 神崎拓富(かんざきたくとみ)

 一見して、おかしなところは見受けられない。

 

 それは、先に九条(くじょう)から得ていた情報。

 『中々の変わり者』といったイメージには当てはまらなかった。


 勿論『言動は普通』だと言っていたのだから、外見での判断は無駄なのかもしれないが……。


 執務室の中へと通された二人。

 真城(ましろ)は促されるまま来客用のソファーに腰を掛けると、神崎もまた真城の正面。向かいのソファーへと腰掛ける。

 九条は神崎の後ろに立つと、そのまま待機する。

 そういえば、九条は神崎の秘書だと言っていたことを思い出す。


「さて……、まずは一言。

 ようこそ、“影狩り”へ。我々は君のことを歓迎する。

 

 既に九条君から聞いているとも思うが、僕が“影狩り”の本部長を務める神崎拓富だ。

 よろしく」


 すっとさし出される右手。

 真城はそれを掴み、握手を交わす。


 やっとここまで来た。

 ここが真城のスタート地点。


「こちらこそ。よろしくお願いします!」


 大きな声で、頭を机にぶつける寸前まで下げて返答する。

 神崎もそれに満足したのか、コクコクと頷いて微笑む。


「とりあえず……、まずはすまなかったね。

 龍牙(りゅうが)君が、何やら粗相をしたようで。

 そのことについては九条君からも聞いている」


 ペコリと頭下げる神崎。


「あいつはあれで、色々と抱えていてね。

 ……許してやってくれると有難い」


「い、いえ……。許さないなんてそんな。

 それに一ノ瀬(いちのせ)さんには助けられたりもしました。

 一ノ瀬さんがいなかったら、ぼ、僕は今ここにいれませんでしたし……」


 本音である。


 それを聞いて「そうか……ありがとう」と神崎。

 一ノ瀬と神崎。

 二人は“影狩り”の設立に関わった人物だ。

 一ノ瀬に対し「色々抱えている」という辺り、思い至る節がある程度には長い付き合いということなのだろう。

 それは、一ノ瀬のした事に対して神崎が頭を下げたことからも分かる。


 少し間を開け、コホンと咳をする神崎。

 その表情が真剣なことからも、暗に“本題”の話に移行することを告げている。


「真城君をここに呼び出したのは他でもない。

 単刀直入に言えば一昨日、真城君が接触したという“灰”について。

 そして、“灰”と取引をして手に入れたという“力”について、色々と聞きたかったからだ」


 やはりその話題なのだろう。

 九条、或いは一ノ瀬の反応からも、“灰”や“力”について、様々な反応を示していた。

 まずは、何から話すべきか。

 そんなことを考えた真城だったが、次いで神崎が口を開く。


「……とはいえ、いきなり僕が真城君を質問攻めにするだけでは、僕が納得するだけで真城君には事の重要性が理解出来ないだろう?

 

 だからこれも真城君を呼んだ理由なんだが、まずは我々の組織。

 “影狩り”について。

 そして、我々が斃すべき敵。

 影人について、知ってもらいたい。


 “影狩り”に入った者には色々と話す決まりでね。

 少し話が長くなるが、付き合ってくれ」


「……は、はぁ」


 どうやら、神崎は先に話すことがあるらしい。

 真城は相槌を打つ。

 “影狩り”の設立。

 それは先程、九条から聞いている。

 なんでも、


 『清水厳征(しみずげんせい)』。

 『神崎拓富』。

 『一ノ瀬龍牙』。


 の三人が、“影狩り”を作ったのだとか。


 とはいえ、それ以上の詳しい話を知るわけでもない。

 何より斃すべき敵、影人については真城も知りたい情報だ。

 知っている事と言っても、その発生理由が“ストレス”であることぐらいである。


「九条君や龍牙君からも色々聞いているとは思うけれど、僕個人、君がどこからどこまでを聞いているのか分からないから、初めから順々に話していくよ。


 あぁ……後、そんなに畏まらなくてもいい。

 分からない事や質問があれば随時聞いてくれて構わない」


「は、はい」


 真城も思いの外、緊張をしていたらしい。

 無論相手は、真城がこれから務める組織のトップにあたる人物なのだから、畏まるなと言われたところで、「はいそうですか」と出来る訳でもない。

 下手なことを言って怒られたり、無礼を働くわけにはいかないのだ。


 とはいっても、そう言ってもらえただけで多少は気持ちも楽になる。

 もしかすると先程の問答での一人称。

 自身を“俺”と言うわけにもいかず、“僕”と称したのを指摘されたのかもしれない。

 確かに、いくら真城でも自身を“僕”と言ったことが無い為か、違和感もあった。

 そういう、“ぎこちなさ”が伝わっていたのだろう。


 様子見をしながらではあるが、一人称は“俺”に戻してみるとしようか。

 

 

「現在、ここ日本において影が自我を持つ現象、影人化が起こっているという話は九条君からも聞いていると思う。


 影人化が起こる原因は“ストレス”だ。

 自身を取り巻く環境・思い通りにならない現実。

 様々な“ストレス”が積り積もって影人化は発生する。


 ……しかし影人化が起こる原因は“ソレ”以外にもう一つある。

 ただ“ストレス”を溜め込むだけで影人化が起こるなら、それこそ世界中がパニックになってしまうからね」


「……それは一体」


「ふむ。

 影人化が起こる“ストレス”以外の原因。

 それは“影世界”の存在だ」


 “影世界”。

 それは真城にはあまり聞き覚えのないものであった。

 一ノ瀬や九条の会話で数度聞いた程度、……だった気がする。

 首を傾げる真城に対し、神崎は単純に「“影世界”というのは、文字通り“影の中にある世界”のことだよ」といった説明を加える。


 ……影の中に世界。

 本当にそんなものが存在するのだろうか?


「影の中とはいっても単一の世界でね。

 それぞれの影に、それぞれの世界があるわけじゃない。

 入口が違っても、それは同じ“影世界”へと通じている。


 現在“影世界”は、東京の“ある場所”を中心とした半径200kmもの範囲にわたって展開する代物でね。

 その範囲内にある影からなら、いつでも侵入可能な状態となっている」


 200kmと言われても、真城にはピンと来ない。

 大まかな範囲しか想像できない。

 しかしそれでも、東京を中心としたとして関東地方は丸々収まってしまう程に大きいはずだ。

 東北地方でも一部。

 中部地方でさえ、その大半が“影世界”の範囲に含まれるのではなかろうか。


 かなり広範囲……。

 影が、“影世界”と繋がっていることになる。

 

「問題なのは、その“影世界”の範囲内。

 “影世界”と繋がっている影からは、“影世界”特有の、言うなれば“影のエネルギー”なる力が漏れ出している点だ。


 まぁ“影世界”から漏れるエネルギーは微弱だから、そのエネルギーだけを十年、二十年と浴び続けたところで、影人化の心配は無いんだけれどね……。


 それでも、影人化が発生する要因になってしまう。


 影人化。

 それは、“影のエネルギー”を浴びた人間が“ストレス”を溜め込むことで引き起こされる現象だ。

 極論で言えば、“影のエネルギー”さえ浴びなければ、どれだけ“ストレス”を溜め込んでも発症しないし、“ストレス”さえ溜めなければ“影のエネルギー”を浴びても問題ではない」


 二つ揃って引き起こされるという現象。

 それが影人化だと神崎は言う。


 人間、生きている以上は何かしらの“ストレス”は感じるもの。

 それを溜め込むか否かは人によりける所が大きいが、“影世界”の存在が影人化を引き起こす要因だとするのなら、一体何故そんなものがあるのだろう……。


「これがもし、フィンランドやノルウェー辺りの出来事であったなら、それほど問題も無かったのかもしれないが……。

 如何せん我が国、日本の幸福度は先進国内でもかなり低い。

 先進国。……なんて、言ってしまえる状態かもわからんしね。


 東京を中心として展開されてしまった“影世界”というのは、我々“影狩り”にとってかなり厄介だと言わざるを得ない……」


 神崎は少し自傷気味に笑い、「ふぅ……」と、溜息をつく。

 丁度良いタイミングで、二人分の麦茶を持った九条がやってくる。

 いつの間に移動していたのだろう。

 真城も話を聞くのに夢中で気が付かなかった。


 神崎は差し出された麦茶を一気に飲み干すと、真城へ向かい「何か質問はあるかな?」と、尋ねる。


 真城も差し出された麦茶を口に運ぶ。

 そういえば、起きてからここに来るまでの間で水分補給をロクにしていなかったことに気がつく真城。

 蒸し暑く太陽の照らす路上を歩いてきたからだろうか。

 喉元を通る冷たい麦茶が、やけに美味しく感じる。


 少しして、真城は考える。

 今までの話を整理する。


 やはり疑問点と言えば、先程感じた様に“影世界”にまつわる事情だろうか。

 何故、“影世界”は存在するのか……?

 その存在理由に尽きるだろう。


「一体、何なんですか? ……“影世界”って」


「ふむ。では次は、それについての話をしようか。

 “影世界”。それは元々、この世界には無かったものだ。……それを作った人物がいる。

 

 ……事の発端は、十年前にまで遡る。

 かつて東京に存在した、ある大学で起こった事件が切っ掛けだ。


 当時、その大学に勤めていた教授。

 『白川宗介(しらかわそうすけ)』の起こした事件。

 

 もしかしたら真城君も知っているかもしれないが、現在では“東始(とうし)大学爆破事件”だ何だと呼ばれる事件のことだ。

 当時の情報規制、彼のおこなっていた研究内容などの問題からか、名を伏せられた為、『白川宗介』の名前が世間に公表されることはなく、“謎の爆破テロ”として片づけられたようだがね」


 “東始大学爆破事件”。

 それは真城にも聞き覚えがあった。

 勿論、十年も前の事件であり、当時幼かった真城がニュースの内容を見て覚えているというわけでもない。

 大きくなってから、“過去にあった事件”として知った程度の知識である。


 その事件は確かに、神崎の言う様に“謎の爆破テロ”と言われたもの。

 東始大学という名の大学が、謎の爆発事故を起こしたとして知られる事件だ。


 当時大学にいた教授や講師、生徒までもが全て死亡した出来事。

 更には、隣接していた東始大学附属病院をも巻き込み、多数の犠牲者を出した出来事。

 犯人も分からぬまま終結し、ただ“テロ”とだけ言われ、多くを語られることの無かった出来事。


 “今世紀始まって以来の最低最悪の事件”と称された程の……。


 その大学は既に閉鎖され、今も跡地として残り続けているらしい。

 なんでも、『当時の悲惨な事件を風化させぬよう、後世に伝え残す為』だとか。


 この事件のことを知り、真城は物凄く憤ったことを覚えている。

 犯人が見つからなかっただけならまだしも、あるオカルト社が取り上げた内容が原因だ。

 新聞記事や報道番組などでも多く取り上げられ、何の専門家なのか分からない自称専門家や、どこぞでは名の通っているとされる有名な人達が自身の憶測やら持論を数多く展開してみせた事が原因だ。


『謎の爆発。本当にテロだったのか?』

『死者多数、大学の閉鎖決定』

『何者かが戦った形跡あり?? 黒い人影を見たとの声も!?』

『あの爆発は宇宙人の仕業だった!?』


 などなど、と。


 前者二つ程度なら問題も無かった。

 問題なのは後者二つ。

 これもまだまだ良い方で、その後も面白可笑しく捏造された記事や動画で溢れかえっていた事を覚えている。

 ……そう考えれば、真城の持つ“オカルト嫌い”というもののルーツは、こういった部分から来ているのかもしれない。


 とはいえ、その事件が一体なんだというのか。

 疑問を浮かべる真城。

 しかし、神崎は尚も話し続ける。


「科学者でもあった白川宗介教授の専門は“超心理学”。

 また医療にも精通していてね。

 東始大学附属病院では“臨死体験”・“体外離脱”・“前世の記憶”などのデータ収集・研究を裏でしていた様で、……その研究の最終目標は“超能力の有無”であったとか。


 その他にも“サイ科学”や“オカルト”など、幅広く手を出していた人物で、“東始大学爆破事件”があった当時の研究テーマは『影について』。

 しかもその日、何らかの実験を決行した……とか」


「……それって」


 驚く真城。

 今まで関係が無いと思っていた“東始大学爆破事件”からまさか“影”というワードに行きつくなどとは考えていなかったからだ。


「うむ。そういうことだ」

 

 神崎は頷く。

 理解が早くて助かる、とも。


「謎の爆発があった。

 しかも偶然、その現場には“影”についての研究をしている者がいた。

 さらには、偶々何かしらの実験の決行日でもあった。


 これで、事件と何の因果関係が無い。なんて思う方が可笑しいと思わないかい?」


 ……それもそうである。

 これだけの要素があって疑うなと言う方が無理な相談だ。

 


「それで、その『影について』にはどんなことが書かれていたんですか?

 事件の日に決行した実験の内容とか……」


 質問する真城。

 その内容次第で完全な黒だと断定出来るからである。


「うむ。良い質問だ。

 ……しかし、申し訳ない。

 それについては、我々も完全には把握しきれていないんだ。


 その事件によって研究室はおろかその研究データのほとんどを紛失してしまっていてね。

 彼の性格なのかは分からないが、データのほとんどをネット上に保存してもいなかった。


 おかげで分かった事と言えば、生前の彼を知る人物から得た情報。

 辛うじて燃え残っていた資料から読み取れた、決行した実験の内容。……“何かを壊す、破壊しようとしていた”って事ぐらい」


「……そうですか」


 ガクリと肩を落とす。

 それでは証拠としては不十分だ。

 確かに白川の研究と“影世界”や影人の間では、何らかの接点があるのだろう。

 しかし、それを完全に立証するには至れない。


 “何かを壊す、破壊しようとしていた”。

 というのも気がかりだ。

 それが影人への対抗手段であったのか、或いは影人を生み出すのに必要なことだったのか……。


「他にも彼の研究内容からは『影の操作』、『影の為の世界』といった単語も読み取れた。

 この事から我々は白川宗介が、影の為の世界。“影世界”を生み出したのだと結論付けた」


「……そんな、影の世界なんてものを一人の人間が生み出せるものなんですか?」


「ふむ。それは当然の反応だね。

 結論から言えば、それは我々にも分からない。


 ……分からない事だらけで申し訳ないとは思うがね。


 しかし実際の問題として現在、事件のあった“東始大学跡地”を中心として“影世界”は広がり続けているのも確かだ」


 東始大学を中心とした“影世界”の肥大化。

 それこそが神崎の言う、白川が“影世界”を生み出したとする証拠。

 神崎が先程述べていた“ある場所”とは、“東始大学跡地”のことを指していたのだろう。


「確かに、一人の人間が“世界”を作るなんてことはあり得ないかもしれない。

 でももしそれが、いうなれば世界の種とも呼ぶべき程に、小さなものであったなら……?


 宇宙の誕生には諸説ある。

 その中でも有名なのが『宇宙はビッグバンから始まった』という説だ。

 あれもまた、元は何もないとされる空間、或いは小さな小さな世界の種、ゆらぎから大爆発が起こり、この大宇宙へと広がっていったという話。

 それと同様に、白川宗介も世界の種を生み、それを“壊す、破壊する”といった何らかの刺激を加えることで、ビッグバンを引き起こし……“影世界”を生み出したのだとしたら。……あるいは?」


 世界の種。

 突拍子もない話である。

 製造工程さえも分からない程に。


 しかし、確かにそういった小さなものが長い時間をかけて肥大化していったというのであれば、あながち“信じられない”と切り捨てるには惜しい気もしてくる。


 ひとえに“世界を作った”というよりは、“世界の種から少しずつ膨らませていった”という方が、まだ信じられるか……。

 年々“影世界”が広がっていることを踏まえても、そういった見方が適切なのかもしれない。


「真城君。

 我々“影狩り”の現状は“影人の殲滅”だが、最終的な目標は“影世界”の破壊にある。


 “影世界”の放置。

 それはこの世界、ひいては人類の終わりを意味しているといっても過言ではない」


 明かされた目的。――“影世界”の破壊。


 神崎が言う様に、現在も広がり続ける“影世界”は十年という歳月で、半径にして200kmにも及ぶ巨大空間へと広がった。

 それは影人を生み出す、“影のエネルギー”を放出する異空間。


 これだけで、十分に危険度を察することができる。出来てしまう。

 十年で200kmということは、単純な計算でも一年で20km……。

 一か月でも1.6kmもの速さで“影世界”は膨らんでいることになる。


 幸いなことに日本は島国であるが故、他の国に届くまでは少しの猶予があるだろう。

 しかしそれも、時間の問題であることには変わりない。

 地球全土を覆うほどに“影世界”が広がってしまえば、それこそ人類の滅亡。

 影人達の楽園が完成する。


 ……しかし、


「……それは、破壊できるものなんですか?」


 当然の疑問。

 確かに、“生み出した”というのであれば破壊することも出来るのかもしれない。

 しかし、それが“世界”とあってはいかがなものか。

 何より現在、話によれば半径にして200kmにもなる巨大空間。

 破壊するにしても規模が大きすぎるのではなかろうか。


「……方法は分からない。

 だが、それを知っているかもしれない人物はいる。

 “影世界”を作った、白川宗介本人だ」


「で、でも。

 その白川さんって亡くなっているんじゃ……?

 事件の一番近くにいて助かるわけが」


 それも当然の疑問だった。

 何より、あの事件当時にいた生徒はおろか関係者の全員が死亡したという発表があった。

 大学を半壊させるほどの爆発の中で、張本人であるはずの白川が生きられるとは、到底思えない。

 ……事件当時に、自分だけが何処か安全地帯に隠れていたなら別ではあるが。


 と、そこまで考えた真城は顔をしかめる。


――“自分だけが何処か安全地帯に隠れていた”……?


 はっとして神崎に視線を向ける真城。

 神崎も、真城の思考を読み取ったのか、コクリと頷いてみせた。


「そう。白川宗介は死んでいない。

 厳密に言えば、“白川宗介と思われる人間の死体は発見されていない”、んだ。


 当時、警官たちが何度も探して見つからなかったんだ。

 彼の死体だけがね。

 本来であれば研究内容から鑑みても、白川宗介に疑いの目が掛かる。

 生きているという仮説が立つ。


 しかし先程述べた様に情報規制の影響から、彼の研究内容などは世間からは伏せられることとなり、白川宗介も死んだという体で “謎の爆破テロ事件”と処理された。


 その後、裏で色々と手を尽くして白川宗介の足取りを探ったようだが、結局は見つからずじまい。実質、迷宮入りとなった」


 やはりか。

 やはりそうなのか……。

 

 白川宗介という男。

 その実験が及ぼす影響、周りに与える被害を知っていて……、実験を決行したのだ。

 それも、自身は安全圏へと逃げる形で。

 

 ……最悪ではないか。


「いったいその男は何処へ……」


 見つけなければならない。

 捕まえて、罪を償はせねば。


「ふむ。

 我々は白川宗介が事件発生後、生まれたばかりの“影世界”の内部へと逃げたものと推測している。

 “影世界”は、限られた者しか入ることが出来ない。

 “影世界”を生み出した事を踏まえても、隠れ蓑としてこれ以上に適した場所もないからね。

 

 我々は彼を、白川宗介を捕まえる。

 その上で問い質す。

 何故こんなことをしたのか……、その理由を。

 そして、“影世界”を消し去る方法を聞き出し、この無意味な負の連鎖を断ち切る。


 ……それが、この組織の存在理由だ」



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