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カゲビト  作者: 永眠布団
第四章 帰省

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第17話 『胸騒ぎ』

 


 真城は眉を顰めていた。

 それは携帯に届いていた不在着信。そこに表示された名前が“白菊梓”だったからである。

 現在時刻は20時過ぎ。決して遅い時間とは言わないがしかし、かといって早いとも言い難い時間帯。……そんな時間に、一体白菊は何の用で連絡を寄越して来たのだろう。

 真城は小首を傾げるが、しかし答えは見つからない。

 そういえば別れ際、白菊が何か言っていた様な気もするし……或いはソレ関連かもしれないが、それならメールでも良いはずだ。わざわざ口で伝えようとする意味もないだろう。


「……うーん?」


 まぁ別に折り返して電話する意味も無い。

 特に話題も見つからなければ、話をしてやる義理もない。

 このまま見なかった事にして帰路についてしまえばいいのだ、が……。


「……――、」


 すぐにでも電源を切ってポケットにしまおうとすると手が、ふと止まる。

 それは真城の脳裏に先程から過っていた、ある言葉が原因だ。


 “相手の真意は話して見ないと分からない”。

 その言葉は“影狩り”本部で阿久津から聞かされて、今しがた父との会話で実証されたに等しいものであり……そしてそれは、或いは白菊にさえも適応しうるものかもしれない。と、そう考えられるものであり――。


 真城は寸瞬にも等しい思考の後、ちょっとした出来心から携帯電話を操作する。

 着信履歴から一番新しい番号を呼び出して、その相手……白菊へと電話した。



 しかし――、


 ……


 …… ……



 何度目かのコール音。

 しかしその後に繋がるのは留守番電話のアナウンス。


 電話はこれで三回目。しかし結果は変わらない。

 何度やってもこうならば、これ以上やっても意味はない。きっと結果は同じだろう。


 携帯を耳元から離して、真城は溜息一つ吐く。

 繋がらないなら仕方がない。どうせテキトーな要件で電話をしてきただけだろう。

 ……と、それで諦めてしまえばいいのだが、


「…………、」


 そう出来ない。それで終わらせてはいけない様な、妙な胸騒ぎがして硬直する。

 言い知れぬ不安が渦巻いて……鎌首をもたげてくる様な、そんな感覚が脳裏にへばり付いて離れない。

 何か、取り返しのつかない出来事が起こり始めている様な、そんな一筋の予感。息苦しさが募っていく。

 ふと真城の頭に過るのは、夏休み直前にあったあの電話。忘れもしない“原田”からのあの知らせ。……一体何故、今になってその事が過るのか。それは分からないがしかし、“あの時”の知らせは……助けを求めてくる内容で――。


(どうしてだ……?)


 あの時とは何もかも状況が違うのに、どうしてあの時の記憶が蘇る?

 白菊が、真城に助けを求めてる? いや、そんな事があるはずは――、


「……――ッッ」


 瞬間、真城の中で点と点が結ばれる。真城の思考が加速する。

 ハッとして一つの事柄を思い起こしたその途端、記憶が――芋づる式に掘り起こされていく。



 …… ……



 白菊は確かに助けを求めてた。

 それは“今現在”の話ではなく、朝の事。


 白菊は、真城にこう言っていた。

 尾倉という不良に狙われていると。だから真城に守って欲しいのだと。

 彼氏役になって欲しい。そうすれば諦めるかもしれないと。そんな事を言っていた。

 初めは白菊の思い込み。或いは、それを口実に何かを画策しているのだろう。

 と、そんな疑いを持っていた。


 しかし結果はどうだった?

 白菊が警戒していた襲撃は、事実……確かにあったのだ。


 白菊の言っていた事、予期していた事に間違いは無かった。

 であるならば真城自身、警戒の度合を引き上げるのが道理だったはずである。

 襲撃は一度だけとは限らない。“襲撃がある”と分かった以上は、次へと警戒するのは当然だ。


 では……。

 何故、そんな当たり前な事を真城はしてこなかった?

 まだ起こるかもしれない襲撃を警戒せず、安全の確保も出来ていない白菊を一人放置したままの状態で、病院(こんな所)まで足を運んでいるのだろう。



 もしこれで、白菊が実際に襲撃にあっていたのなら。

 真城が考えうる様な、最悪の事態になっていたのなら。

 最早、目も当てられない。


「……、まさか」


 忘れていた事実を思い出し、直後にスッと血の気が引いていく。

 得体の知れなかったものの正体が、薄らと形を成していく。


「――クソッ!!」


 刻一刻と膨らむ不安感。背中へと嫌な汗がへばり付く。

 四度目の電話。しかしそれも失敗し、真城は慌てて行動を開始する。


 何事も無く、ただ無事であってくれ。

 考えすぎであってくれ。

 ただただ、そう思う一心で。



 …… ……



 真城は学校へ向かってひた走る。

 その心中では、自身への不甲斐なさを咎める言葉だけが募っていく。

 今になって思い返せば、あり得ない様な行動の数々に真城は奥歯を噛みしめる。


 尾倉の襲撃。

 それを撃退した時点で、何故真城は“終わった”と思っていたのだろう。

 白菊からの依頼は完了し、もう問題は無いなどと……そう考えていたのだろう。


 まだ何も終わってはいないのだ。

 寧ろ気を引き締めるべきであったのに。


 襲撃があった以上は、問題が解決されるまで警護する。

 それが出来なくてもせめて、今日という一日を無事に乗り越えるまで。

 或いは少なくとも、文化祭を終えた後、白菊が無事に自宅に着くまでは、ちゃんと気を配っておく必要があったのに。


 本当に本当に、随分とお粗末なものである。



 いや、きっと。

 それで“終わった”などと、他ならぬ真城が(・・・)、そう思いたかったからだろう。

 もう“終わった”のだと。事件は解決したのだと。そう思っていた方が――、真城には都合が良かったから。



 では――。

 それは何故であっただろう?


 あれだけ完膚なきまでに伸したのだ。

 その後、先生に追われていたのだし、今日はもう無いだろうと踏んだから。


 それは何故であっただろう?


 きっとこの“尾倉達の襲撃”と“真城の撃退”は白菊にとって思い描かれたシナリオだ。

 そのシナリオを真城は、白菊が望んだ通りに進行した。

 であるならば、その先のシナリオも、白菊はきっと用意しているだと、そう考えていたからだ。


 理屈や方法は分からない。しかしそれでも何かがあるのだろうと、ただ漠然にそう思い、深く考えを巡らせなかったからだった。



 ……いや、違う。

 それもまた事実じゃない。

 きっと、いや実際は。

 ただ、真城が面倒(・・)くさかった(・・・・・)からである。


 嫌々彼氏役を引き受けて、嫌々デート紛いな事に付き合って、絡まれて、戦って……。

 もうこれくらいで良いだろと、真城が勝手に判断したからだ。


 丁度良いタイミングで母親から連絡があって、父親が目覚めたという知らせを受けて。

 もうそれ以外、どうでも良くなったからだった。


 ……そうやって真城()は粗末な結果で満足した事にした。解決した風を装った。


 全ては、そう。

 真城が白菊に対して、苦手意識を持っているからに他ならない。



 だが。

 それでも。


 どんな理由や思惑があったにせよ、真城が白菊の護衛として彼氏役を引き受けた事実には変わりない。

 そうであったにも関わらず――、真城はその責任を放棄した。

 放棄したことにさえ、今の今まで気づかなかった始末である。


 本当に、何をやっているんだか。

 本部で野武(のたけ)とした会話を思い出す。


『だったらさ、お前は気に入らない奴。例えば単純にいけ好かない奴だったり、或いはお前が嫌っているような人間。そんな“悪人”が相手でも、お前は構わずに助けちまうのか? 助けられるのか? そんなクソみてぇな奴らでも』


 あの時は当然と、そう即答したはずなのに。

 全く、その自分が聞いて呆れる。



 ……思い返せば、怪しい点は数あった。

 白菊に連れられて行ったメイド喫茶。出されたオムライスを食べ終えて偶然向かった校舎裏。あの時は白菊と友人らとの会話を盗み聞き……そうして、“金持ち”だの“医者の息子”だのと湧き立つ白菊達の反応に苛立って、それ以外の物事を全て放棄してしまったが、確かにあの時の帰り際、真城は不自然な人物を見て取った。

 腕を組み、白菊を不愉快そうに睨んでいたメイド達。あの二人組の人物は、確かに怪しい雰囲気を持っていた。


 もちろん、彼女らが尾倉達と繋がっていたという保証はない。

 しかしそれでも、真城が普段通りであったなら。

 白菊を護衛対象として守る意思があったなら。

 まず間違いなく、警戒していたはずの者達だ。


 真城はそれを見逃した。見ていたのにスルーした。

 “兆候”は、元から既にあったのに。



 どうして真城()は、そんな事を見逃した?

 その答えはきっと、イライラしていたからだろう。


 では何故イライラとしていたか?

 その答えも簡単だ。結局、数年ぶりに再開し、何か変わったかもと少しばかりの淡い期待を寄せた白菊も、前と変わっては無かったと……そう理解したからだ。


 ……だが、本当に“そう”であったのか。

 今少し冷静に落ち着いて、あの時の記憶を掘り起こして考えて見てみれば……もしかしてと、一つの思い違いの可能性にも行き当たる。


 白菊は確かに、真城を“そういう”風に見る人達と会話して、まんざらでもない様な顔をしていたが、……白菊自身は“そういう”会話をしていたかと言えば難しい。

 真城も会話を最初から聞いていた訳じゃない。故に実際の所でどうなのかは分からないが、少なくとも真城が聞いていた範囲では……していなかったはずである。

 相槌は打っていた。だが、“会話の内容”は兎も角としても、親しい友人達との会話なら……例え内心で同意をしていなくても、強く否定したりせず笑ってごまかす位の事はあっただろう。

 本当に“会話の内容”さえ置いておけばではあるのだが……、友人達はただ単純に“彼氏が出来た白菊”の事を祝ってくれているだけなのだ。白菊だって無下にしたくはないはずだ。

 仮に白菊が内心で全く真逆の考えを持っていたとして、それをあえて口に出し、友人達の祝いや喜びの言葉をぶった切ってしまうなど、真城が同じ立場でもきっと出来ない事だろう。真城も同様に愛想笑いと相槌で誤魔化す道を進んでいたに違いない。


 ……きっと、真城自身も余裕は無かったのだろう。

 トラウマがあり、苦手意識のある白菊を前にして、警戒心が強く出た。

 そして警戒をするあまり『どうせ“そう”なんだろう』と決めつけて、会話の流れや雰囲気をよく見ずに『あぁやっぱり』と再び決めつけたのだろう。


 白菊“以外”が言っていたはずの言葉を、いつの間にか白菊“も”言っていたと錯覚して嫌悪した。嫌悪してしまった訳である。

 “認証バイアス”……と言ってしまえばアレではあるが要するに、真城がただ勝手な思い違いをしただけだ。という可能性も無くはない。


 まぁ。結局の所、その答えは神のみぞ知る所なのだろうが……。

 だがこれも、きっと真城の犯したミスの一つだろう。




 ……そういえば。

 “認証バイアス”という言葉で、もう一つのミスも思い出す。

 何を隠そう、あの時。尾倉達の襲撃後、一人になったタイミングで真城へと話かけて来た、あのギャルだ。

 最初、現れてすぐの時は警戒していたはずなのに……。

 いつの間にか、真城はその警戒を解いてしまっていたのである。


 その原因は……きっと、ギャルの言葉が真城にとってとても耳心地が良いものだったからに違いない。

 白菊にトラウマがあり苦手意識を持つ真城が、聞きたかった言葉。言って欲しかった言葉だったから……。『あぁやっぱりそうなのか』と、やはり『白菊を信用すべきじゃない』のだと、そう真城が無意識に思っていた事を肯定し、後押ししてくれる様な言葉がスッと頭に入ってきて……何の疑念も持つ事無く、自然に受け入れる事が出来てしまった訳だった。


 仮にも、小学生からの付き合い……と言う訳ではないにしろ、見知った間柄ではある白菊より、初めて会ったばかりの誰とも分からない女性(ギャル)の言葉を、素直に鵜呑みにしてしまった訳である。


「――ッ」


 “忠告”とは言いつつも、その大半は白菊を貶める言葉の数々だ。

 どこまで本当か分からない。いや、もしかすると全て嘘。或いは仮に本当だとしても、誇張されていた可能性や、歪められた解釈が交っていた可能性だって否めない。

 そんな事、少し考えれば分かるのに……、真城はそれを信用し、結果白菊を遠ざけた。

 今になって思い返せば、本当に何の根拠もなかったにも関わらず……。


 状況を鑑みて、あのギャルがタイミングを見計らっていたのは明白だ。

 でなければ、わざわざ狙いすましたかの様に、真城が一人になった“あのタイミング”で話しかけてきたりはしないだろう。

 ……要するに、アレは罠だったに違いない。

 真城に不信感を抱かせて、距離を取るように促して、白菊を一人きりにする為の――。


「あぁクソッ!! ――クソクソクソッッッ!!!!」


 本当に自分が嫌になる。

 これが真城()の、真城の望んだヒーローの在り方か?

 いや、違う。そんな訳が無い。そんなはずじゃ……なかったのに。



 これだけ揃えば、最早真城の抱くこの不安感。鎌首をもたげるこの焦燥感の正体にも頷ける。

 白菊へと、未だに連絡のつかないその理由。その答えをハッキリと提示する事も出来るだろう。

 そう。つまりは――白菊が尾倉達の襲撃にあったのだと。


 真城の中にあった危惧は、もう既に確信へと切り替わっていた。



 …… ……



 はやる気持ちを隠しもせず、真城は電車を飛び降りる。

 周りから不審な、或いは不快なものを見る様な視線を向けられていても構わない。

 真城はそのまま駅の出入口へとひた走り、ICカードを押し付けて改札口を通り抜けると、そのままスピードを落とさずに白日院(はくじついん)大学へと駆けていく。


 体力も付き、朝のジョギングも欠かさない、そんな真城の全力疾走。

 その結果、目的地へは駅から十分とかからずに到着した。


 時刻は既に21時近い。

 いくら大学の文化祭とはいえども、流石に終了時間は超えている。

 辺りは暗く、大学の電気は消えていた。細かい片付けや準備は明日すればいいとばかりに、出店で使っていたテントやその類なんかはそのまま放置されているが……しかし人影は見当たらない。当然校門は閉じており鍵もかかっていて開かない。

 当然、真城のフィジカルで。或いは影を使っての移動なら、門を越えて大学に侵入する事は可能な訳ではあるのだが……、肝心の人がいなければ聞き込みをする事は叶わない。


「くそ、遅かったか! ……どうする」


 真城はガシャンと、八つ当たり気味に門へと拳を打ち付ける。

 自分の見通しの甘さに、真城は深く溜息を一つ吐く。


 この大学へと、真城が戻ってきた理由は単純だ。

 連絡のつかなくなった白菊を探す為。その情報を得る為に、白菊の友人達に会う必要があったのだ。

 というのも、……真城は白菊の家を知らなかったからである。

 こんな事になるのなら、何かのタイミングで大体の位置くらいは聞いておくべきだったと歯噛みする。が、それは一体どんなタイミングなんだ……とすかさず自身にツッコミを入れて首を振る。余程焦っているようだ。


 しかし、状況が状況だ。

 焦る気持ちも当然だ。


 真城は逸る気持ちを抑えて思考を巡らせる。

 白菊の行方を捜すにしても、ある程度……せめて方角くらいは分からなければ捜し出すのは困難だ。それこそ明後日の方向をいくら虱潰しで捜した所で意味は無い。

 行動を起こすなら、まずは捜す方角を絞らねばならないが……しかし真城にはその当てが浮かばない。何せ、白菊の友人に白菊宅の場所を聞き出して、そこまで向かう予定であったのだ。


 真城が護衛をしていたならばいざ知らず、たった一人となった状況で、白菊が何処かへ寄り道するとは思えない。

 であるならば、白菊が襲われたのは家に帰る途中だったはずなのだ。


 無論、そこに何か手掛かりになる様な物が残されている……なんて都合のいい事はないだろう。がしかしそれでも何か……。物音なり話し声なり向かった方角なり、そういったものを見聞きしていた人物が居なかったとも限らない。



「……いや、待てよ」


 思考を高速で巡らせる最中、とある人物の言葉が引っかかってふと止まる。


『知ってる? 白菊ちゃんの両親、離婚してるんだよ』


『しかもその上で、母親との関係もあまり良くないみたいなんだよね。だから白菊ちゃんはお金を必死に求めてる。“一人で生活する為に必要なお金”を、ね』


 それはギャルの言っていたある言葉。

 真城はその中の“一人で生活する為に必要なお金”という部分に注目する。


(白菊は一人暮らしをする為に、お金を欲しがっていた。だからお金を沢山持っているだろう俺へと近づいた……って、あのギャルは言っていたけれど)


 もしもそれが事実なら?

 白菊は、まだ“一人での生活”が出来ていない。つまりは実家暮らしという事になるはずだ。


 確信は無い。

 ギャルの言っていた事が全て真実とは限らないし、当然真城もそれを鵜呑みにするつもりは毛頭ない。

 しかしかと言って、全てが嘘という事も無いはずだ。


 真城はしばし沈黙し、口元に手を当てて考える。

 が、仮にこれを嘘だと突っぱねても、代案が浮かぶかは分からない。或いはこれ以上は何も浮かばない可能性だって無くは無い。

 八方塞がりな状況で浮かんだ打開案。今はもうそれが“真実である”という事に賭ける他無いだろう。


「…………、」


 真城は思考を開始する。

 どちらにせよ、小学生時代に真城が白菊の家に遊びに行った記憶は無い。

 結局、真城は白菊の家の場所を確実に特定する事は出来ない……が、しかし小学生時代から住んでいる家というのなら、ある程度の場所を絞り込む事は可能だろう。

 何せ真城も詳しくは知らないが小学校というのは大抵の場合、設定された学区などによって通学先が決定するものであるらしい。

 であるならば“設定された学区”というものが分からずとも、ざっと大体大まかに真城と白菊が通っていた小学校から半径1~2キロ内にはほぼ確実にあるだろうという寸法だ。


 それに加えて、今日の朝。本来待ち合わせをする予定だった場所。

 白菊が真城を起こす為に真城家へとやって来た時に息を切らしてなかった事や汗をかいていなかった事。自転車などを使っていなかった事。

 現在の白菊が通っている大学の位置なんかも情報として詰め込めば……なんとなく、白菊家があるであろう範囲が見えてくるというものだ。

 少なくとも、これなら完全に明後日な方向を捜索することは無いだろう。


「――よしっ!」


 なんとか捜索の方向性が決定し、真城は移動を開始する。



 白菊は走るのが得意である。

 多少追われる程度なら、走って撒く事も出来たはず。

 それが出来なかったというのなら……、尾倉達は複数人で完全に包囲するような手を使ったに違いない。だが、


「それだけの人数で移動したんなら、絶対何処かで目立つはず」


 ただでさえガラの悪い連中だ。

 絶対誰かに見られてる。そして記憶にも十分残っているはずである。


 真城は、一目散に人通りの多い場所まで駆けていく。

 情報を持った人間が、何時までも外出してくれているとは限らない。

 どうにか帰宅される前に話しかけ、情報を回収しなければ。


「待ってろよ、白菊ッ!!」


 全力疾走。

 暗い夜道を真城が走り抜けていく。



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