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第十二話 『去年の事件』

 優しい笑顔でクラスメイトと談笑する北川の姿を想像していた時、北川が東山に言った。


「どうしたの、東山君。その、じっとこっちを見てるけど」


「あ、ごめんごめん。つい……」


 東山は小さく息を吐き、両手を固く握りしめ、まっすぐに北川を見た。


「えっと、どうしても北川さんに聞きたいことがあるんだ」


「私に、聞きたいこと?」


「どうして、自分から主役に立候補したの? 北川さんって、あんまりそういうことするイメージがないから、不思議に思ってさ。あ、もちろん今のはその、悪い意味じゃないよ」


「夏織……、南からは、何も聞いてない?」


「去年の文化祭のことが関係してるんじゃないか、とは言ってたけど」


「……そうね。たしかにそれもあるかもね」


 北川は小さくため息をつく。


「去年の私たちのクラス展示は、覚えてるよね。廃材を使って、学校とその周辺のジオラマづくりだったでしょ」


「うん。みんな最初は面倒くさがってたけど、やっていくうちに少しずつまとまってきて、最期は一致団

結して、文化祭前日に完成させた」


「その直後だったね。私がジオラマを潰しちゃったのは」


「あれは、事故だよ」


 そう。

 それは誰もが事故だと認めなければいけないことだった。


 当時の、一年一組の教室の床一面に完成したジオラマが広がった時、その場にいた誰もがよろこびの声を上げた。なかには奇声を上げて踊りだす人もいた。

 東山は少し離れたところから踊り狂うクラスメイトの集団と、その中心にいる西野を眺めていた。

 事故が起こったのは、それから間もなくのことだった。

 踊っているクラスメイトのうちの誰かが足をすべらせ、そばにいた女子生徒にぶつかった。

 バランスを崩した女子生徒は、とっさにそばにいた男子生徒によりかかった。

 よりかかられた男子生徒は女子にまったく免疫がなく、混乱のため体勢を崩し、隣にいた男子生徒の体をつかもうとした。

 隣にいた男子生徒は突然のことに驚いたのか、反射的に後ろに飛びのき、背後にいた女子生徒にぶつかった。


 その女子生徒が、北川だった。


 北川はそのままバランスを崩し、仰向けになって倒れた。

 ジオラマの校舎と、その周辺を押し潰して。

 教室からよろこびの声が消えた時、下校時刻を知らせるチャイムが鳴った。

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