第十三話 『なにかをしなければいけないと』
そこから先の騒動を思い出すのは、東山にとって今でも苦痛だった。
よろこびに満ちた空気は消え去った。
かわって、困惑と怒りと疲労の入り混じった空気が瞬く間に教室を満たした。
そして、クラスメイトたちの怒りの矛先は、本来なら被害者であるはずの北川に向けられた。
お前がそんなとこでぼさっとつっ立ってたのが悪いんだ。
いつまで寝てんだ、さっさとどけよ。
せっかくみんなでつくったのに、台無しにしやがって。
一人、また一人と北川へ非難の声をぶつけた。
もちろん、彼らもわかっていた。
これは不慮の事故だった。
北川は何も悪くないし、彼女を責めたところで何も変わらない。
それでも、誰かを責めずにはいられなかった。
そうしなければ、やり場のない心の痛みをやわらげることができなかったのだ。
倒れたまま呆然としていた北川は、いつの間にか声もなく涙をぽろぽろとこぼしていた。
南は北川を抱きあげ、大丈夫、大丈夫と声をかけた。
西野はいい加減にしろ馬鹿野郎どもと叫び、北川を非難するクラスメイトたちと殴りあっていた。
東山は、何もできなかった。
何もできず、ただなりゆきを見ていた。
何かをしなければいけないと、わかっていたのに。
「あの時のみんなの反応は、私でも仕方ないと思うよ。私はあんまり、というか全然クラスになじめてなかったし、文化祭の準備だってただ言われたことをやってただけで、全然積極的じゃなかったし。そんな私が、みんなの努力をあんなふうに潰しちゃったら、ああいうことにもなるよ」
「だから、今でもそのことに責任を感じているから、主役に立候補したの? 責任重大な役だからこそ、自分がその責任を負って、去年のけじめをつけようって、考えたの?」
「半分のうちの半分は、たぶんそういう理由だと思う」
「じゃあ、もう半分は?」
東山がたずねると、北川は彼の顔をじっと見た。
「それは……、東山君がきっかけなんだよ」
まったく予想外の答えだったため、東山は思わず「へ?」と声をもらした。
「それって、どういうこと?」
「その前に、私も東山君に聞きたいことがあるの。じつを言うとね、今日ここに来たのも、それを聞くためなんだ。だから、正直に答えてほしいの」
「わかった。なんでも聞いて」
ありがとう、と北川はわずかに表情をやわらかくした。
その時の彼女の顔を見て、東山は何かひっかかるものを感じた。
それが何なのかを考えようとした時、北川は言った。
「去年の、あの事件が起こった日の夜。どうして東山君は一人で学校に忍び込んで、ジオラマを直してくれたの?」




