第8話 幼女とデート
フルートは毎日俺の部屋に来て俺たちの世界の知識をため込んでいる。いつの間にか俺のパソコンを使いこなしている有様だ。
金曜日になり、異世界へ行く準備をしなくてはと思いながら帰宅する。するとフルートが待ちかねたように言う。
「明日はデートをするぞ。街に繰り出すのじゃ。」「お姉さんの姿になってくれるのなら喜んで。」
「バカ者、あの姿になったら目立つ。」「そうですよね。テンション下がるなー」
「美少女を前にして、そんなことを言うのか。」「幼女でしょ。」
「デートは嫌か。」「いいえ、喜んで引き受けます。」「そうか。」
フルートはホッとしたような笑顔になる。俺はフルートに世話になっているので、かなえられるお願いは聞くことにしている。
土曜日、フルートはいつもの魔女っ娘の服ではなく、水色のワンピースを着てくる。はっきり言って似合っている。これでは街に出るとかなり目立つだろう。幼女であってもきれいなのだ。
俺たちは一緒に家を出る。歩いているとフルートが俺に言う。
「腕を組んでほしい。だめか。」
フルートが目でお願いを訴える。卑怯だ。そんな目で訴えられたら断れない。
「いいよ。はぐれるといけないからな。」
俺はもっともらしい理由をつけて了承する。相手は最古の魔女だ。はぐれたからといって困ることはないだろう。
俺たちはバスに乗ってショッピングモールへ行く。これはフルートの希望である。フルートは人が集まるショッピングモールで人や商品を観察して得た情報とすり合わせるつもりである。
俺とフルートは腕を組みながらショッピングモール内を歩く。すれ違う人たちが振りむいていく。きっとフルートを見ているに違いない。フルートが俺に言う。
「みんな、私たちを見ているぞ。きっと幼女を連れたロリコンを見ているに違いない。」「俺はロリコンじゃない。」
俺はロリコンと見られている恐れを排していた。これでクラスメイトにでも会おうものなら厄介なことになる。
フルートはアクセサリーショップに入る。俺には場違いな場所だ。外で待っていたいが腕を組んでいるので一緒に入るしかない。
フルートは今、赤い蝶のブローチを見入っている。欲しいのだろうか。それほど高価な物ではないし、財布の中身も余裕がある。俺はフルートにプレゼントすることに決める。
俺は店員に言う。
「そこの蝶のブローチをください。」「彼女にプレゼントですか。」
余計なことを言うな。
「親戚の子にプレゼントするんです。」「そうでしたか。腕を組んでいるので彼女さんかと思ってしまいました。仲がいいのですね。」「あははは」
支払いを済ませ、ブローチを受け取るとフルートとの服に付ける。
「いいのか。」「普段のお礼だよ。」
「いいのか、おそらく知り合いに見られているぞ。」「えっ。」
俺は驚きつつ振り返ると雪島レイと目が合う。わあ、私服の雪島だ。かわいいなー
などと思っている場合ではない。雪島は俺をどのように見ているのだろう。もしかして、ロリコンと間違われたか。とにかく、雪島に声をかけるぞ。勇気を出せ。
「雪島さん、来ていたんだ。偶然だね。」「きれいでかわいい子ね。萩原君の彼女かな。」
「デートしているんだ。」「小さい子が好きなのね。」
「冗談だよ。母の友達の子を預かっているんだ。子守だよ。」「びっくりした。本当に彼女かと思っちゃった。」
「ひどいなー、それじゃあロリコンだよ。」「そうね。」
フルートが突然、会話に割り込む。
「お姉ちゃん。翼お兄ちゃんの彼女なの。」「違うわ。ただのクラスメイトよ。」
「だったら、私がお兄ちゃんの彼女になってのいいよね。」「萩原君は何というかなー」
「お兄ちゃん。フルートの彼氏になって。」
フルート、何やらかしているんだ。俺が幼女と付き合うわけないだろ。でも雪島が見ているから大人の対応を・・・
「フルートが大きくなっても、お兄ちゃんと付き合いたかったら考えるよ。」「じゃあ、早く大きくなるね。」
「そうか、楽しみにしているよ。」「はーい。」
よし、危機を乗り越えたぞ。その後、フルートは雪島と話をすると言って俺から離れる。俺は二人が何を話したのか知らない。




