第11話 井上と小塚の変貌
チェンバロはフロイス王に報告する。
「魔法使いの小室は一人前になりました。ヒーラーの神谷も仕上がっております。」「ようやくか。」
「遅いので、街の人間を襲わせようと考えていたところだぞ。」「御冗談を・・・」
「近衛騎士団長は勇者と剣士に半年くれと言うので、罪人を殺すように命じたところだ。」「・・・・・」
チェンバロは、腹の奥底に冷たいものを感じる。そして、手が震えていた。フロイス王の前では、鮮血の魔女など小娘に過ぎない。
フロイス王が続ける。
「後、2週間もすれば罪人がいなくなる。そうしたら、勇者一行として魔法使いとヒーラーも加わってコルトバへ攻め入ってもらおう。」「連携の訓練はどうするのですか。」
「4人とも知り合いなのだろ何とかするであろう。ハハハハハーーーーー」
笑ごとではない。連携できなければ戦うなど不可能だ。フロイス王は本当に彼らを使い捨てるつもりなのだ。
チェンバロは近衛騎士団長に会いに行く。
「騎士団長、フロイス王は勇者と剣士の訓練終了後直ちに出撃させるつもりですよ。」「連携の訓練はどうなる。」
「訓練をさせないつもりです。」「バカなことを戦えないではないか。」
「私たちで訓練時間を捻出する必要があります。」「分かった。訓練後、少ないが時間を作ろう。」「お願いします。」
こうして、勇者パーティは連携の訓練をすることになる。チェンバロは訓練相手として魔獣を狩りに行く。
「師匠、魔獣狩りですか。こちらは楽しそうです。」「気を引き締めなさい。前衛がいないのですから細心の注意が必要です。」「はい。頑張ります。」
チェンバロと小室は王都近くの森を行く。獲物はワーウルフだ。攻撃力はシルバーグリズリーに劣るが俊敏なので連携の訓練には最適なのだ。
小室は魔力探知で魔獣を探す。ワーウルフは群れで活動するので単独ではなく群れでいる反応を探す。
そして、群れを見つける。チェンバロと小室は風下から群れに近づく。二人は静かにエアバインドを使ってワーウルフを拘束していく。
ワーウルフの群れは6匹いた。チェンバロは拘束したワーウルフを位相空間に収納していく。
チェンバロは城に戻ると小室と神谷を連れて、井上と小塚の訓練を見学に行く。
井上と小塚は、剣を持った男二人と戦っていた。小室と神谷は、井上と小塚の顔つきが変わっていることに気づく。
男たちは女の小塚を狙って攻撃を仕掛けてくる。小塚が男の剣を受けるともう1人が小塚に突きを放とうとする。
いつの間にか井上が男の横に来ていた。井上は素早い動きで剣を振り下ろす。男の両腕が切断され剣が落ちる。男が叫ぶ。
「腕がー、俺の腕がーーーー、がっ。」
男が倒れる。井上が躊躇なくとどめを刺していた。
小塚は剣を滑らせすれ違いざまに相手の指を切断する。相手は剣を落とす。そして、相手の胸に剣が生える。
小室と神谷は驚く、剣の腕が上がったことではない。戦う相手をためらいもなく殺すことが井上や小塚らしくなかったのだ。
チェンバロが小室と神谷に言う。
「お前たちはこれから戦うことになる。相手を殺すことにためらいは必要ないぞ。あの二人のように殺すんだ。」「・・・・・」
小室と神谷は返事が出来なかった。二人にはまだ覚悟が足りなかった。




