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第10話 最後の試練

 チェンバロは弟子の小室に防御魔法と攻撃魔法を叩き込んだ。本当はもっといろいろと教えたかったが、時間がそれを許さなかった。

 小室が生き残るため最後の試練を課すことにする。チェンバロは小室に言う。

 「これからコルトバ王国の辺境の村を殲滅します。」「師匠、村人を殺すのですか。」

 「その村は、ドゴール王国に密輸される麻薬を生産しています。村人は全員死すべき罪人なのです。」「子供は関係ないのではないのですか。」

 「子供も関わっているのです。容赦は無用です。」「・・・・・」

もちろん、村で麻薬を生産しているなどウソだった。選んだのは近隣の村や町から離れているので目撃される恐れが無いからだ。

 チェンバロは転移の魔法陣を描いて詠唱する。

   星の導きよ我の願いに導きあれ

魔法陣が光出し、チェンバロと小室は魔法陣に飛び込む。二人は村の近くの林の中に転移する。

 時は真夜中にさしかかっており村は暗闇の中、静まり返っている。チェンバロは小室に質問する。

 「一人も逃さず殲滅するにはどうしますか。」「村は木製の塀に囲まれています。出入口の扉が閉まっていますので、まず、塀に火を放ちます。」

 「それからどうしますか。」「すべての家に同時に火を放ちます。」

 「それなら気づいた時には火の海ですね。では、実行しなさい。」「本当にやるのですか。」

 「私が責任を持ちます。やりなさい。」「分かりました。」

小室は魔法の詠唱を始める

   炎よ力ある玉となって我が敵を焼き尽くせ、ファイアーボール

8個の火の玉が村の塀にぶつかり、塀が燃え始める。小室はさらに詠唱を続ける。

   炎よ敵を射る矢となり我を守れ、ファイヤーアロー

村の上空に炎の矢が23本現れ、住居の屋根を射る。住居の屋根が燃え始める。

 しばらくして村人の叫び声が聞こえ始める。だがもう遅い、村は火の海になっている。断末魔の叫び声が聞こえ始める。

 小室は思わず耳を塞ぐ。チェンバロは小室に言う。

 「最後まで見届けなさい。耳も塞いではだめです。」「は、はい。師匠。」

村はこのまま燃え尽きるように見えた。しかし、男が村の出入り口の扉を蹴破り出てくる。男の服は燃えていた。そして、幼子を抱えている。

 小室は男と目が合う。

 「頼む。この子を頼む。」

男は絞り出すような声で小室に頼み込む。チェンバロは小室に冷たい声で言う。

 「殺しなさい。子供も殺すのです。」「・・・・・」

小室は肩で息をし始める。自分のしたことが恐ろしくなったのだ。涙声で詠唱を始める。

   たゆたゆ風よ刃となりて切り裂け、エアカッター

エアカッターは男を切り裂く。倒れた男の腕から幼子が這い出して来る。小室がチェンバロに訴える。

 「この子を助けてください。この子に麻薬は作れませんよ。」「できないのですか。」

 「だめです。無理です。」「そう。」

チェンバロの右手が光る。ナイフが幼子に刺さる。小室は崩れて泣き始める。チェンバロは小室に告げる。

 「これで最後の試練は終わりました。あなたは一人前の魔法使いよ。」

小室は一人前だと言われても喜ぶことは出来なかった。

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