第8話 初めての商売
金曜日になって、俺はフルートとチェンバロと一緒にスーパーマーケットへ行く。食料を大量に買い込む。そして、今回はトイレットペーパーも買う。
なぜ、トイレットペーパーを買い込んだというとコルタナ魔道国に売るためである。異世界のトイレは快適ではない。もちろん水洗便所などない。ぼっとん便所だ。
コルタナ魔道国の金を手に入れるためにトイレットペーパーを高く売りつけるのだ。俺たちはコルトバ王国とドゴール王国で使えるコルという単位の金は持っているが使えないのだ。
コルタナ魔道国の通貨は銅貨1枚が1マル、銀貨1枚が千マル、金貨1枚が100万マルである。トイレットペーパーを一個500マルで売ろうと考えている。
相手はもちろんオカリナだ。
土曜日の朝起きると食堂に両親がいた。珍しいこともあるものだ。
「おはよう。」「おはよう。今日は仕事を休んだの。」
「いいや、用件を済ませたら出勤するよ。」「用件?」
「異世界に出かけるんだろ。見送るよ。」「まあいいけど、わざわざ見送るものほどではないよ。」
「息子が旅に出るんだ。見送るだろ。」「ありがとう。」
朝食は母さんが作ってくれていた。白いご飯にみそ汁、卵焼きだ。フルートもチェンバロも感激して食べていた。
いよいよ、異世界に出かける時が来た。両親が俺の部屋に入ってきて見守る。俺たちはクローゼットの中の黒い渦に入って行く。両親は興味深そうに見ていた。
王宮の部屋に出る。するとオカリナが待っていた。
「10日もいないと寂しかったです。」
オカリナが俺に抱き着いて来る。フルートとチェンバロが俺からオカリナを引きはがす。
「チェンバロ何をするのですか。」「翼様は私の夫になる方です。」
「まあ、最古の魔女殿とチェンバロまで翼殿を狙っているのか。」「フルート様と私は翼様のご両親から許可を得ています。」
「なんと、我も翼殿の両親に会わねばならないな。」「師匠には仕事があるでしょ。」
「何、調整すればよい。翼殿、両親に会わせてくれ。」「オカリナも来るのか。」
「その通り。10日位何とでもなる。」「分かったよ。」
俺にオカリナを止める理由はない。フルートとチェンバロは面白くないようだが仕方がない。
俺は商談に入る。
「オカリナ、見てもらいたい物があるのだが。」「なんだ。見せてみよ。」
俺はトイレットペーパーを取り出して紙を引き出して見せる。
「なんだ。紙か、こんなに柔らかくては書き物には適さないぞ。」「これはトイレ用の紙だ。水に溶けるから便利だぞ。」
「何、紙をトイレに使うのか、贅沢だろ。」「これを使うと快適だぞ。試してくれ。」
オカリナは次の日、トイレットペーパーを売ってくれ頼み。俺は一個500マルで売ることに成功する。こうして、俺たちはコルタナ魔道国での活動資金を手に入れる。




