第1話 魔法使いなる
土曜日の朝早く、俺は目が覚める。これから異世界へ行くのだ。楽しみで仕方ない。だが起き上がることが出来ない。フルートががっちり抱き着いている。
顔が近い。きれいな寝顔だ。フルートが自称美少女なことも間違ってはいない。
「起きれくれ。起き上がれないよ。」「キスしたら寝覚めるかもしれないぞ。」
「するか。童話のお姫様か。」「我とキスできるチャンスだったのに惜しいことをしたな。」
俺は幼女にキスするようなロリコンではない。落ち着け、落ち着け。
「フルート、離して欲しいな。」「つまらない。からかいがいが無いな。」
フルートはやっと離してくれる。俺は起き上がって着替える。少しでも早く異世界へ行きたいのだ。
「翼、異世界は逃げないぞ。」「俺は早くいろいろなことを体験したい。」
「仕方ない、我も用意するか。」「俺は朝食の用意をしているよ。」
俺に幼女の着替えを見る趣味はない。朝食は、パンとベーコンエッグを用意する。着替えたフルートがキッチンに降りてくる。
フルートはベーコンエッグをおいしそうに食べる。
「このベーコンと言うものは何なのだ。肉のようだが加工されているな。」「肉を塩漬けして燻製したものだよ。」
「そうか、これはうまいな。」「まだあるから持って行くか。」
「いや、次にベーコンを使った料理が出てくる時を待つよ。」「うわー、ハードル上げるなー」
「期待しているぞ。」「頑張ります。」
俺は料理の腕を上げる必要があるようだ。食事を終えていよいよ異世界へ行くことになる。俺の部屋のクローゼットを開けて渦の中に入る。
渦を出るとそこはフルートの家の中だ。俺はすぐに庭に出てファイヤーボールの練習を始める。1週間ぶりの魔法なので確かめたかったのだ。うん、腕は落ちていない。
「ファイヤーボールはもうよかろう。ソイルウォールとダートウォールの訓練をするぞ。」「どちらも使えるよ。」
「実用的な使い方を教えてやる。」「おう。」
フルートはソイルウォールで地面に大きな穴を作る。そして、地面を元に戻す。俺もソイルウォールで地面に穴を開ける。しかし、大きな穴だが浅かった。
「もっと深くイメージしろ。魔獣が落ちたら出られないような深さが必要だ。」「はい。」
俺は集中してソイルウォールで地面に大きな穴を作る。今度は十分に深い。フルートが拍手する。
「いいぞ。それでいい。」
俺は繰り返し練習してものにする。フルートは次にダートウォールで土の防壁を作りだす。高さは2メートルほどで幅は20メートルはある。
「これくらいできるようになったら森に言ってもいいぞ。」「本当か。」「本当だ。できればだがな。」
俺はダートウォールで土の防壁を作ろうとするがフルートのようにうまくいかない。高さは十分だが幅が3メートルほどしかない。フルートが説明する。
「これが今、翼の魔力が及ぶ範囲だ。弱い魔力は遠くまで及ぶが壁を作りだすほどの強力な魔力は範囲が限られる。」「俺の魔力が届いていないのか。」
「そうだ。魔力が及ぶ範囲をイメージするんだ。」「はい。」
俺はイメージで魔力を広げる。それでも20メートルには届かない。それでもダートウォールで土の防壁を作りだす。今度は幅10メートル位になる。
「いいぞ、その調子だ。続ければ今日中にできるかもしれないぞ。」「はい。」
俺は再び集中してイメージする。するとフルートが言う。
「昼だな。昼食にするぞ。」「集中していたのに。」
「昼を抜くと体力が持たないぞ。」「分かったよ。」
昼食はラーメンを作る。袋麺を使って、野菜を煮込んで、厚切りのチャーシューを乗せる。フルートが珍しそうに見ている。
「これはカップ麺と作り方が違うな。」「あれはお湯を注ぐだけだからな。袋麺はアレンジしやすいんだ。」
「そうか、これは翼流なんだな。」「我流だけどね。」
フルートはラーメンをおいしいと言って食べる。インスタントだがひと手間かけた甲斐がある。フルートは食後、昼寝を始める。俺は訓練を始める。
俺は魔力を広げる訓練していく途中で、これは魔力で自分の領域を作ることだと気づく。
それからダートウォールで土の防壁を作りだすと幅が大きく伸びる。そして夕方には幅30メートル位に伸びる。フルートが言う。
「感覚を掴んだようじゃな。お前は魔法使いとして一人前になったぞ。」「まだ、魔法は数種類しか使えないけど。」
「これから、いくらでも覚えられる。」「うん、楽しみだ。」
夕食はフルートが作ってくれる。レトルトだが、泥臭い魚よりずっとましだ。食後、一緒に風呂に入り、一緒に寝る。俺はなかなか寝付けなかった。明日からの冒険が楽しみだった。




