第9話 チェンバロ、世界を渡る
俺はフルートにたたき起こされて朝食を作る。とは言っても焼いたトーストにハチミツを塗ったものとスクランブルエッグだ。
もうフルートは食べ慣れているが、チェンバロは反応が違う。
「なんだこのパンは柔らかいぞ。どこにこんなパンが売っているんだ。」「俺の世界では普通のパンだ。こちらの世界のパンが硬すぎるんですよ。」
「こちらは卵料理か、少年は貴族だったのか。」「俺の世界では普通に食べていますよ。」
「すごいな。少年の世界に行ってみたいな。うん、そういえば少年はこの世界に住んでいるのだはないのか。」「俺は自分の世界とこの世界を行ったり来たりしています。」
「なに・・・なんだって、なぜそんなことが出来る。不可能だぞ。」「フルートが穴を開けたから、そこを通るだけだよ。」
「フルート様が、やはり最古の魔女は違うな。」「我のすごさが分かったか。」
「はい、フルート様はすごいです。弟子にしてください。」「弟子は無理だが、共に行動することは許可しよう。」
「本当ですか。では、少年の世界に連れて行ってください。」「いいぞ、連れて行くつもりだったからな。」
チェンバロは上機嫌になる。俺は昨夜のことが気になるが黙っていよう。
俺たちは午前中、畑の手入れをする。そして、チェンバロはフルートの家が帰らずの森の中にあると知って驚く。
昼は、カップ焼きそばを作る。チェンバロは興味を示して言う。
「これは売れますよ。1個300コルで売ったらどうでしょう。」「俺も考えたけど、そこまで余裕が無いんだ。」
考えたら、勇者エドガーに襲われて、ドラゴンと戦って、異世界召喚されて、同じ学校の生徒と戦って忙しかったなー、おれのお気楽異世界生活はいつ始まるんだ。
午後は、森に出て今夜の食材を探しに出る。俺は魔力探知でソードボアを見つけるとエアカッターで首をはねる。フルートが位相空間にソードボアを入れながら言う。
「今日は外でバーベキューをしよう。」「分かりました。3人いるから多めに作りましょう。」
「少年、魔法の詠唱はどうした。」「しませんよ。発動に時間がかかるだけでしょ。」
「ああ・・・そういうものか・・・」
チェンバロは帰り道、一人でぶつぶつと独り言をつぶやいていた。
フルートの家に戻るとソードボアを解体して食べる分の肉を用意する。そして、畑から食べる分の野菜を収穫する。
バーベキューを終えると俺は帰り支度を始める。そして、フルートと風呂に入る。
チェンバロは風呂から出るとフルートに質問する。
「異世界へ行くにはどのような魔法を使うのですか。」「ああ、そこの壁に立てかけてある板に黒い渦があるだろ。あの中に入るだけだ。」
「もしかして異世界と繋がったままなのですか。」「そうだ。いつでも行き来できるぞ。」
チェンバロは口を開いたまま固まる。チェンバロが長年実験してきた異世界召喚の究極が無造作に壁に立てかけてあるのだ。
そして、帰ることになる。俺、チェンバロ、フルートの順番で渦の中に入る。
チェンバロの俺の部屋を見た感想は、「狭いなここは監獄か」だった。




