最後の別れ
「もしもし…。由奈の母です。」
明らかに震えるその声に桜庭は全てを悟った。
事情を聞き病院に急ぐ桜庭。
由奈の家族と合流し、案内されるままいつもの由奈の病室とは違う方向に向かう。
お父さんからは昨日の夜容態が変化しそのまま亡くなった事を聞かされる。
由奈のお母さんは終始泣きじゃくっていた。
お兄さんは無言のまま。
通された部屋に入ると、仰向けで横になっている由奈がいた。
手を合わせると、由奈の元に歩み寄るが顔が見えない。
いや、目に見えるもの全てが歪んでいる。涙のせいで。
桜庭は崩れ落ち、その場にへたり込んでしまった。
しばらく時間が経ち、動けない桜庭をお兄さんが抱え上げ、部屋から出た。
「色々迷惑かけたね。ありがとう!これから葬儀の準備とかあるから、桜庭君…。来れるなら、お別れに来てくれ。」
お父さんは落ち着いてそう言うと桜庭と連絡先を交換した。
桜庭は病院のベンチにしばらく座り込んで、放心状態だった。
家に帰ると自分の部屋で、泣きじゃくっている桜庭にお父さんから連絡が入る。
葬儀の日程などを教えてくれた。
桜庭は自分の親にも事情を話し、葬儀に参列する事を告げた。
桜庭の親は毎日お見舞いに行っていることも知っていたため、自分のことのように泣いていた。
葬儀に参列する桜庭の席は由奈の家族の隣、祭壇の真ん前だ。
由奈の家族の計らいだった。
祭壇に掲げられた由奈の写真…。
周りを見回すとたくさんの花輪が送られていた。
祭壇の真横の花輪に自分の名前があった。
由奈のお兄さんが出してくれた事を後から知る。
葬儀の最中桜庭は冷静だった。
由奈の前で泣かないと決めた。
それでも我慢できなくて自然と涙が溢れる。
後ろの方では、楠など知った顔も見え泣きじゃくっている。
由奈の家族の計らいで、次の日火葬場まで一緒に行くことになった。
桜庭は最後は泣かなかった。
そして出棺のときも、桜庭は冷静に手を合わせた。
バスに乗り込むと隣にお兄さんが座った。
クラクションの音とともに桜庭の感情は限界を迎えた。
声が出てしまうくらいに、桜庭は泣いていた。
前の座席に座る両親も振り返り桜庭の様子を見ると、お母さんも泣いてしまった。
「大丈夫か?」お兄さんはそう言うと桜庭の首元を揉んだ。
桜庭は頷くが涙が止まらない。
ある程度泣きじゃくって落ち着きを取り戻し、息を整えようとする桜庭。
それを横目で見ていたお兄さんが、桜庭に手紙を渡した。
「家で読んだ方がいいと思う。」
お兄さんはそう言うと桜庭は頷き、火葬場に到着した。
火葬が終わるとお母さんを除き桜庭も骨を拾うことになった。
骨になった由奈の体…。
手のあたりにリングのような物を見つけてしまい、桜庭の喉を締め付けた。
骨を拾い終え、由奈の家に戻り桜庭もご馳走になることになった。
別れの儀を終え、少し落ち着いていた桜庭はお母さんを手伝い、由奈の親戚達とも会話をした。
まるで家族の一員のようだった。
そして、由奈のお父さんが桜庭を送って行くことになった。
「桜庭君、本当にありがとうな…。」
お父さんはそう言うと桜庭に封筒を渡す。
「こんなのいただけません!」
桜庭は拒否するが、お父さんは強引に渡してきた。
「親として、こんだけしてくれた人に礼をするのは当然だ、恥をかかせないでくれ。」
そう言われると何も答えられなくなった桜庭は受け取った。
「由奈の事を忘れないでやってくれ。たまには顔を見せに来てくれ。な?」
お父さんにそう言われると桜庭は頷き返事をして車を降りた。




