突然
冬休みも中盤に差し掛かると由奈の状況も悪化してきて、桜庭が面会できる時間も少なくなっていった。
待つ時間の方が長くなる。
それでも桜庭は毎日由奈の病院に通った。
ほんの数分でも由奈の顔が見られれば桜庭にとっては幸せだった。
桜庭がお見舞いに訪れ由奈と話していると、由奈の両親が来た。
桜庭は家族と挨拶すると見慣れない人がいたが、由奈のお兄さんだとすぐにわかった。
桜庭は深々と頭を下げ挨拶をする。
お兄さんも深々と頭を下げる。
「お兄ちゃんだ!仕事大丈夫なの?」
由奈は喜ぶように言った。
「うん。大丈夫だよ。」
由奈ははしゃいでいる。
「紹介するね。由奈の彼氏の祐介!いっつもお見舞いに来てくれて、お兄ちゃんみたいな存在!」
お兄さんは笑いながら、頷いてる。
由奈の家族と桜庭と由奈の病室でしばらく談笑したのち、桜庭は挨拶をし病室を出ることにした。
「みんな、出てって!祐介だけ残って!」
一旦退出させられる由奈の家族。
「もう行っちゃうの?」
由奈は横に立つ桜庭の袖を握り締める。
「たまには家族で過ごしなよ。また来るからさ。」
桜庭はそう言うと由奈の髪を撫でた。
「祐介は私の家族じゃないの?」
桜庭は困惑した。
由奈は桜庭を引き寄せると抱きついた。
桜庭は由奈についてる色んな線に気を使いながら、抱きしめた。
「ずっとこうしてたい…。」
由奈は甘えるように言う。
「俺も…。」
桜庭はそう呟くと由奈から離れ、由奈の肩をもった。
しばらく見つめ合う二人。
「よし、行くね!」
由奈は頷いた。
桜庭は廊下で待つ家族に挨拶をして、病院をあとにした。
桜庭はお兄さんが来たという事から由奈が退院出来ることはない事を悟った。
耐えきれず色んな友達に電話をかけるが、誰も繋がらない。
家に帰る気にもなれずフラフラと歩く桜庭。
一時間ぐらい歩いただろうか…。
坪井からの着信に気付く。
「わりぃ、気付かなかった。どうした?」
「いや、ちょっと…。」
桜庭の元気のない様子に考え込む坪井。
「今からお前ん家向かうわ。」
そう言うと電話を切られた。
切った電話のディスプレイには多くのメールや着信があった。
桜庭は我にかえったようにハッとする。
急いで家に帰り坪井を待つことにした。
電話をかけた色んな人に電話をしたり、メールを打つ。
「ごめんなんとなく電話してみただけ。」
そんな内容だった。
坪井が桜庭の家に来て桜庭の部屋のソファに座ベッドに座る桜庭に缶コーヒーを投げた。
「おう久しぶりだな!どうした?」
桜庭はベッドに腰掛けた。
「いや、冬休み入ってから遊んでねーなぁって思って。」
桜庭は缶コーヒーの蓋を開けようとするがなかなか開かない。
「そうだな。ところで前川んとこ行かなくて良いのか?」
坪井が開けてやると言わんばかりに桜庭に手を差し出す。
桜庭は一瞬固まった。
「あぁ今日家族来てたから、帰ってきた。」
桜庭は坪井に缶コーヒーを渡した。
「良くないのか?」
坪井はしかめっ面で缶コーヒーの蓋をあける。
「良くないな…。多分長くないんじゃないかな…。兄貴来てたし。」
坪井は桜庭に缶コーヒーを差し出すと一瞬固まった。
「そっか…。」
受け取る桜庭が指輪をしていることに気付く坪井。
「なんて声かけていいかわかんねーな…。」
坪井は申し訳なさそうに答える。
「わりぃな。気使わせちまって…。」
桜庭も小声で言う。
「気にすんなって。お前大丈夫か?俺なんてなんも出来ないかもしれないけど、元気出せよ!」
そんな言葉も今の桜庭には強い励みになる。
その日坪井は桜庭の家に泊まり眠るまで高校の思い出話をし続けた。
桜庭は泣きたい気持ちを抑えつつ眠りについた。
それから一週間が経ち、その日も由奈の病院に向かう桜庭に由奈から着信が入った。
「もしもし!」
桜庭が電話を取ると女性だが由奈の声とは違う声が聞こえてきた。




