変動
「話してくれる?」
由奈が先に口を開いた。
桜庭はある程度の事情を話す。
由奈の表情は変わらない。
「なんていうかさ。桜庭君が中途半端に期待持たせるから悪いんじゃない?そりゃあ傷つくよ。」
由奈は全てを聞き終えると冷静に意見を述べた。
「そこまで桜庭君のこと好きで、桜庭君も思い詰めるところがあるなら、より戻すべきじゃない?今は好きじゃなくても付き合っていくうちに好きになるかもじゃん?」
由奈は俯き加減で言う。
「え?どういうこと?」
桜庭は苛立ちを覚えた。
「相手がそこまで好きなんだから、応えてあげればいいんじゃない?話し聞くといい子じゃん」
由奈はいつもの調子だ。
「え?それお前が言う?」
桜庭は由奈に対して「お前」という言葉を初めて使った。
由奈はハッとしたように驚いた。
そして俯いてしまった。
「ごめん。でも私も振ったことすごい後悔して、今こうやって遊ぶのも本当は辛くて…。」
由奈は動揺を隠せない様子。
「お前が辛かった事とか俺に関係あんの?お前が選んだ結果じゃん。俺だって辛かったし…。」
桜庭は感情のままに喋ってしまった。
「ごめんね…。言う通り…。けど私も桜庭君好きだよ。こうやって遊んでて付き合いたいって思った。けどさっきの電話で話す桜庭君さ、私といる時より男らしいっていうか…。優しいしあんな風に接せられたら相手も諦められないじゃん。私より元カノと付き合った方が良いのかなって思ったの。」
由奈からの言葉が桜庭を混乱させた。
「そうやって振り回してるの誰だよ!なんで今になってそう言うこと言うんだよ!」
桜庭が言い放った所に楠たちが戻り、驚いたように立ち止まった。
しかし立ち去るわけにもいかず、気まずそうにこちらに歩いてくる。
「なぁにぃ?早速喧嘩ー?喧嘩するほど仲が良いってね。」
楠は場を和ませようとしている。
桜庭は何も言わない由奈を残し立ち上がる。
由奈は泣いてしまったようで、坪井が桜庭呼び止めるが、桜庭は一度振り返るが坪井を睨み歩き続けた。
桜庭は姿が見えない場所まで行くと河原の岩に腰掛け大きくため息をつき後悔した。
しばらくすると楠が一人で来た。
「ここいい?」
桜庭に尋ねると楠は桜庭の隣に座った。
「由奈も悪いよね。でも桜庭も悪いんじゃない?」
桜庭は落ち着いている。
「ってか俺が悪い。」
「そーゆーところだよ。自分で背負って誰も傷つけないようにとか、そういう優しさが人を傷つけることもあるんだよ。」
楠は周りを確認するとそっと桜庭の背中に頭をもたげた。
「知らなかったでしょ?私も桜庭のこと好きだったんだよ…。」
川のせせらぎが沈黙をかき消していた。
「でも気にしないで、今は友達として好きって感じ、付き合ってる彼氏もいるしね。」
桜庭は何も言わない。
「友達として由奈と桜庭を応援してた。けど上手くいかないね。桜庭が由奈に言った事は間違ってないし、由奈も反省してるよ。許してあげてくれないかな?」
楠は桜庭の顔を覗き込んだ。
「許すとか、由奈だけが悪いわけじゃないだろ。ただどうしていいかわかんなくて、あんな事言っちまった。俺どうしたらいいかな?由奈だけじゃなく坪井にもあわせる顔がねーや。」
桜庭は楠の目を見ていた。
「由奈は強い子だし大丈夫。坪井だって友達でしょ?もっと気楽に考えなよ。」
桜庭はため息をつく。
「待ってるから、落ち着いたら戻ってきな。ね?」
そう言うと楠は立ち上がり戻っていった。
そこから桜庭は一人考えていた。




