再燃
それから桜庭の気持ちは落ち着きをとりもどし、何も無かったように高校生活最後の一年を過ごしていた。
尚美とはあいも変わらずメールのやり取りとたまの電話程度で、あの出来事以来会うことは無かった。
彼女も出来ないまま訪れた初夏の日、クラスでは学祭の出店で何を出すかを話している。
「なぁお前久しぶりに前川に連絡取ってみたら?」
佐々木が突拍子も無いことを桜庭に言い出した。
「連絡取るったって、連絡先も知らねーし。」
桜庭はもう前川の名前が出ようと動じなかったが、この時は佐々木の提案に少し怖気づいた表情をした。
そこから佐々木指揮の下須藤を巻き込み、前川の連絡先を探る動きが桜庭の意図してないところで動いていた。
須藤が休み時間にニ、三回隣のクラスに行くと電話番号とアドレスが書かれた紙を桜庭に渡した。
「俺が連絡して嫌な思いしないかな?」
弱気に呟き、渡された紙と携帯を見つめる桜庭。
「それは大丈夫だろ。」
佐々木がそう声をかけると須藤が重い口調で話し始める。
「実はさ、桜庭の一件以来隣のクラスの前川と仲良かった奴らもありえないって言って前川責めたらしいんだ…。」
桜庭とはなんの接点も無い隣のクラスの女子達がそんな事をしていたなんて桜庭は知る由もなく、俯いてしまった。
「それでも佐藤と付き合って幸せそうにしてて、桜庭が落ちたじゃん?だから誰も連絡取らなくなったらしいんだ…。」
桜庭は自分を責めていた。
自分が告白なんかしなければそんな辛い思いを由奈にさせる事も無かったんじゃないかと。
「それで、連絡先は変わってなかったらしくて、一応前川に桜庭から連絡しても良いか聞いてもらって…。OKもらったから大丈夫。」
桜庭は考え込んでしまった。
「お前が連絡取りたいならすればいい。無理にってわけじゃないから。」
佐々木が桜庭の肩を叩きながら言った。
「ちょっと考えさせてくれ…。」
桜庭はそう言うと携帯を握りしめた。
次の授業中桜庭は佐々木と話もせずに考えた。
なんて声をかけたら良いのか…、自分の事をどう思ってるのか…、でも声が聞きたい…、会いたい…。
授業が終わると桜庭は佐々木の方を向いた。
「よし、連絡とるわ!」
佐々木は嬉しそうに待ってましたと言わんばかりの笑みを浮かべる。
「実はな、学祭に前川来るんだよ。」
佐々木が笑顔で言った。
「え?来るって、一般公開じゃないのにどうやってくるんだよ。」
桜庭は佐々木に詰め寄る。
「あいつの従兄弟が今年うちの学校入学してて、家族は招待できるからそれで来るって。」
やけに事情に詳しい佐々木に桜庭は不信感を持った。
「その従兄弟が松下の弟と友達で家に遊びに来た時言ってたらしい。」
「そういうことか…。」
桜庭は意を決してメールを作り始めた。
「久しぶり!元気!?佐々木達と話してて、なんか懐かしくなってメール送っちゃった。」
帰ってくるか不安で仕方なかった。
桜庭の携帯が振動して桜庭はすぐに携帯を開いた。
「元気だよ〜。桜庭君は元気?今度学祭行くからよろしくね。」
桜庭のテンションは一気に上がりガッツポーズをとった。
佐々木はそれを見て笑っている。
その後数通のやり取りをした後、桜庭は出会ったあの頃に戻ったようにはしゃいでいた。
学祭のステージも桜庭は高橋とやることになり、また練習の日々が続くことになった。
桜庭はモンパチの「小さな恋の歌」と静かなバラード曲の二曲をチョイスした。
「小さな恋の歌」をギターで弾くため、高橋とカラオケが終わった後は自宅でギターを弾き猛練習を重ねた。




