初恋
桜庭と橘は佐々木の指示のもと、ベッドに座らされ今宮の時と同じように肩に手を回した後ベッドに横になるよう指示を受けた。
「明るいと寝れないから電気消そっか。っていう橘のセリフ!」
佐々木がいつになく気合いを入れ指示を飛ばす。
前川が電気を消し豆電球の灯りが部屋を照らす。
「腕枕してエッチしようか、桜庭のセリフ!」
桜庭は橘の頭の下に腕を入れた。
「はいはい、エッチしよっか?」
桜庭は照れもせず言い放った。
「えー、眠いから今日は無理。」
橘がうまく返す。
「じゃあキスしよっかっていう桜庭のセリフ!」
佐々木は今回は引き下がらない。
「じゃあおやすみのチューは?」
桜庭はアドリブを混ぜつつセリフを放つ。
「ほっぺならいいよぉ。」
橘も上手くアドリブを入れる。
「じゃあほっぺにお願い。」
橘が桜庭の頬にキスをした。
「終了!お前らつまんない!」
佐々木は自然で面白みのない演技に不満だったようだ。
ベッドでは橘が桜庭にギュッと抱きつき離れた。
桜庭は不思議に思ったが気にも留めなかった。
そのまま豆電球の灯のもと、佐々木と橘が隣同士で座り、桜庭と前川が隣同士で座りその向かいに今宮が座った。
桜庭にくっつき頭を桜庭の肩にもたげる前川、桜庭はそっと前川の髪を撫で始めた。
最初は今宮も話に入っていたが前川が次第に今宮を抜いて話を進めた。
桜庭は今まで味わったことない気持ちが湧き上がっていた。
「由奈ね、小さい頃肺の病気で手術して肺がちょっと足りないの。だから走ったりすると、すぐ息あがっちゃってよくお兄ちゃんちゃんに抱っこしてもらったりしてたんだー。」
前川は桜庭にくっつきながら話す。
「へー、いいお兄ちゃんだね。」
桜庭はドキドキした鼓動が前川に聞こえていないか心配になった。
「うんすごいカッコいいようちのお兄ちゃん。今度会ってみて、話会いそうだし!」
前川は顔を上げると桜庭の方を見ながら言った。
「うん俺も会いたい。」
桜庭は前川と話す度に胸が締め付けられるような今まで味わった事のない気持ちを味わっていた。
「そういや、前の彼氏とはどうして別れたの?」
桜庭が一番気になるところだった。
「浮気が原因。別れた後も会ったりしたけど、佐々木もあんなんだし、男の人ってみんな浮気するのかな?」
前川は橘と二人で話している佐々木にイラついているようだった。
「んー、どうなんだろ。まぁ人によるんじゃないかな。」
桜庭は当たり障りの無い返事をした。
「ねーねー、おにーちゃんまた由奈と遊んでくれる?」
桜庭はいつの間にか完全に前川の事が好きになっていた。
初めての経験でもこれが人を好きになる気持ちだということが分かっていた。
「もちろんいいよ。」
桜庭はクールを装うが内心ガッツポーズを取っていた。
「じゃあアド交換しよ!」
そう言ってアド交換する二人。
今宮は完全に空気になってしまっていた。
「そろそろ帰るか!」
佐々木が声を上げ解散となった。
家に着いた桜庭は佐々木に電話をした。
佐々木も妙にテンションが高く自分の事から話始めた。
「やべーは桜庭、橘と帰りにキスしちゃってさ、マジ好きって言われちゃった。」
佐々木がこんなに喜ぶ声も聞いた事がない。
「マジかー。お前サイテーだな。」
桜庭は佐々木のテンションの高さが鬱陶しそうにあしらった。
「お前は楽しめた?前川といい感じだったけど。」
佐々木はハイテンションのまま続ける。
「俺もマジでヤバい!ってか完全に前川の事好きになっちゃった。マジで初めて人を好きになった感じ。」
桜庭も一気にテンションが上がった。
「前川だったら付き合えるしょ。またみんなで遊ぼうぜ!来週とかヒマ?」
佐々木がこんなに前向きなのは初めてかも知れない。
「ヒマ!ってかマジで付き合いたいから協力してくれ!」
桜庭もテンションマックスのまま、電話を切った。
その晩すぐに前川にありがとうメールを送り、来週の予定を聞き遊ぶ約束を取った。
その晩ずっと桜庭の胸は締め付けられた。
初めての経験でこれが好きという気持ちだと知った。




