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:やっぱり真子ちゃんと知り合いなんだ?
:このまえの配信のやりとりからも、知り合いっぽかったしな
:どういった関係なの?
「はい。真子先輩とは、探索者の先輩後輩になりますね。昔は配信のこともふくめて、いろいろと教えてもらいました」
まだ緊張しているけど、真子のおかげで最初よりもだいぶ気持ちがほぐれてきた。少し声は震えているが、視聴者からの問いかけに答えていく。
「今日はわたしのことを、みなさんに知ってほしいですからね。何か聞きたいことがあれば、遠慮せずに聞いてください」
:聞きたいことは山ほどあるけど、まずは何色が好きかを知りたい!
:黒髪ロングかわいいね!
:リンゴとバナナだと、どっちが好物?
:イヌ派? ネコ派? それともマコ犬派?
:おまいらもっと大事なことを聞けよwww
:どうでもいい質問ばっかするんじゃないwww
:答え レイカちゃんはマコ犬派wwww
質問を受けつけると、早速コメント欄に書き込みがされる。こういうネット特有の悪ノリも、なんだか懐かしい。
:異世界帰還者っていうのは本当なの?
すると、ようやくまともな質問が書き込まれる。
「最初の質問はこれがいいですね。わたしが異世界帰還者かどうかということ。みなさんも、そのことが気になっているでしょうから」
:それは気になってた!
:まずはそれについて答えてもらわないと!
:ダンジョンが異世界に通じてるっていうのは、ホントなのか?
レイカは椅子の背もたれに体重を預けると、胸に手を添えてうなづく。
「わたしは正真正銘の、異世界からの帰還者です。中学三年のときに異世界へと渡って、三年間ほどあちらの世界で過ごしました」
:うおおおお! マジか!
:本当だったらすごいな!
:まだ半信半疑だけど、何もないところから剣を取り出してたからな!
質問に答えると、コメントの流れが加速する。
す、すごっ、とレイカは大量のコメントに息を飲んだ。
:探索者組合の職員になんか聞かれたりしなかったの?
:本当に異世界からの帰還者なら、放っておくはずがない!
:まだ本当に異世界から帰ってきたのかはわからんが、とりあえずギルドが話は聞くはず!
「えぇ、そうですね。ギルドには、こちらに帰ってきてすぐに呼び出されました。いろいろと聞き取りをされて、異世界の情報を話しましたよ。それから後日、書面のほうでも情報を書いて送りましたね」
帰還した翌日には、探索者組合の職員が自宅を訪問してきて、本部のある建物まで連れていかれた。
レイカの探索者資格についてもどうなっているのか気になったので、同行することにした。
「きちんと説明しても、異世界の存在を簡単には信じてくれなかったので苦労しました。なので、あちらで入手したアイテムや武器、伝説の聖剣や魔剣、魔の森を生み出す種、太古の幻獣や上級悪魔を出したら、急に慌てだして、たくさんの職員たちが押しかけてきましたね。それでようやく信じてもらえました。最後のほうは『信じるからもうやめてぇ!』と、なぜか泣きながらお願いされましたね」
:いや、待て……
:なんか不穏なこと言ったぞ、この血塗れ女www
:聞いてはいけない単語がいくつかまじってたような……
:あれ? もしかしてこの子、危険な存在なのでは?
「それから病院で身体検査も行いましたよ。結果は、いたって健康だそうです。探索者資格のほうも問題ないようなので、ダンジョンにもぐっても大丈夫ですね」
:いたって健康www
:ヒュドラ瞬殺できる実力があって、健康じゃなかったら逆に怖いwww
:またダンジョンにもぐれてよかったね!
:探索者資格については、ギルドの人がレイカさまのご機嫌を損ねないように融通したんじゃなかろうかwwww
:ヒュドラを瞬殺できるほどの戦闘能力がある女の子を捕まえて管理するとかはできないだろうしな。そういうことは人権的にもどうかと思うけど
:レイカさまは誰にも制御できないwww
:ダンジョンで行方不明になって異世界に渡った人達がいたとして、少なくとも公式では帰ってきたのはレイカさまが初なのでは?
「そうですね。ギルドの人の話によれば、今のところわたしが初めての帰還者だそうです。あっ、ちなみにこちらから自由に異世界に行く方法はないのかと尋ねられましたけど、正直にわからないと答えましたね」
:好きなときに異世界に行けるわけじゃないのか!
:自由に異世界に行き来できたら、大変なことになるだろうからな……
:行く方法がわからないままのほうが平和かもしれん!
:……異世界には行けないんだ(先輩)
:真子ちゃん?
:先輩、異世界に行きたいのかwwww
:異世界に行こうとするなwww
:先輩は異世界系の作品とか好きだからなwwww
:先輩が異世界に行けなくてガッカリしてるwww
自らの意思で異世界に行く方法はわからないと伝えると、真子が落胆していた。どうやら真子は、異世界ファンタジーの世界に行ってみたかったようだ。
:レイカさんは学校とかってどうなってるの?
:これから通う予定とかあるの?
:だとしたら勉強しないといけないな
コメント欄に書かれた質問を見ると、レイカはビクッとした。居心地が悪そうに、ディスプレイから目をそらす。
「あっ、いえ、その……」
:どうしたん?
:めっちゃ気まずそうwww
:もしかしてあんまり答えたくない質問なの?
:答えたくないなら、無理に答えなくてもいいぞ!
心配するコメントがいくつも流れていく。それを目にしたレイカは、慌てて首を振った。
「い、いえ、そうではなくてですね……。わたし、もともと勉強はあまり得意ではなくて、両親からも通信制や定時制の学校をすすめられたんですけど、断ることにしたんです。正直な気持ちを言わせてもらうと……」
レイカは地の底にまで届きそうなふか~いため息をこぼすと、覇気のない表情で胸の内にある想いを打ち明けた。
「今さら勉強がんばるとか、異世界で生き延びるよりも過酷です……」
:マジトーンなんだがwwww
:賢そうな外見してるのに、勉強あんま得意じゃないのかwwww
:黒髪ロングのクール系っぽい外見なのに勉強苦手なんかwww
:レイカちゃんの外見なら、勉強ができる女の子であってほしかったwwww
:人は見た目によらない良い例だなwww
:なんか親近感わいてきたwww
:黒髪ロングのレイカさまの外見に釣られてきた俺だけど、勉強が苦手というギャップに喜びを感じてるwww
:勉強がんばるよりも異世界で生き延びるほうが簡単って、おかしいだろwwww
レイカが本音を告白すると、更にコメント数が増加していく。想定外のところで、とてもウケていた。
:てことは探索者として生活していくのか?
:配信を再開したのも、探索者として活動していくからか!
:ヒュドラを瞬殺できる実力があるなら、十分に生活していけるはず!
「えぇ、そうです。これからは探索者として生活費を稼いでいく予定です。配信を再開したのは、探索者として活動するためでもありますけど、こっちに帰ってきたらやりたいことの一つでしたからね。実際、こうして配信を再開できてうれしいです。こんなにたくさんの視聴者が集まってくれて、コメントがいっぱい流れるだなんて」
レイカはニッコリと朗らかに微笑みながら、視聴者のみんなに呼びかける。
「異世界に行く前は、どんなに配信をがんばってもチャンネル登録者数は一ケタのままだったのに。身内が見に来てくれないときは同接ゼロで、コメントなんてほとんど流れませんでした。もう一生このままなのかと思っていましたね。わたしなんのために配信しているのかなって、何度も頭を悩めていました」
:やめてくれ……
:うっ、胸が……!
:配信してて、誰にも見られないのホント辛いからな……
:同じ配信者として、ぐるじい!
:視聴者たちにダメージがwww
:悪意のないイイ笑顔でワイらの胸をえぐってきおったwwww
:ほんとぉぉぉぉに、バズってくれてよかったぁ~!
「あれ? いえ、あの、みなさんのことを傷つけるつもりはなかったんですけど?」
なぜか視聴者に甚大なダメージを与えてしまった。レイカは申し訳ない気持ちになる。
気を取り直すようにレイカは両手を合わせてると、これからの目標を伝える。
「わたしには、かなえたい夢があるんです。かつては手の届かなかった夢でしたけど、バズった今ならば、かなえることができるかもしれません」
:夢?
:夢とは?
:なにかやりたいことあるの?
コメント欄に、いくつもの質問が書き込まれる。それを見たレイカは唇の端を持ちあげて、挑戦的な笑みをつくった。
ずっと胸の奥に秘めていた願望を言葉にする。
「動画配信サイトで、日間総合ランキング1位を取ること! それがわたしの、かなえたい夢です!」
:なにいいいい! ランキング1位だとっ!
:1位を取りたいのか!
:配信者ならば、誰もが一度は夢見ることだ!
:そして大半の者たちが諦めていく……
:バズったとはいえ、1位を取るのは難しいぞ!
:ランキングの仕組みってどうなってるんだっけ?
:動画の再生数とコメント数から算出される!
:めっちゃ大量の視聴者数とコメント数がなければ、1位を取るのはムズい!
:ランキングの上位には、トップの配信者やインフルエンサーもいるからな! それよりも視聴者やコメント数を稼がないといけない!
:というか、いつの間にかレイカさまの配信が同接十五万いってるぞ!
「えっ! じゅ、十五万!」
ガタッと椅子から転げ落ちそうになりながら、ディスプレイを確認してみると、本当に同接が十五万に達していた。
雑談をしていただけなのに、こんなにも伸びるだなんて……。
:すげぇええええ!
:異世界から帰還したという話に多くの視聴者が集まってきたようだ!
:きっと勉強が苦手という話にみんな釣られて来たんだと思うwwww
:んなわけあるかいwww
:レイカちゃんめっちゃビビってるなwww
:椅子からコケそうになってたwwww
:もしもランキングで1位を取ったら、レイカさまは感激のあまり死んでしまうのではなかろうかwww
:これならガチで1位までいけるかも!
:とはいえ、まだまだ1位までは遠い!
:応援してるぜ!
:がんばれい!
「応援ありがとうございます」
視聴者からの声援を受けると、レイカは笑いながらぺこりと頭を下げる。
もっと配信をがんばらないといけない。そう思うと身体が熱くなり、気力が燃えあがった。




