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激情のこもった叫び声をまき散らすと、ルリアのまとう魔力が爆発的に増大する。『禁忌の鎧』から余すところなく力を引き出してきて、先ほどより何倍も強化された黒炎と黒雷を放ってきた。
数多の炎と雷が激流となって飛びまわり、炸裂音を響かせて、あちこちにクレーターを生み出していく。天井や壁に亀裂が刻まれて、大地が不安定に震えた。
「真子先輩。振り落とされないように、しっかりとつかまっててください」
「え?」
真子の返事を待たずに、レイカは速度をあげて疾走する。黒い炎と雷の動きを読みながら的確に避けていく。そのスピードに振りまわされている真子は「いぎゃあああああああああ!」とおんぶされたまま泣き叫んだ。
:またカメラ視点の映像がすごいことに!
:高速で動きまわってて迫力やべぇな!
:黒い炎と雷があちこちで炸裂してる!
:明らかにさっきよりも威力が増してるぞ!
:ボス部屋が破壊されていく!
:天井の一部が崩落してる!
:ルリアちゃんの戦闘力あがってないか!
:寝取られた聖剣を見てブチキレた!
:やはり聖剣NTRの傷は癒えてなかったかwwww
:聖剣を取り出したの失敗だろwww
:もしかしてレイカちゃん、これを狙って聖剣を取り出したんじゃないかwww
:たぶんそうだwww 撮れ高をつるくために意図的に勇者を煽ったwww
:意図的に勇者をパワーアップさせたのかwwww
:パワーアップさせるんじゃないwww
:パイセンおんぶされたまま泣き叫んでるんですがwwww
:めっちゃ怖いだろうなwww
:超高速の凶悪ジェットコースターに乗ってるようなものだからwwww
:真子ちゃんナイスリアクションwwww
高速で広間を駆けまわると、黒い炎と雷の激流がレイカを狙い澄ましたかのように飛びかかってくる。
レイカは急停止する。黒い炎と雷が押し寄せてくるのにタイミングをあわせて、左手に握った聖剣で十字を描く。黄金の刃によって、黒い炎と雷は斬り裂かれて消え去った。
:斬った!
:聖剣で飛んできた炎と雷を斬った!
:速すぎて見えんかった!
:黄金の剣の残像っぽいのが見えたと思ったら、黒い炎と雷が打ち消された!
:レイカさま剣技もすげぇ!
:完全に勇者よりも聖剣を使いこなしてるなwww
:左手なのに聖剣を上手く使ってる!
:利き腕ではないっぽい?
:前にカップ麺を食べてたときは右手にハシを持ってたはず!
:レイカちゃんは右利きだけど、左手でも簡単な漢字ならきれいに書けます。難しい漢字は、そもそもわかんないので書けません(お母さん)
:お母さんwww それすごいのかすごくないのかよくわかりませんwww
:左手で簡単な漢字をきれいに書けるのはすごいと思うがwww
:難しい漢字はわからないので書けないwww
:勉強は苦手みたいだからwwww
:レイカちゃんにとっては異世界で生き延びるよりも勉強のほうが難しいwww
スマホに表示されているコメ欄では、勉強が苦手であることをイジられていた。レイカはムググッと唸って、複雑な気持ちになる。
ちょっと集中力を乱されたけど、レイカは左手に握った聖剣から魔力を引き出していく。黄金の刃が輝きを強めると、思いっきり振り下ろした。
聖剣から光の斬撃が放たれて、大気を裂きながら飛んでいく。
すかさずルリアは黒い炎と雷を撃ち出すのを中断し、真横に跳んで回避してきた。
光の斬撃はボス部屋の奥にある壁面にぶつかって炸裂し、天井まで届く大きな切り傷を刻みつける。
レイカは距離を置いたまま、ルリアと視線をかわす。
「あまり戦闘を長引かせては、視聴者が飽きてしまいますからね。そろそろ決着をつけましょう」
終わりが近いことを告げると、レイカの周りにある空間が波打つように揺らいだ。そこから赤い剣や青い剣、白銀の剣や漆黒の剣といった、ありとあらゆる聖剣と魔剣が飛び出してくる。
【アイテムボックス】から取り出された数十本の伝説の剣が、レイカの周辺に展開される。
:めっちゃ剣が出てきたぁ!
:どれもこれも凄まじい魔力をまとってる剣だ!
:ぜんぶ異世界にあった伝説の剣か!
:魔人のときよりも出してる数が多いぞ!
レイカはクスリと微笑むと、身体から魔力を発する。
周りに浮遊していた数十本の剣たちが、レイカの頭上に引き寄せられるように浮かびあがっていった。
ありとあらゆる聖剣や魔剣が集まっていくと、束ねられて重なりあう。
左手に握っている『勇者の聖剣』も頭上に向かって浮かんでいき、他の剣たちと同じように収束していく。
展開していた全ての剣が、一つになろうとしていた。
:レイカちゃんの周りに浮かんでた数十本の剣が……!
:頭上に集まっていってる!
:一体なにが起きてるんだ!
ガラスの楽器を鳴らしたような美しい音色が奏でられると、閃光が弾ける。
数多の剣があわさり、特大の魔力をまとった究極の一振りが生み落とされる。
神聖さと邪悪さを兼ね備えたその剣は、虹色に輝いていた。
頭上から降りてくる虹色の剣を、レイカは左手でつかみとる。
「異世界にあった、あらゆる伝説の剣を凝縮させた一本。仮に名づけるとしたら、『至高の聖魔剣』といったところでしょうか」
手にした虹色の剣を軽く振るう。それだけで莫大な魔力が放たれて、辺りで突風が巻き起こり、砂煙が舞いあがった。
レイカに背負われている真子は、理解を超えた現象を間近で目撃して、身体の震えが止まらなかった。
:たくさんあった剣を合体させたあああああああ!
:展開されてた剣はどれもこれもすごい魔力をまとってたけど、それがぜんぶ合わさって一つになった!
:やべぇぞ、あの虹色の剣!
:桁違いの魔力があふれてる!
:隣で一緒に配信を見てる探索者が、何が起きたのか理解できずに魂が抜けたようになってる!
:探索者だけど……いや、ガチで意味がわからん……!
:真子ちゃんもビビってるな!
:レイカさま、マジで何したんだ!
数十本もあった伝説の剣が一つになったのを見て、視聴者たちが動転している。
スマホ画面に表示されているコメントを読むと、レイカはうれしそうに鼻を鳴らした。
「今のは【合成魔法】を発動させて、異世界で入手したいろんな剣を一つに合体させたんです。錬金術系の漫画とかゲームにあるやつですね」
:合成魔法!
:そんなことまで出来ちゃうのかよ!
:相変わらず説明がフワッとしてるなwwww
:たぶんレイカさんもよくわかってないwwww
:錬金術系の漫画とかゲームってwwww
:武器と武器を合体させたのか!
:どれも伝説級の聖剣や魔剣っぽかったのに、それを一つにした!
:スキルレベルがとんでもなく高くないとできない芸当だろ!
レイカの説明にコメント欄が沸き立つ。同接もコメント数も、すごい勢いで伸びていく。
虹色の剣に脅威を感じたのか、ルリアは腰を落として身構えていた。煮え立つような黒い炎を燃やし、空気を引き裂くような黒い雷を弾かせると、それらを自身へとまとわせる。
漆黒の鎧を装着したルリアが、黒炎と黒雷に包み込まれた。
:炎と雷をまとった!
:勇者の身体が黒い炎と雷を帯びている!
:ていうか勇者の魔力量がめちゃくちゃあがってるぞ!
ルリアは両目を凄めて、レイカを睨みつける。
打倒すべき敵に、狙いを定めてくる。
「ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!」
戦闘意欲を最大限まで高めて雄叫びをあげると、地面を蹴って突進してきた。
その肉体に黒炎と黒雷をまとい、猛然と迫ってくる姿は、まさに破壊の流星だ。触れたモノを容赦なく燃やしつくす、莫大なエネルギーの塊と化している。
「ルリアさん。その鎧から解放してあげましょう」
レイカは久しぶりに会った旧友に対するような、やわらかな微笑みを浮かべて言った。
「では、行きますよ。聖魔剣」
そう呼びかけると、左手に力を行き渡らせる。
『至高の聖魔剣』を構える。
真正面から突っ込んでくるルリアに、虹色の剣を向けて……。
「どりゃああああああああああああああああああああああああああです!」
聖魔剣を、思いっきりブン投げた。
:えええええええええええええええええええぇぇぇぇ!
:ウッッッソだろ!
:投 げ ん な !
:やっぱりブン投げちゃうのかよwwwwwww
:やるかもとは思ってたけど、本当にブン投げやがったよこの血塗れ女wwww
:あんなすごい剣をブン投げちゃうとか頭おかしいだろwwww
:この子は伝説の剣は投げなきゃ気が済まないのかwwww
:ぜったい使い方まちがってるwwww
:驚きすぎてアゴが外れそうになったwwwww
:リアルに椅子からズッコケちゃったよwwww
:聖魔剣涙目wwww
:ブン投げられるために生まれてきた聖魔剣wwww
:レイカアアアアアアアア! ちゃんと使いなさい!(お父さん)
:確かにちゃんと使ってほしかったwwww
:お父さんに同意www
:さすがね、レイカちゃん!(お母さん)
:なにがさすがなんだwwww
:いやまぁ、さすがだわwwww
投擲された聖魔剣は虹色の残光を引きながら、猛スピードで飛来していく。
狙い違わず突進してきたルリアに直撃すると、虹色の輝きが爆裂音を立てて弾け飛ぶ。ボス部屋全体が鳴動し、色鮮やかな光彩が周辺の空間にひろがって、美しくいろどった。
レイカに背負われながら、その神秘的な光景を目の当たりにしていた真子は、まばたきするのも忘れて見入っていた。
:破壊力やべええええええええええええええ!
:画面がすごい光につつまれてる!
:まぶしい!
:いろんな属性の魔力がこめられた光が輝いてる!
:ルリアちゃんは、どうなったんだ……?
虹色の輝きが徐々に縮小していって、消えてなくなる。
ボス部屋は静寂に満たされた。
中央には、聖魔剣が地面に突き刺さっている。
そして奥のほうにある壁にもたれかかるようにして、ルリアが倒れていた。身につけていた『禁忌の鎧』は大破しており、黒い破片のみが腕や足にはりついている。
ルリアの身体がわずかに動くと、「けほっ」と口からかすかな息がもれる。




