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 レイカが自身の演技力のなさを悔しがっていると、更なる異変が起きる。


 ダンジョンそのものが震えるような轟音が響いた。それにともない、地面が隆起する。さきほど這い出てきたアンデッドたちを吹き飛ばしながら、ふくれあがった大地が弾ける。


 地中から飛び出してきたのは、紫色の巨体をしたドラゴンだ。背中から生えた両翼は虫食い状態でボロボロになっており、長い首と尻尾も表面が欠けている。その肉体は腐敗していて、むせるような死臭を漂わせていた。


:ドラゴン!

:全身が腐ってる!

:ドラゴンのアンデッドだあああああ!

:ドラゴンゾンビ!

:でっけえええええええ!

:レイカさまの呪いの首輪のせいで、ドラゴンゾンビまで呼び寄せちゃったんですけどおおおおおお!

:このダンジョンはこんなのまでいるのかよ!


 ドラゴンゾンビは他のアンデッドたちと同様に、『呪いの首輪』の効果によって凶暴化していた。暗澹とした双眸に強烈な殺意をたたえながら真子を睨みつけると「グガアアアアアアアアアアアアア!」と濁った咆哮をまき散らしてくる。


 真子を狙っているのはドラゴンゾンビだけではない。ドラゴンゾンビの出現によって吹き飛ばされて転倒していた大量のアンデッドたちも、起きあがると真子に敵意を向けてくる。


「無理っ! こんなん無理だからああああああ!」


 さすがにまずいと即決した真子は、恐怖心に駆り立てられるようにこの場から逃走する。モンスターたちは自分だけを狙ってきているので、レイカを置き去りにしても襲われる心配はないと判断して、真子は来た道を引き返すために駆け出した。


「あっ、真子先輩ダメですよ」


 レイカのかたわらにある空間が光を発する。そこから、魔力によって具現化された青い光の鎖が生える。逃走をはかる真子に向かって鎖は伸びていき、胴体に巻きついた。


 ビーンと伸びた鎖につなぎとめられた真子は「みぎゅ!」と声をあげて、強制的にブレーキをかけられる。


:真子ちゃんwwww

:逃走失敗www

:鎖でつなぐなwwww

:ヒュドラを倒した後に出してた鎖だwwww

:鎖に引っぱられてる大型犬みたいになってるなwww

:マコ犬再びwww

:あの青い光の鎖って、魔力で具現化したものか?

:おそらくそうだ! しかもかなり高い魔力が込められてて頑丈っぽい!

:まちがいなく真子ちゃんの力ではちぎることができないwwww

:なんてこった! 真子ちゃん絶対に逃げられないじゃねぇかwwww


 真子が鎖に拘束されると、ドラゴンゾンビやアンデッドの群れが「グガアアアアアアアアアアアア!」と叫び声をあげて、大挙して押し寄せてくる。何十体ものアンデッドたちが、『呪いの首輪』を装着した真子に殺意を向けて雪崩れ込んできた。


「いやああああああああああああああああああああああ!」


 迫り来るアンデッドの大軍に真子は絶叫する。必死になって逃げようとするが、身体に巻きついた鎖がビーン、ビーン、ビーンと伸びるだけでぜんぜん前に進めない。


:真子ちゃん鎖でつながれてるから逃げられないwww

:大量のアンデッドが迫ってきてるのに、こんなん怖すぎるだろwww

:せめて鎖は外してやれよwwwww

:本格的に真子ちゃんが犬にしか見えなくなってきたwwww

:ご主人様に鎖で引っぱられてる犬みたいだwwww


 猛然と迫ってくるアンデッドたちを前にすると、レイカは口元に笑みを浮かべる。


 レイカのかたわらにある空間が揺らぐと、そこに美しい目鼻立ちをした女性が現れる。長い白髪に、純白のローブをまとった華奢な身体。その全身からは、神秘的な黄金の光が放たれていた。


 宙に浮かぶ女性の神聖なオーラに、突進してきたアンデッドやドラゴンゾンビは硬直して動きを止める。


:なんだあれ?

:レイカさんがなんか女の人を呼び出したぞ!

:なんて神々しい女性なんだ……!

:外見は異世界人っぽい!

:そもそもアレは人間なのか?

:あの女の人も【アイテムボックス】から出したの?

:あんなに凶暴化してたアンデッドたちが、ひるんで立ち止まったぞ!


 レイカが召喚した黄金の光をまとう女性は何者なのかと、疑問のコメントが書き込まれていく。


 レイカは呼び出した女性のほうを見ながら、その正体を明かした。


「彼女は光の女神さまです。異世界では神殿に祭られていて、多くの人々に崇められていましたね」


:光の女神さま!

:異世界の女神さま!

:それでこんな神々しい姿をされておられるのか!

:画面越しに見てるだけでも崇めたくなってしまう!

:上位存在だけあって、存在感が半端ないな!

:凶暴化してたアンデッドたちが臆するわけだ!


 レイカが説明すると、コメントが増加していった。視聴者たちは画面越しにだけど、美しい女神の姿に見入っているようだ。


 必死に逃げようとしていた真子も、女神の存在に視線を奪われている。


:ん? でもなんでレイカちゃんが異世界の女神さまを所持してんだ?

:あれ? 言われてみればなんでだ?

:当然のように女神さまを呼び出したけど、どうしてそんなことができるんだ?


「それについては、なにも不思議がるようなことではありませんよ」


 なぜレイカが光の女神を呼び出せたのかと、視聴者たちが疑念を抱いていた。


 レイカは自分のドローンカメラを見あげると、胸の前でグッと拳を握って、自信満々に答える。


「テイムしました!」


:おい小林www

:こらぁ小林wwww

:なにテイムしてんねんwww

:異世界の人々が崇めてる女神さまをテイムすんなwww

:それテイムしちゃっていいモノなのかwww

:テイムしてこっちの世界まで連れてきちゃったのかよwwww

:連れてきたらダメなヤツじゃないのかそれwwww

:レイカさんテイマーだったwwww

:そっち系のスキルも持ってるのかよwwww

:異世界「女神さまを返して……」

:うちの娘が異世界の方々に多大な迷惑をかけてしまっている……(お父さん)

:ホントそれなwww

:女神さまをこっちの世界に持ってきちゃったよwwww

:女神さまもレイカちゃんに飼われるのなら本望ね!(お母さん)

:飼うって、ペットじゃないんだからwww

 

 レイカが光の女神を使役できる理由を話すと、コメント欄が震撼していた。自宅でこの配信を見ている新治は、また心労が溜まったようだ。




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神をテイム!? 異世界はもう滅んでない? あとないのは演技力だけでなく良識と常識もでは?とボブは訝しんだ
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