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準備が整ったので、レイカは目の前にいるアンデッドの群れに対処する。
「それでは光の女神さま。お願いします」
レイカが呼びかけると、浮遊する光の女神は両腕を左右へとひろげた。
その身に帯びた光を強めると、女神は黄金の輝きを拡張させるように辺り一帯に向けて放出する。
:女神さまがめっちゃ光ってる!
:光がひろがっていくぞ!
:なんかアンデッドたちの様子が変だ!
女神が放った黄金の光をあびせられると、アンデッドの群れがうめき声をあげて身もだえし、苦しみだした。
しゃがれたうめき声が大きくなっていくと、何十体といるアンデッドたちの造形に異常が起きはじめる。
バギッ、ボキッ、ガキィと音を立てて、アンデッドたちの首や手足があらぬ方向にねじ曲がっていく。巨体のドラゴンゾンビも、長大な首と尻尾がおかしな方向に曲がっていった。
そしてアンデッドたちの身体がブクブクブクブクと風船みたいにふくらでいき……パァン、パァン、パァンと破裂音を鳴らすと、肉片となって弾け飛んだ。
アンデッドの群れが弾け飛んでいくと、ドラゴンゾンビも巨体のあらゆる部位が膨張していく。長い首や尻尾、胴体が大きくふくらんでいき、ドバアアアアアアアアアアアアアアアンと破裂して細かな肉片となって飛び散った。
それを間近で見ていた真子は、頭のなかが真っ白になって……。
「いやあああああああああああああああああああああああ!」
真子は両目を限界まで見開くと、絶叫した。
:うぎゃああああああああああああああああ!
:こぇえええええ!
:ドラゴンゾンビとアンデッドたちが破裂したあああああああああああ!
:粉々の肉片になって飛び散ったんですけどおおおおおおおおおおおおおお!
:これを近くで見せられたパイセン絶対トラウマになっただろ!
:なんなら画面越しに見てる俺もトラウマ刻まれちゃったよ……
「今のは女神さまの浄化の光ですね。アンデッドには効果バツグンのようです」
飛んできた肉片をすべて避けながら、レイカは訳知り顔でヨシヨシとうなづいた。
:女神さまの浄化がグロイんですが!
:女神の浄化=肉片にして消し飛ばす
:異世界の女神さまコワイ……
:あれを見て平然としてるレイカさんもやべぇな……
:あんなにいた大量のアンデッドを一瞬で葬り去った!
レイカは周辺を見まわす。アンデッドを一体残らず始末できたようだ。
敵が全滅したことを確認すると、レイカは後ろを振り返った。
「真子先輩、もう心配いりませんよ。…………あれ?」
もう大丈夫だと、真子に呼びかける。
が……真子は白目をむいて、口からブクブクと泡を吹き、地面に倒れて気絶していた。装着している鎧には、先ほど飛び散ったアンデッドたちの肉片が少しだけ付着している。
:パイセンwwww
:うん、まぁ気絶しちゃうよねwwww
:さすがに怖すぎたかwww
:大量のアンデッドたちが、いきなり弾け飛んだらねwwww
:さっきの光景を現場で見せられたら精神が壊れるwww
:鎧に肉片がついてるのかわいそうwwww
レイカが「う~む」と困っていると、飛び散ったアンデッドたちの残骸が粒子状になって消えていった。真子の鎧に付着している肉片も霧散していく。
そしてアンデッド化したモンスターたちの爪や牙が残されて、たくさんの素材をドロップする。
:アンデッドたちが消えてく!
:この無残な光景が消えてくれてホッとした!
:ドロップアイテムが結構出てきたな!
:アンデッドからのドロップアイテムとか、なんかちょっと拒否感があるな……
アンデッドの残骸が消え去ると、レイカはかたわらにいる光の女神を見あげる。
「お疲れさまです、女神さま」
ねぎらいの言葉をかけると、光の女神は笑い返してくる。その神々しい姿が透明になっていき、消えてなくなる。
とりあえずレイカは、素早い動きで周辺を歩きまわって、落ちているドロップアイテムを回収する。拾った素材は、全て【アイテムボックス】のなかに入れていった。
:ドロップアイテム回収してるwwww
:めっちゃ動きはぇええwwww
:ビュンビュンビュンって感じで落ちてる牙や爪を拾ってるwwww
:アンデッドの牙や爪なのに、特に嫌がることなく拾ってるなwww
:そこは異世界で鍛えられたからか?
:レイカちゃんは小さい頃から虫とか爬虫類とか平気で触れる子だったものね(お母さん)
:アンデッドは虫や爬虫類とは違うだろwww
落ちているドロップアイテムを回収し終えると、レイカは気絶している真子のもとまで歩み寄っていく。
真子の首元にそっと右手を添えると、白い光が発せられた。
カチッと音が鳴ると、『呪いの首輪』が外れた。
:首輪が取れた!
:なんでや!
:呪われてるから取れないはずなのに!
:あんなに真子ちゃんが引っぱっても取れなかった首輪が外れた!
:レイカさまが手から白い光を放っていたけど!
「今の白い光は【解呪魔法】です。首輪の呪いを解除して外しました」
レイカはニコニコと笑いながら説明すると、手に持っている『呪いの首輪』を【アイテムボックス】のなかに収納する。
:外そうと思えば外せたんかいwww
:なんでもっと早く外してやらなかったんだよwww
:外してあげれば真子ちゃんが命を落とすことはなかったのに……
:↑死んでねぇよwww
それからレイカは、真子の身体に巻きついている青い光の鎖を消して拘束を解いた。
地面に横たわっている真子の腕をつかむと、レイカはしゃがみこんで背中を向ける。意識のない真子をおんぶすると、「よいしょっ」と言って立ちあがった。
「どういうわけか、真子先輩が気を失ってしまいましたね。ですが、立ち止まってはいられません。先に進んでいきましょう」
:気絶したのはあなたのせいでしょwww
:犯人は小林wwww
:ていうかこのまま配信続けんのかいwwww
:気絶したパイセンをおんぶしてるんだがwwww
:真子ちゃんが白目をむいたまま、レイカちゃんの肩にグッタリと顔をもたれさせてるwwww
:なんだこれwwww
:パイセン死体みたいになってんぞwwww
:真子ちゃんもアンデッドになってしまったwwww
:絵面からの犯罪臭がすごいwwww
:死体を運ぶゲームかな?
:この部分をあとで真子さんが見て、どんな気持ちになるのか想像したら申し訳ないよ……(お父さん)
:真子ちゃん羞恥心で顔真っ赤になるなwww
:またパイセンに黒歴史が刻まれたwww
:ちゃんと気絶したお友達を運んであげるなんて、レイカちゃんやさしい!(お母さん)
:気絶させたのも娘さんですがwwww
レイカは真子の足から左手を離すと、手首の辺りに装着しているスマホ画面を見てコメント欄をチェックする。
意識のない真子をおんぶしている姿はとても奇異に映っているようで、コメントの流れが止まらなかった。
:レイカさま! 同接が二百五十万いってますよ!
:ホントだ!
:アンデッドやドラゴンゾンビが地中から出てきたことや、光の女神さまを召喚したあたりから急激に伸びたみたいだ!
:現在ランキング9位までのぼってるぞ!
:真子ちゃんの配信もランキング上位までのぼってきてるな!
「二百五十万……! それに9位……!」
視聴者から伝えられた衝撃の数字に、レイカはドキリとした。
思わず真子の足から右手まで離してしまい、ガシャンとおんぶしていた真子が地面に落っこちる。
:パイセン落ちたwww
:真子ちゃん落としたwwww
:パイセンを落とすんじゃないwwww
:落とし物→パイセンwww
:ビックリしちゃったんだねwwww
:落ちても真子ちゃん目覚めないなwwww
「す、すみません真子先輩! 同接とランキングに驚いてしまって……!」
レイカはアワアワとしながら謝ると、気絶している真子をまたおんぶする。
心臓の鼓動は大きく鳴り響いていて、緊張で身体も熱いけど、レイカは笑顔になってドローンカメラをあおぎ見た。
「ランキング10位内までのぼってこられたのは、応援してくれるみなさんのおかげです! このままの勢いで、念願だった1位を取りにいきます!」
:うおっしゃああああ! レイカさんが1位を取れるように応援するぜぇ!
:がんばれえええええ!
:この調子ならマジでランキング1位を狙える!
:1位が射程圏内に入った!
:あともう少しだ!
:レイカさまなら、ランキング1位だって殺せるはず!
:ランキング殺すなwww
:気絶したパイセンをおんぶしたまま意気込んでるのおもしろいんだがwwww
「それでは、最深部を目指していきましょう!」
レイカは気合いのこもった声をあげると、意識のない真子をおんぶしたまま、ダンジョンの奥に向かって歩みを進めていった。




