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:なんか聞こえてくるな?

:歌?

:いや、ちょっwwww この歌wwww

:聞いたことあるwwww

:最近めっちゃ聞いた歌だwwww

:ダンジョンハンターの主題歌やんwwww

:てことはwwww


 映像のなかから聞こえてくるのは、アニメ版ダンジョンハンターのオープニング主題歌だった。


 異世界で、この曲を歌えるのは一人しかない。誰がやって来たのかは、明白である。


 すぐそこまで歌声が近づいてくると、ルリアは青ざめながら叫ぶ。


「これは……魔曲!」


:魔曲!

:魔曲wwww

:なんでだよwwww

:魔曲ってなんだwwww

:なんでダンジョンハンターの主題歌が魔曲呼ばわりされてんだよwwww

:ただのアニソンですwwww


 レイカは困ったように眉根を寄せると、事情を説明する。


「わたしは異世界でもよくダンジョンハンターの主題歌を歌っていましたからねズゾオオオオオオオオ! ルリアさんと会うときも歌っていましたからジュルルルルルルルルルル! それでダンジョンハンターの歌が魔曲呼ばわりされるようにズズズズズズズズズズッ! なったんですよズゾオオオオオオオオオオオオ!」


:だからカップ麺を食うなwww

:まだカップ麺を食うつもりかwwww

:頼むから喋るか食べるか、どっちかにしてくれwwww

:すまんwwww 説明が頭に入ってこんwwww

:とりあえず、レイカさまのせいでダンジョンハンターが異世界で風評被害受けてるのはわかったwwww

:レイカちゃんが異世界で歌ったせいで、ダンハンの主題歌が魔曲と呼ばれるようになったのかwwww


 レイカはフゥと一息つくと、「ごちそうさまでした」と手を合わせて、空になったカップ麺をテーブルの脇に置いた。


 映像のほうでは、ダンジョンハンターの主題歌を歌っているレイカが、青いローブ姿で中央広場に悠然とやって来ていた。


「このときは宿屋でグッスリ眠っていたんですけど、なんだか外が騒がしくて、目が覚めたら都市が火の海になって住民が逃げまわっていましたね。それで広場のほうに大きな魔力を感じたので、来てみたんです」


 レイカは映像を見ながら、広場を訪れた経緯を話す。


:この騒ぎのなかでグッスリ寝てたのかよwww

:都市が火の海になるまで気づかないっておかしいだろwwww

:どんだけ神経図太いんだwwww

:レイカちゃんやっと出てきたああああああああ! かわいいいいいいいいい! うちの娘です! あれはうちの娘ですうううううう!(お母さん)

:ママwww

:娘なのはわかってるからwwww

:ママ落ち着いてwwww

:ちょっ……! 母さんがリアルでも興奮して暴れまわってる!(お父さん)

:現実でも荒ぶるお母さんwww

:娘のことになると、お母さんテンションが壊れるなwwww

:お父さん大変だなwww


 レイカが中央広場に踏み込んでくると、ルリアは獅子王に抱いていた敵意を全てレイカのほうにそそいでくる。


 ルリアは表情を引きつらせて、黄金に輝く聖剣をレイカに向けてきた。獅子王と対峙していたときよりも、明らかに警戒心を強めている。


「お、おまえは……魔道王ダークネスカイザー!」


「えっ! うそっ!」


 ルリアがその名を口にすると、レイカは辺りをキョロキョロと見まわす。


 そしてすぐにハッとして、「あっ、そうでした」とつぶやいた。


 レイカはキリッとした顔つきになると、胸元に手を添えてこくりとうなづく。


「はい、そうです。わたしが魔道王ダークネスカイザーです」


:忘れてたwww

:偽名を忘れてたなwww

:ダークネスカイザーって呼ばれて、ちょっと探してたぞwwww

:これ本名を名乗ってたほうがよかっただろwww


 偽名を忘れていたことについて、視聴者からの指摘がコメントになって飛んできた。


「知らない人に本名を教えたくなかったので、こればっかりは仕方ないですね。それにしても、いきなりダークネスカイザーって呼ばれたら驚いて、つい探してしまいますね」


:やっぱり偽名使ったの失敗だろwwww

:せめて別の偽名にしたほうがよかったなwwww

:漫画キャラは実在しないんだから、名前呼ばれて探すのもどうかと思うぞwww


 流れていくコメントの大半は、レイカの行動がおかしいと主張するものだった。


 ルリアは青い瞳に恐怖心をにじませながら、レイカを睨みつけると、悲鳴じみた声をあげてくる。


「ダ、ダークネスカイザー! こ、今度は一体なにをするつもりだ! わ、わた、わたしに、わたしに、なにをしようというんだ!」


:めっちゃ警戒されとるwwww

:出会った直後に攻撃されたからなwww

:ルリアちゃんの反応からするに、他にもたくさんヒドいことされたみたいなんだがwwww

:レイカさん、ルリアちゃんに一体なにをしたんだwww

:ルリアちゃんが警戒してるのに、レイカさまは不思議そうに首をかしげてるwww

:レイカさま「この人、なに言ってるんだろう?」

:マジでそんな感じだなwwww

:みんな獅子王さんのことも忘れないであげてwwww

:獅子王さんが完全に空気にwwww


 ルリアが警戒心を高めて身構えるが、レイカは怪訝そうな顔をして立っているだけだ。そして獅子王は置物みたいになっていた。


「え? あっ、な、なにが……!」


 異変に気づくと、ルリアは目を見開いて身を竦ませる。 

 

 両手で握りしめている黄金の聖剣が、ガタガタガタと震えだした。


「ど、どうしたというんだ! なんで聖剣が……」


 ルリアは両手に力を込めて押さえ込もうとするが、聖剣の震えは激しさを増していくばかりだった。力ずくで押さえようにも、押さえきれなくなる。


「なっ! ちょっ……待て!」


 そしてルリアの両手から、聖剣が飛び出すようにすっぽ抜けた。宙を駆けていく聖剣は、一直線にレイカのもとまで飛来していく。


 飛んできた聖剣を、レイカは右腕を軽く振るって、難なく柄をつかんでキャッチしてみせる。


 レイカは右手に握った聖剣を構えると、刃に帯びた黄金の輝きを見つめる。


「この聖剣は主を選ぶんですけど、どうやらルリアさんよりも、わたしのほうが持ち主に相応しいと判断したようですね」


 レイカは久しぶりにカップ麺を食べた充足感に満たされながら、ホワホワとした穏やかな面持ちで映像内の出来事を解説する。


「そ、そんな……! エクスちゃあああああああああああああああん!」


 聖剣がレイカのもとに渡ると、ルリアは号泣しながら右手を伸ばしていた。


:あの聖剣そんな名前だったんかwwww

:エクスちゃんwwww

:あんなかっこいい聖剣につける名前じゃないだろwwww

:なに勇者から聖剣を奪ってんだwww

:聖剣寝取られたwww

:聖剣NTRwwwww

:聖剣NTRってなんだwwww

:ルリアちゃん、ついさっき聖剣を覚醒させたばかりなのに、もう寝取られたwwww

:回想で師匠や仲間まで出したのにwww

:そのルリアちゃんの周りにいる半透明の回想キャラたちが困ってるwww

:そういやまだ回想キャラの人たち消えてなかったなwww

:回想キャラの人たちも、まさか聖剣が寝取られるとは予想してなかったろうよwwww

:…………(先輩)

:パイセンwww

:無言wwww

:さっきまであんなにテンション高かったのにwww

:真子ちゃんもダメージ受けてるなwww

:ここにも聖剣NTRの被害者がwwww

:……レイカ、なんてことを……(お父さん)

:お父さん頭かかえてそうだなwwww

:娘さんがやったことの責任を取ってくださいwwww

:さすがレイカちゃんね! 勇者から聖剣を奪うだなんてすごいわ!(お母さん)

:お母さんは喜んでるようだがwww

:褒められることじゃないだろwwww


 聖剣を手にしたレイカは、モンスターたちの首領である獅子王に視線を向ける。


 レイカの眼差しに射ぬかれた獅子王は、ビクリとした。


 獅子王は苦々しげに唸り声をもらす。逃げたくても、レイカからは逃れられないことはわかっているようだ。


「グルガアアアアアアアア!」


 負傷した肉体を奮い立たせて、獅子王は最後の悪あがきとしてレイカに踊りかかってくる。


「てい!」


 レイカが聖剣を振るう。その刃から膨大な魔力が込められた黄金の斬撃が放出された。


 昼夜を逆転させるほどの輝きを発する光の斬撃は大地を焼き焦がし、獅子王を呑み込むと、肉片さえ残さずに消し飛ばした。


:なんか光の斬撃が出てきたぁ!

:威力すげぇ!

:獅子王瞬殺!

:ルリアちゃんが使えなかった技を使えてるwww

:勇者よりも使いこなしとるwwww

:ヒュドラ倒したときの魔剣と似たような斬撃を飛ばしてる!


 獅子王を瞬殺すると、コメント欄が沸騰したように盛りあがる。


 映像内のレイカは、大きな焦げ跡がつけられた広場の地面を見つめながら、残念そうにボソリとつぶやいた。


「ここ、いい撮れ高だったでしょうね……」


:撮れ高www

:異世界でも撮れ高のこと考えてたwww

:異世界じゃ配信できなかったからwwww

:配信やりたかったんだねwwww


「コメントにもあったように、異世界では配信ができなかったので、もったいないなと思っていましたね。いまこうして、みなさんに異世界の映像を届けることができてよかったです」


 レイカは微笑みながら、ウンウンとうなづく。


:俺は異世界の映像を見れてうれしいよ!

:レイカさまが帰ってきてくれてよかった!

:聖剣を寝取られたルリアちゃんからすれば、絶望しかないだろうがwwww

:そのルリアちゃんが映像内で愕然としてるwwww


 レイカが自分よりも聖剣の力を引き出しているのを目の当たりにしたルリアは、またしてもガクリと地面に膝をつく。


「そ、そんな……。エクスちゃんが……」


 獅子王に追いつめられたときでさえも堪えることができていた心が、ポッキリと折れていた。


 周りにいる半透明の回想キャラたちも、声をかけられずに困っている。


:勇者が絶望しとるwwww

:曇らされたwwww

:相棒だった聖剣とのイチャイチャを目の前で見せつけられたらなwwww

:脳が破壊されたかwwww

:回想キャラたちがすっごい気まずそうなんだがwww

:回想キャラたち「え? どうするのこれ?」

:ルリアちゃん……(先輩)

:真子ちゃんまで落ち込んでるようですがwwww




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― 新着の感想 ―
この調子で世界中の魔剣、聖剣をNTRしたのか しかもNTRれた剣たちは投擲武器扱い 元の持ち主は泣いて良い
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