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映像のほうでは、瞳に涙を浮かべたルリアが語りだしていた。
「……忘れていたよ。わたしは一人ではないということを。心のなかには、いつだって仲間たちがいる。それに大切な相棒も」
ルリアは小さな笑みを浮かべると、右手に握りしめた聖剣を見る。戦意を取り戻すと、ボロボロの身体にムチ打って立ちあがった。
ルリアが再燃すると、それに応えるかのように、手にした聖剣が神々しい黄金の輝きを放ってきた。
「こ、これは……!」
黄金の光があふれると、聖剣がまとっていた魔力が何倍、何十倍にもふくれあがっていく。
:なんだ!
:めっちゃ聖剣が光ってるぞ!
:まぶしい!
「ルリアさんが聖剣を覚醒させたようです。おそらくルリアさんの強い意志が、聖剣の力を引き出したんでしょう」
レイカは映像を見ながら、何が起きているのかを説明する。
輝きを強める聖剣を両手で握り直すと、ルリアは口元に笑みを浮かべる。その笑顔には、ずっと旅を共にしてきた相棒への深い親愛が込められていた。
「かつてないほどに、おまえとの確かなつながりを感じる!」
ルリアは黄金に輝く聖剣を構えて、獅子王を見据える。
「グガッ……!」
ほんの数秒前まで格下であるはずだったルリアが、今では自分を凌駕するほどの力を有していることに、獅子王は戦慄する。
:獅子王がひるんでるぞ!
:覚醒した聖剣にビビってる!
:一気に形成逆転だな!
聖剣の輝きを前にして、獅子王は思わず後ずさりしてしまう。そんな己を恥じたのか、牙を剥いて悔しそうに唸っていた。
「グガアアアア!」
獅子王は咆哮をあげると、タテガミを逆立てて突進してくる。
ルリアは凜とした面持ちになって、迷わずに聖剣を振るう。黄金の斬撃が突っ込んできた獅子王を斬り裂いた。鎧を砕き、頑強な肉体に傷を負わせる。
「グルルルルッ……!」
獅子王は鮮血が流れる胸元を手で押さえながら後退する。その表情は追いつめられた獣そのものだ。
今の一撃によって、獅子王は自身の敗北を悟っていた。
:いいよいいよいいよ! 勇者ああああああああああ! いいよおおおおおおおおおお! ルリアちゃあああああああああああああん! かっこいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!(先輩)
:パイセンうっせwwww
:真子ちゃんうるさいwww
:テンションあがりすぎだろwww
:確かに今のはかっこよかったがwwww
:覚醒シーンとか燃えるからなwwww
:実は俺もテンションがあがってる!
:ちゃんと時系列順に見てたら、登場人物との関係性とかもわかって、もっと胸熱なシーンだったんだろうなwwww
:レイカさんのせいで、いろいろ台無しだwwww
:レイカちゃんの登場まだぁ~(お母さん)
:母さんがソファーで足を伸ばしてバタバタさせてる……(お父さん)
:お母さんヒマなんかwww
:いまの見てなんも感じないお母さんwww
:勇者に興味なさすぎだろwwww
ルリアが聖剣で獅子王にダメージを与えると、コメントの流れが速まる。このシーンは、視聴者たちも見ててテンションがあがるようだ。
「こうしてルリアさんはジュルルルルルルルルルル! 聖剣のズゾオオオオオオオオ! 力を覚醒させたことでジュルルルルルルルル! 窮地を乗り切りましたズズズズズズズズズズッ! うめぇえええええええええええです!」
:!?!?!?
:なんだwwww
:オイなんだこれwwww
:よし! ちょっと待とうかwww
:いきなり変な音が聞こえたぞwwww
:勇者の覚醒に感動してたら、変な音が聞こえてきたwwww
:ちょっ、レイカちゃんがカップ麺食べてるwww
:異世界の映像の向こう側にいるレイカさんが、カップ麺をすすってるんだがwwww
:いいところでカップ麺食うなwww
:カップ麺を食いながら解説するんじゃないwwww
異世界の映像を流しながら、レイカは手に持ったカップ麺を幸せそうに食べていた。
「スタンバイさせていたカップ麺がジュルルルルルル! ちょうどズゾオオオオオオオオ! できあがりまたジュルルルルルルル!」
:カップ麺スタンバイさせてたんかいwwww
:なんでカップ麺スタンバイさせてたんだよwwww
:レイカちゃんがカップ麺すすったせいで、さっきの勇者覚醒シーンが頭から消し飛んだんだがwww
:レイカ。食べながら喋るのはやめなさい(お父さん)
:お父さんからのガチ注意www
:これは怒られても仕方ないwwww
:レイカちゃんの好きな醤油味を買ってきましたぁ!(お母さん)
:カップ麺買ってきたのお母さんかいwww
:母ちゃんも共犯だったwwww
:この配信のせいで醤油味のカップ麺が売り切れそうで怖いwww
「ゴホッ、ゴホッ、エォッホォ! エホッ、エホッ、エホッホホホッオ!」
:咳き込んだwww
:慌てて食べるからwwww
:腹を空かせた動物みたいにがっついてたからなwwww
勢いよく食べすぎたせいで、喉につまってしまった。何度か咳をして喉の調子が戻ると、レイカは真剣な顔をする。
「久しぶりのカップ麺なので、どうせならリアクションを配信で見せたかったんです。想像していた以上に美味しいですね。っ……! ほんと、帰ってきてよかった……!」
:めっちゃうれしそうなんだがwwww
:目に涙を浮かべてるぞwww
:カップ麺で涙流してるwwww
:言葉に実感がこもりまくってるなwwww
:異世界ではカップ麺食べられなかったからwww
:てか、映像のほうでは決着がつきそうだぞ!
浮かびあがってる映像では、ルリアが聖剣で獅子王にトドメを刺そうとしていた。金色の髪をなびかせて走り出すと、獅子王に斬撃を叩き込もうとする。
しかし、ルリアは足を止めた。両目を見開くと、炎が燃えさかる辺りの景色に視線をめぐらせる。
「こ、この歌は……!」
映像のなかでは、どこからともなく歌声が響いてきていた。
その歌声は徐々に大きくなって、中央広場に近づいてくる。




