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 映像内のレイカは、まだ都市内から響いてくるモンスターたちの雄叫びを聞くと、聖剣を握ったまま駆け出していた。


「とりあえずうるさかったので、都市内を走りまわってモンスターさんたちを光の斬撃で一掃しましたね。無双ゲーみたいに。ちなみに対応に追われていた騎士団の人達は、わたしを見て驚いていました」


:無双ゲーってwwww

:確かに獅子王を瞬殺した聖剣の斬撃があれば、残りのモンスたちは簡単に片づけられるだろうけどwwww

:うるさいからって理由で、モンスターたち一掃されちゃったのかwwww

:騎士団の人たちも、聖剣でモンスターを焼き殺す女がいきなり出てきたからビビったろうなwww


「都市内のモンスターさんたちを片づけるところは省略でいいですね」


 宙に表示されている映像が数倍の速度で流れていき、レイカが都市に残っていた最後のモンスターを、光の斬撃で消し去るところまで一気に進んでいった。


:映像が飛んだwww

:スキップされたwwww

:この記録魔法とかいうのそんな機能まであんのかよwwww

:都市内のモンスターを狩るところもじっくり見たかったwww


 映像内のレイカは、握っている聖剣を黙々と見つめていた。それから遠くのほうで、虚ろな目をしてうずくまっているルリアに視線を向ける。


 数秒ほど、レイカとルリアは見つめあう。


 レイカはクスリと微笑んで、うなづいた。


 そしてまた歌い始めると、レイカはルリアのほうに背を向けて歩き出した。


「こうしてわたしは『勇者の聖剣』を入手して、この都市から立ち去りました」


:オイwwwww

:聖剣返してやらないのかよwww

:聖剣を返すのかと思ったらパクったwwww

:パクんなwww

:借りパクすんなwww

:聖剣借りパクしたwwww

:これが聖剣NTRwwww

:またアニソン歌ってるwwww

:これは確かアニメ版ダンジョンハンターのエンディング曲だなwww

:立ち去るときはエンディング歌うのかwwww

:レイカ! 借りた物はちゃんと返しなさい!(お父さん)

:なに言ってるのあなた! エクスちゃんがレイカちゃんを選んだんだから、もうレイカちゃんのものよ! レイカちゃんは絶対よ!(お母さん)

:お父さんが正しいと思うwww

:お母さん娘のことヒイキしすぎだろwww

:レイカさん軌道修正が不可能なほど進むルートまちがえまくってるなwwww


 地面に座り込んだルリアは茫然自失となっていて、遠ざかっていくレイカの背中を見送ることしかできなかった。


 ルリアの周りにいる三人の回想キャラたちは、困ったように顔を見合わせると、半透明なその姿をシュッと煙のように消していった。


:回想キャラたちが消えたwww

:ルリアちゃんになんて声かければいいのかわかんなくて消えたwwww

:レイカさまというイレギュラーは、回想キャラたちでも手に負えなかったかwww


「とまぁ、大都市にモンスターが攻めてきたという話でしたね」

 

 レイカは右手を前に向ける。宙に表示していた映像を消して【記録魔法】を解除する。


:大都市にモンスターが攻めてきたというよりも、レイカちゃんが勇者から聖剣をパクった話だったがwwww

:ルリアちゃんからすれば、都市に攻めてきたモンスターよりもレイカちゃんのほうが脅威だったwww

:聖剣を奪われてしまったwwww

:いま気づいたけどこの配信、同接が二百万いってるぞ!

:ホンマや!

:ついに二百万超え!

:みんな異世界の映像を見たいからな!

:レイカさんがルリアちゃんから聖剣を奪ったところから、同接がめっちゃ伸びた!

:日間総合ランキングも20位までのぼってるぞ!


「二百万……!」


 パソコン画面を確認してみると、確かに同接が二百万を超えていた。その数字に、レイカは一瞬だけフリーズする。


 やっぱり異世界の映像は、みんな見たいようだ。


:いまレイカさんちょっとフリーズしたwww

:同接とランキングに驚いたんだろうよwwww

:ここから上のランキングはトップの配信者やインフルエンサーばかりだぞ!

:異世界帰りのレイカさまなら、トップランカーの配信者たちも抜けそうな気がするがwww


 レイカは胸の鼓動が高鳴るのを聞きながら、吐息をこぼす。配信を終える前に、告知しておかないといけない。緊張で声を震わせながらも、口を動かした。


「次の配信は、また真子先輩と一緒にダンジョンにもぐりたいと思います! そしてそのときこそ、ランキング1位を取ってみせます!」


:マジか!

:次の配信でランキング1位を取るつもりか!

:ダンジョンでまたレイカちゃんの異世界の力が見られる!

:楽しみだ!

:また異世界の力をおかしな使い方しなきゃいいけどwwww


 次の配信の予告をして、ランキング1位を狙うことを宣言すると、多くのコメントが返ってきた。


 視聴者たちの書き込みを目にしたレイカは、胸のなかで熱い炎を燃やす。


:…………ルリアちゃん(先輩)


「あ、あれ? 真子先輩? どうしたんですか?」


 次の配信に向けてやる気をみなぎらせていたら、一緒にダンジョンにもぐる予定の真子の様子がおかしかった。なんだかすごくヘコんでいる。


:真子ちゃんwwww

:ルリアちゃんの覚醒でテンションあがってたのに、そこから聖剣NTRだったからなwwww

:ルリアちゃんのこと好きになってたみたいだし、ショックだったんだろうよwwww

:推しが引退したように、真子ちゃんションボリしてるwwww


 どうやらルリアから聖剣を奪った映像が、真子のメンタルに深いダメージを与えたようだ。


 バツが悪くなったレイカは「あ~、え~」とよくわからない言葉を口からもらした。


 そしてぎこちない笑顔を浮かべると、視聴者たちに向けて手を振った。


「それでは、また次の配信で」


:無理やり終わらせたぞwwww

:笑顔ぎこちないのかわいいwww

:真子先輩にまでダメージがおよんだのは、レイカさまでも読めなかったかwww

:次の配信を楽しみにしてるぜ!

:ランキング1位を取れるように応援してるぞ!


 最後のほうはグダグダになったけど、視聴者たちの温かいコメントを見ながら、レイカは本日の配信を終了させる。


 配信を切ると、身体の力を抜いて椅子に深くもたれかかった。映像を流して喋っていただけなのに、かなり疲れが溜まったようだ。


 レイカはグッと握り拳をつくると、天井を見あげる。


 みんなに宣言したように、次のダンジョン配信では念願だったランキング1位を取ってみせる。


 気合いを込めて、自分自身にそう言い聞かせた。





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― 新着の感想 ―
人類を守る名だたる聖剣、魔剣を失った異世界の人類の現状が怖い あと先輩は次回くらいには立ち直って聖剣貸してとか言い出すに花京院の髪の毛を賭けるぜ!
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