↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
23/43

23




 古びた城を抜け出すと、外には草原がひろがっていた。だがダークファンタジーな世界観なので、さわやかな景色ではなくて、ほの暗くて陰気な雰囲気が漂っている。


:城を出た!

:城から出るのはっや!

:通常なら城で死にまくって抜け出すのも一苦労なんだけどなwwww

:レイカさまのプレイヤースキルが高いから、こんなに速く進められるのかwww

:外は草原だ!

:草原なのに画面はちょい暗いままだ!

:誰かいるぞ!


 廃城を出たすぐ近くには、短髪で口髭を生やしている中年の男性キャラが立っていた。青い鎧を装着していて、大剣を背負っている。


 主人公が近づいていくと、むこうから声をかけてくる。


「よぉ、旅人さん。俺はブルーってんだ」


 ブルーと名乗った男性キャラは、陽気な笑みを浮かべてくる。


:はじめてのNPCだ!

:青い鎧のおじさん!

:いい声だな!

:声あててるの誰なん?


 ようやく登場したNPCに、コメントが増えていく。


 レイカはゲーム画面をジーッと見ながら、ボソリと喋る。


「前にプレイしていたときも思ったんですけど、こっちはパンイチなのに、このおじさんよく声をかける気になりましたね。ふつうなら関わらないように目をそらしますよ。異世界でもありえないことです」


:言われてみれば確かにそうだがwwww

:いや、これゲームだからwww

:冷静になって見てみたら、パンイチの男におじさんが話しかけてて絵面おかしいなwww

:レイカ、余計なことを……(お父さん)

:レイカさまが指摘したせいで、おもしろいシーンにしか見えなくなってしまったwwww

:なんだこの映像wwww


 レイカが疑問を口にすると、コメ欄が妙な盛りあがりを見せる。絵的におかしいのだと、視聴者たちも気づいたようだ。


 ゲーム画面のほうでは、ブルーとの会話が続いている。


「素人なら、まずは西の墓所を目指すことだ。そうすれば、こんな世界でも多少は長生きできるだろうよ。まちがっても、東の森には近づかないほうがいい。寿命を縮めることになるぜ」


:冒険のヒントくれてるのか!

:やさしいおじさんだなぁ!

:そこはプレイヤーにも親切にできてるんだな!

:だけどパンイチの男に話しかけてるというおかしな絵面wwww

:主人公が服さえ着ていたら、こんなことにはならなかったのにwwww


 主人公がパンイチのせいで変な映像になっているが、ゲーム進行のアドバイスをくれるブルーに、みんな好意的なコメントを寄せていた。


 視聴者たちの温かなコメントを見ると、レイカも自然と笑顔になる。


「ブルーさん、ありがとうございます。てい!」


 レイカはお礼を言うと、主人公に片手剣を振るわせてブルーを攻撃した。


:おおおおおおおおい!

:待て待て待て待て!

:え? 攻撃したの?

:NPCを攻撃した!

:いきなり攻撃したからビビったwww

:なにやってんだこの血塗れ女はwwww

:レ、レイカ……!(お父さん)


 攻撃を受けたブルーは減少したライフが頭上に表示されると、背負っていた大剣を抜いてくる。


「このクソがぁ! なにしやがんだぁ!」


:おっさん口悪っ!(先輩)

:おっさんの口が悪くなったwwww

:さっきまで陽気に笑ってたのにwwww

:いやまぁ、いきなり剣で斬りかかられたらブチキレるだろwwww

:ていうかレイカさま何やってんの!

:初っ端からNPCと敵対wwww

:異世界に行ったときと同じことしてるwwww


 激昂したブルーは大剣を振りまわしてくる。


 レイカが操る主人公は、大剣を的確に回避しつつ、片手剣でチクチクと攻撃を加えていった。


「大剣の威力は怖いですけど、十分に反応しきれる動きです。あとはこうやって、片手剣を打ち込んでいけば倒せますね」


:いや、そんな当たり前のように攻略説明されてもwwww

:敵対したNPCを倒す解説してるwww

:冷静に解説をするレイカさまが怖いのですがwwww

:おじさんがんばれええええ!

:おじさんを応援するなwwww


 片手剣を何度も叩き込むと、ブルーのライフがゼロになった。


「バカな……この俺がこんなところで……」


 断末魔のセリフを残すと、ブルーはバタリと地面にうつ伏せになって倒れる。


:おじさああああああああああああん!

:おいたん死んじゃやだあああああ!

:クソッ! なんでおじさんが死ななきゃいけないんだよ!

:おまいら誰の味方だよwwww


 みなさんノリがいいですね、とレイカはコメ欄を見ながら微笑むと、倒れているブルーの死体まで主人公を近づかせていって、ガザゴソとあさりはじめる。


:パンイチ男が死体をあさってるwww

:完全に犯罪者だなwww

:おまわりさんコイツですwwww


 鐘の音が鳴ると、『大剣と青い鎧を入手した』と表示された。


「武器と鎧をゲットですね。大剣は筋力の必要能力値が足りてないと装備できないんですけど、戦士なので条件を満たしています。だからすぐに装備できますよ」


:できますよ、じゃないよwww

:なにしてんだよwww

:アドバイスくれたおじさんを倒して装備を奪ったwww

:ヤベェやつじゃんwww

:やってることが野盗のソレだなwww


 ゲーム内でのレイカの行動に対して、視聴者たちからツッコミが入る。

 

 レイカは少し考えると、ここではないどこか別の場所に想いを馳せるように、遠い目をした。


「異世界で過ごした日々が、わたしにそうしろとささやいたんです。生き残るためには、手段を選んでいられないと」


:異世界関係ないだろwwww

:関係ないところで異世界持ち出すなwww

:これはゲームですwww

:レイカちゃんが昔このゲームで遊んでいたときも、同じようなことをしてた記憶があるけど、きっとお母さんの気のせいね(お母さん)

:気のせいじゃないですwww

:前もこのおじさん倒して装備奪ってたんじゃねぇかwww

:お母さんが目撃してたwww

:やっぱ異世界関係なかったwwww

:もともと野盗プレイしてたwwww

:おい同接が百二十万いってるぞwww

:いつの間にwww

:とんでもないゲームプレイがネットでちょっと話題になってるwww

 

「なっ……! ひゃ、百二十万!」


 同接の伸びに、レイカは一瞬だけ意識が飛びそうになる。


 ダンジョン配信や異世界の映像ではないので、あまり伸びないかもと不安だったけど、予想よりも多くの視聴者が集まってきているようだ。


:すごく動揺してるwww

:一瞬フリーズしかけたなwwww

:戦闘中にレイカさまをフリーズさせることができれば、おじさんを助けられたwww


 レイカは胸元に手を当てて落ち着くようにと自分に言い聞かせると、ゲーム配信を続けていく。


 装備画面を表示させると、奪った大剣と青い鎧を主人公に装着させた。


「これでようやく、パンイチではなくなりました」


:パンイチ卒業www

:さよならパンイチwwww

:やっとまともな姿になったwwww

:さっきまでが異常だったんやwww

:主人公がパンイチではなくなったことに、寂しさを感じてる自分がいるwwww

:ここから先もパンイチプレイはさすがにキツイだろwww


 まともな装備がそろうと気分が高まる。レイカはコントローラーを操作して、青い鎧と大剣を身につけた主人公を歩かせた。


「それでは、次は東の森に行くとしましょう」


:ん?

:あれ? それでいいんだっけ?

:いや違うぞ!

:レイカさん、おじさんが森には近づくなって言ってたでしょ?

:確か素人なら、まずは西の墓所からだって言ってた!

:レイカさま、まちがってますよ!


 レイカが勘違いをしていると思って、視聴者たちがコメントで正しい目的地を教えてくる。


「そういえば、さっきブルーさんがそんなことを言ってましたね。みなさん、ご指摘ありがとうございます」


 目的地を変えるようにとコメントで助言してくれた視聴者たちに、レイカは微笑んでお礼を言う。

 

 ニッコリと微笑みながら、カメラを見つめて唇を開いた。


「あの言葉はフェイクです」


:は?

:おいおい……

:また何か言いはじめたぞwww


「ブルーさんが言ってたことはウソです。実際は東の森のほうが難易度が低くて、西の墓所は難易度がめちゃくちゃ高いです。墓所には強いモンスターがわんさかと出現して、踏み込んだら即死です。というか、ダークソルジャーのキャラの言うことなんて信じてはダメです。この世界には、まともな人なんてほとんどいませんから」


:レイカちゃん何言ってるのwww

:疑心暗鬼すぎるwwww

:ダークソルジャーのことをペラペラと喋ってるときのレイカ、なんだか見てて寒気がするんだけど……(先輩)

:パイセンに同意www

:微笑みながら淡々とヤバイことを言ってるwww

:……いや、レイカさんの言ってることガチなんだよ

:さっきのおっさんが言ってたのはウソ情報だぞ!

:ブルーの言葉を信じて墓所のほうに行くと確実に死ぬ!

:それで多くのプレイヤーが命を落とした!

:そんでブルーのところに戻ったら、「すまんすまん、まちがえたよ」とかイイ笑顔で言ってくるから腹立つんだ!

:うぇええ! マジか!

:残念ながらマジだwwww

:さっきのおっさんに騙されたwwww

:だとしたらこのゲームをつくった人たちは、かなり性格が悪いなwwww

:それでおっさんを早めに始末したのか!


「あっ、いえ。ブルーさんを倒したのは、単純に装備がほしかったからですね」


:なるほど(ドン引き)

:そうか……(目をそらす)

:理解した(距離を取る)

:みんな引いてるwww

:そりゃあねwww

:いくら騙してくるNPCとはいえ、装備ほしくていきなり襲うのはいかがなものかとwww


 またしても視聴者を戸惑わせてしまったようだ。装備をそろえるためとはいえ、いきなりNPCをやっつけたのはまずかったかもしれない。


「えぇっと……それでは冒険を進めていきましょう!」


 レイカは気を取り直して、ゲームを再開する。コメント欄には「強引に進めたなwww」という書き込みがいくつも見られた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
レイカはこのノリで異世界を生き残ったんだろうな 誰も信じない、必要なら即奪う(命・伝説級装備含む) そしてゲーム制作者の根性が曲がってるな
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。