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魔人が右腕を前に向けると、召喚された数十体の魔犬、魔鳥、魔猿が攻勢に出る。
レイカへの総攻撃を命じるのと同時に、魔人は召喚した数体のモンスターを吸収しようとした。
ところが、それに先んじてレイカの周辺にある空間が陽炎のように揺らめく。揺らぎのなかから、炎をまとう赤い剣、雷をまとう黄色い剣、氷をまとう青い剣といった、多種多様な剣が飛び出してくる。
【アイテムボックス】から呼び出された数十本の聖剣、魔剣がレイカの周りに浮遊する。
:めっちゃ剣が出てきたあぁぁぁ!
:レイカちゃんの周りにたくさんの剣が浮かんでる!
:【アイテムボックス】から出したのか!
:もしかしてアレぜんぶ伝説の剣?
:おそらくそうだ! どれもこれも高い魔力を感じる!
レイカは周りに浮遊している数多の剣に右手を伸ばすと……。
「おりゃ! おりゃ! おりゃ! おりゃりゃりゃりゃああああああです!」
伝説の剣たちをつかんでは投げ、つかんでは投げ、つかんでは投げ、とになく投げまくる。素早い動きで投げまくって、召喚された魔犬、魔鳥、魔猿たちにヒットさせていく。
:うおおおおおおおおおおおおおおおいwwwww
:だから投げんなwwww
:なんで投げちゃうんだよwww
:伝説の剣を投げるの定期wwww
:いや、でも威力すげぇぞwwwww
恐ろしい速度で投擲される剣は魔犬、魔鳥、魔猿を一撃で吹き飛ばす。召喚されたモンスターの数が瞬く間に削られていき、爆撃さながらの威力でボス部屋を破壊していった。
:ていうか威力過多だろwwww
:ボス部屋が壊れそうになってないかwwww
:カメラ視点の画面が震えてるんだけど……
:なるほど。異世界の聖剣や魔剣はあぁやって使うのか(白目)
:へぇ~、こっちの世界の剣とは使い方が違うんだねぇ(震え声)
:いや、異世界でもあの使い方はまちがってるだろwwww
:後輩のトンデモなさに、パイセンが言葉を失ってるwwww
:召喚したモンスが殺されまくって、魔人が必殺技を発動できない!
魔人は焦っていた。呼び出したモンスターたちが瞬殺されていくので、赤い光を放つことができない。というか飛んでくる聖剣や魔剣の破壊力が凄すぎて、そっちにも恐怖する。
近くでレイカが聖剣、魔剣を投げまくるのを見ていた真子も呆気に取られている。
必殺技の発動は不可能だと判断すると、魔人は腰を落とす。その場から走り出して、飛んでくる剣を避けながらレイカのもとに突進してきた。
:魔人が突っ込んできた!
:レイカさまが投げてる剣を避けてるぞ!
:めっちゃ速ええええ!
:近接戦を仕掛けるつもりか!
こちらに向かってくる魔人を見ると、レイカは微笑みを浮かべる。
「それでは、先ほどのモノをお返しします」
左手に持っていた魔道書のページを開いて、正面に向ける。
突撃を仕掛けてきた魔人の表情がひきつる。
魔道書から、赤い光があふれ出す。
先ほどレイカたちに対して放ったはずの赤い光が、レイカの持つ魔道書から放出されて、魔人のもとに返ってきた。
轟音が響くとボス部屋が破壊の輝きに照らされて、魔人は自らの必殺技である赤い光をその身にあびせられる。
:魔道書から赤い光が!
:さっき吸収したやつか!
:魔人が使ってきた必殺技だ!
:吸収した赤い光を出してるのか!
レイカは左腕のスマホに表示されたコメントを読みながら、うなづいた。
「えぇ、そうです。『夜天の魔道書』は、吸収した魔法を放出することもできます。食べたそうめんの逆流ですね」
:だからその例えやめいwwww
:頼むから、そうめんで例えるのやめてくださいwwww
:なんでそうめんで例えちゃうんだよwwww
:感動してたのに台無しなんですけどwwww
:もう魔道書がそうめん吐いてるようにしか見えないwww
:吐き出したそうめんを魔人があびてるように見えるwwww
:この異世界帰りの女、ほんと口を開かないほうがいいなwwww
:黙ってれば格好よかったのにwwww
:そうめんは美味しいわね!(お母さん)
:お母さんwww
:美味しいかどうかは関係ないだろwww
:むしろ娘さん魔道書からそうめん吐き出させてるんですがwww いや、そうめんじゃないんだけどwwww
魔道書が赤い光を全て放出すると、地面は真っ黒に焼け焦げて、熱をともなう白煙が立ちこめる。
そんな破壊の傷跡が色濃く刻まれているなかで、魔人は倒れていなかった。全身が火傷におおわれていて、満身創痍の状態で立っている。
:まだ生きてるぞ!
:あの赤い光をあびて、立っていられるのかよ!
:しぶてぇ!
:レイカさま、あぶない!
魔人は敵意のこもった眼差しでレイカを睨むと、躍りかかってくる。
一瞬で肉薄してきて、握りしめた拳を叩き込んできた。
レイカはパタンと魔道書を閉じる。半身をそらすことで、魔人の拳を余裕でかわしてみせる。
そして左手に持っている魔道書をギュッと握りしめると。
「おらああああああああああああああです!」
持っている魔道書を横薙ぎに振るい、ボゴンッと魔人の顔面をブン殴った。
それで魔人の頭部は粉砕され、身体ごと弾き飛ばされて地面に叩きつけられる。
:殴ったwwww
:魔道書で殴ったぞwwww
:ちょっwwww 魔道書で殴ってトドメ刺したwwww
:これが『夜天の魔道書』のチカラかwwww
:ちゃうわwwww
:おそらくレイカさまのパワーではないかとwwww
:なんちゅうパワーwwww
:魔道書の強度すげぇwwww
:魔道書の使い方もまちがってるwwww
倒れた魔人がもう動く気配がないのを見て取ると、レイカは頭上にあるドローンカメラに目を向ける。
「魔人を倒したようですね。これで『永久の牢獄』の攻略完了です」
そう言って微笑みかけると、たくさんのコメントが殺到してきた。
:すげぇええええええええええええ!
:やりやがったああああああああああああああ!
:未踏破ダンジョンのボスを初見で撃破したあああああ!
:いいもの見れた!
:いやもう、後半は伝説の剣を投げるわ、そうめんに例えるわ、魔道書でブン殴るわでメチャクチャだったけどおもしろかった!
:ホント後半メチャクチャだったなwwww
:そうめんに例えるって、意味わかんないなwwww
:異世界帰還者であるレイカさまにすれば、魔人すらも敵ではなかったか!
:レイカちゃんすごいわ! 明日の晩ごはんはそうめんね!(お母さん)
:そうめんwwwww
:そうめんに例えたのは晩ごはんのリクエストだったwwww
:なんかとても疲れた……(お父さん)
:お父さんお疲れさまwww
:ダンジョン配信は心臓に悪いからなwww
:ダンジョン配信というか、レイカちゃんが心臓に悪いのかとwwww
「す、すごいコメント量ですね……」
滝のように流れつづけるコメントに、レイカは気圧される。魔人と対峙していたときよりもキョドっていた。
とりあえずレイカはパチンと指を鳴らすと、ボス部屋に散らばっている聖剣や魔剣、それにレイカが左手に持っている魔道書を消し去った。全て【アイテムボックス】のなかに回収する。
ここまでの成り行きを近くで見守っていた真子は、全身から力が抜けていった。異世界の力は見たかったけど、それを扱うレイカの使い方がいろいろとおかしかったので、複雑な気分だ。




