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:なんだよアレエエエエエエ!
:デッカイ赤い光が画面をおおいつくしてる!
:ボス部屋どころか、外にまで届きそうだぞコレ!
:こんなん回避不可能だろ!
:逃げ場がない!
:ていうかレイカちゃんぜんぜん動こうとしてないんですけどぉ!
魔人の放った赤い光を目にして、コメント欄が混乱していた。
真子はあの光からは逃れられないと瞬時に悟ったようで、呆然と立ちつくしている。
誰もが絶望感に支配されるなか、レイカだけは冷静な表情で迫り来る赤い光と向き合っていた。
「『夜天の魔道書』よ」
レイカの目の前にある空間がゆがむ。【アイテムボックス】から黒い本を取り出す。
左手で黒い本をつかむと、ページを開いて正面に向けた。
膨大な魔力をともなった赤い光が目前まで迫ってくる。
けれど、レイカと真子、それに浮遊する二台のドローンカメラが焼きつくされることはなかった。
レイカや真子を呑み込むはずだった赤い光が、魔道書のなかに吸い込まれていく。ページをひろげた魔道書が防波堤となって、赤い光をせき止めていた。
:なんだ!
:一体なにが……!
:レイカさまが黒い魔道書を取り出した!
:その魔道書が赤い光を止めてる!
:魔人が放った赤い光が、魔道書に吸い込まれてるぞ!
:あれも異世界のアイテムなのか!
発動したら死に直結するであろう赤い光が、魔道書のなかに呑み込まれている。そのことに大勢の視聴者たちと、真子は驚愕していた。
「この『夜天の魔道書』は、魔法を吸収することができるんです。ハラペコの子供が、そうめんをすするみたいにね」
:例えwww
:いや、例えwww
:確かにすごい勢いで赤い光を吸い込んでるけどもwwww
:もうちょい別のいい例えはなかったのかwwww
:せっかく異世界の魔道書で魔人の必殺技を吸収してカッコイイと思ってたのにwww
:さっきまで感動してたのにレイカちゃんの例えで一気に萎えたwwww
:レイカさまの比喩表現が壊滅的だった件wwww
:もう魔道書が赤い光をそうめんみたいにすすってるようにしか見えんwww
:ワイもやwwww
:くそっwww かっこいいシーンのはずなのに、そうめんすすってるようにしか見えねぇwwww
:なんでそうめんで例えたんだよwwww
:せっかくの異世界の魔道書が残念なことにwwww
レイカがおかしな例えをしたせいで、見せ場のはずなのに、いろいろと台無しになっていた。
真子もガックリとしている。
やがて放出されていた赤い光がすべて魔道書のなかに吸いつくされると、レイカは左手に持った魔道書をパタンと閉じる。
「…………!」
必殺であるはずの赤い光が通じなかったことに、魔人は顔をしかめる。
グッと魔人は唇を噛みしめてレイカを睨むと、微量の魔力を発する。地面に二つ、宙に一つの光が生じる。魔犬、魔猿、魔鳥がいっぺんに召喚された。
:また出てきたぁ!
:三体同時に召喚してきたぞ!
:この三体がまた吸収されたら、さっきの赤い光を発動してきちまう!
レイカは空いてる右手を前に向ける。空間がゆがむと、【アイテムボックス】からとあるモノを引きずり出した。
レイカの右手に、美しい輝きを帯びた鈍色の剣が握られる。
:レイカさんの手に剣が!
:また【アイテムボックス】から取り出したのか!
:なんかすごそうな剣だな!
:ヒュドラを瞬殺したときとは違う剣か!
:その鈍色の剣からは、さっき魔人が放った赤い光よりも高い魔力を感じる!
:こっちの世界のダンジョンでも、なかなかお目にかかれないほどの強い剣だ!
:もしかして異世界のすごい剣か!
「レ、レイカ! その剣は……!」
真子が期待に満ちた瞳で鈍色の剣を見つめながら、説明を求めてくる。
レイカは唇で弧を描くと、握った剣について語った。
「これは『名匠の剣』といいます。異世界で達人の域にまで到った伝説の鍛治師が、その生涯をかけてようやく完成させた極限の一振りです」
レイカの話を聞くと、真子は「い、異世界の伝説の剣……!」と目を輝かせる。
:真子ちゃんテンションあがってるなwww
:俺もテンションあがってるぜ!
:やっぱり異世界の伝説の剣だった!
:伝説の鍛治師の剣!
:その剣なら魔人たちを倒せるかも!
:うおおおおおおおお! もりあがってきたぜええええええ!
『名匠の剣』を取り出したことで、コメントの流れが加速する。視聴者たちが楽しんでくれているようだ。
「では、片づけるとしましょう」
レイカは『名匠の剣』を軽く振るう。美しい音色が奏でられ、虚空に鈍色の光が走った。
取り出された剣が尋常なモノではないと魔人たちも勘づいているようで、先ほどよりも殺意を高めてくる。
真子も、大勢の視聴者たちも、固唾を飲んで見守っていた。
異世界から持ってこられた伝説の剣が、どれほどの力を秘めているのか、誰もが注目している。
レイカは『名匠の剣』を握った右手に力を込める。
頭上に視線を向けて、狙いを定めた。
そして……。
「おりゃあああああああああああああああああああああです!」
伝説の剣を、思いっきりブン投げた。
:え?
:は?
:ちょっ……!
:おおおおおおおおおおおおおおおおい!
:え? 投げた?
:伝説の剣を投げた!
:ブン投げたぞこの血塗れ女!
投擲された『名匠の剣』は猛スピードで上昇していき、飛行する魔鳥に直撃。爆音を立てて、木っ端微塵にする。
召喚した魔鳥が一撃で粉砕されたことに、魔人は唖然となっていた。
「ふぅ。伝説の剣だけあって、いい威力ですね」
レイカは右手で額をぬぐいながら、さわやかな笑顔を浮かべて、地面に落っこちた『名匠の剣』を見る。
ポカ~ンとなっていた真子はハッとすると、慌てて問い詰めてくる。
「いやいやいやいや! ハァアアアア! レ、レイカ! あ、あんた何してぇ! 何してんのあんたはぁ!」
:パイセンが動揺してるwww
:動揺するのも無理ないwww
:なにが起きたのか理解するのに数秒は必要だったwww
:斬るかと思ったら、この異世界帰りの女、伝説の剣をブン投げたんだがwwww
:これ伝説の鍛冶師さん涙目だろwww
:伝説の鍛治師さん、生涯をかけて完成させた剣を投げられるwwww
:伝説の鍛冶師「俺の剣が……」
:レイカあああああ! 伝説の鍛冶師さんに謝りなさい!(お父さん)
:お父さんwww
:これはレイカさんが悪いwww
真子は血相を変えて詰め寄ってくるし、コメント欄はめちゃくちゃ荒れていた。
レイカは真面目な表情になって、事情を説明する。
「投げたほうが、手っ取り早く倒せると思ったので」
その返答を聞くと、真子は口を半開きにしたまま絶句する。コメントのほうでは「確かに手っ取り早く魔鳥を仕留めたがwww」といった書き込みがされていた。
魔鳥を撃破されたことで魔人は厳しい顔つきになると、その身体から大量の魔力を放ってきた。地面や宙の到るところで光が生じていき、何体もの魔犬、魔鳥、魔猿が召喚される。
:めっちゃ出してきた!
:一気に数十体も出してきたぞ!
:本気になりやがった!




