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ゲートをくぐると、その向こう側には薄暗い洞窟がひろがっていた。安全な地上から切り離された、モンスターが出現する危険なダンジョンがそこにある。
レイカは感知スキルを展開すると、道を探りながら進んでいく。
ダンジョンに踏み込むと、ますます同接が伸びる。それに驚いたレイカは、歩き方が若干ぎこちなくなっていた。
しばらく前進していくと、感知スキルがモンスターの気配をとらえる。
「まさかこんなに早くエンカウントするだなんて、とても良い兆候ですね」
隣にいる真子もモンスターの気配を察したようで、足を止めると正面を睨んでいた。
重量感のある足音が聞こえてくる。暗がりから姿を現したのは、頭の側面に二本の角を生やしていて、筋骨隆々の肉体をした二足歩行のモンスターだ。
:ミノタウルス!
:上層でいきなりミノタウルスとか、やっぱ難易度高めだな!
:カメラ越しだから見れてるけど、実際に遭遇したらビビって動けなくなる!
牛頭の怪物。ミノタウルスの登場に、コメント欄がどよめく。
「真子先輩。ここはわたしに任せてください」
「いいの? 手伝わなくて?」
「はい。わたし一人で十分です」
レイカが自信満々に答えると、真子は迷いつつもうなづいて、後ろに下がっていった。
けど念のため、真子はサポートできるように、いつでも魔法攻撃を放てる準備をしておく。
「ブモオオオオオオオオ!」
ミノタウルスは殺意に満ちた雄叫びをあげると、鼻息を荒くしながら前傾姿勢になる。二本の角を前面に向けてくると、ドッと破裂するような音が弾ける。レイカに向けて、猛然と突撃してきた。
「異世界の力を見せるとしましょう」
タックルをかましてくるミノタウルスを前にしても、レイカは臆することなく、余裕のある笑みを浮かべている。
ついにこの目で異世界の力を見られる。真子はワクワクしながら期待の眼差しをそそぐ。視聴者たちも、カメラ越しにレイカの一挙一動に注目していた。
レイカは腰をかがめると、ひょいっと足元に落ちている石ころを拾いあげる。
数メートル先まで迫ってきているミノタウルスを見据えると、手の中にある石ころをピッと親指で弾いて飛ばす。
ボッ!
音が鳴って、ミノタウルスの頭が消し飛んだ。
頭部を失ったミノタウルスの肉体は勢いよく地面に転倒すると、粒子状になって霧散していった。
:…………え?
:いや……え……?
:いきなりミノさんの頭が吹き飛んだんだけど?
:いまなにしたの?
:速すぎてなんも見えなかった……
:探索者だが、レイカさまが石ころを拾って飛ばしてた。それで倒したっぽい
:はああああああああああ! マジかあああああああああああ!
:石ころwwww
:石ころでミノタウルスを倒したwww
:異世界の力じゃねぇwwww
:うちの娘は異世界で一体なにがあったんだ……(お父さん)
:お父さん混乱中www
:そりゃあ娘が石ころ飛ばしてムキムキのミノタウルスを秒殺したらねwwww
:すごいわレイカちゃん! 他意はないけど、晩ごはんは牛肉に決定ね!(お母さん)
:他意はあんだろwwww
:お母さん、それだとミノタウルス食べるみたいに聞こえちゃいますwwww
「異世界に転移した際に強化された身体能力。それをこうして見せることができてよかったです」
コメント欄が盛りあがっているようなので、レイカは満足げに笑う。
「い、石ころ……」
後方でどんな異世界の力を見せてくれるのかと、瞳をキラキラと輝かせていた真子は、レイカの戦法を目の当たりにするとガックリと肩を落としていた。
:パイセンwww
:異世界の力が見たかったんだねwwww
:異世界に渡って強くなったんだから、これも一応は異世界の力やろwwww
:異世界のチカラ→石ころを飛ばすwwww
:もっとすごい魔法とか、火力の高い魔剣とかを期待してたんだねwwww
:これが魔道王ダークネスカイザーの力ですwwww
「みなさん、安心するのはまだ早いですよ。どうやら他にもいるようです」
視聴者や真子に注意を呼びかけると、レイカは前方に目を凝らす。
いくつもの足音が重なって聞こえてくる。暗がりから続々とモンスターたちが出現してきた。
そこにいるのは、ミノタウルスだけではない。
狼の頭に鋭い牙を持っている二足歩行のワーウルフ。
額から角を生やしていて、筋肉の塊のような屈強な肉体をしたオーガ。
それらが数十体の群れとなって、レイカの前に立ちはだかる。




