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:モンスターの群れ!
:ミノタウルス、ワーウルフ、オーガがいる!
:なんて数!
:三十体以上はいるぞ!
:上層でこれとかやべぇえええええ!
:『永久の牢獄』でも、いきなりこんなモンスターの集団が出てくるのは滅多にないぞ!
:初心者だったらここで詰む!
「ちょっ、これまずくない?」
レイカ一人に任せて大丈夫なのかと、真子は戦々恐々としながら尋ねてきた。
「いきなりこんなたくさんのモンスターさんたちとエンカウントするだなんて、ついてますね」
だが、当のレイカはどこ吹く風で、のんきに笑っている。
モンスターが集団で出現してくれたおかげでリスナーは盛りあがっているし、撮れ高としてもバッチリだ。
そんな後輩の様子に、真子は「マジかこいつ?」とドン引きである。
まるで動じていないレイカの態度が気に食わなかったのか、モンスターの集団は「ブモオオオオオオオオ!」「ウオオオオオオオオオオン!」「グガアアアアアアアア!」と怒声をあげてくる。
何十体というモンスターたちが、一斉にレイカに敵意を向けて襲いかかってきた。
その迫力に、真子は思わず身構えてしまう。
レイカは微笑んだまま、近くに落ちている大きめの石を拾いあげると、バギッボギッバギッと掌のなかで細かく握り潰して砕く。
突撃してくるモンスターの集団に右手を向けて、ダダダダダダダダダダダッと石の破片を親指で弾いて飛ばしまくる。
ボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボッ!
炸裂音が連続で響き、レイカのもとに押し寄せていたモンスターたちの頭部が次々と消し飛んでいく。
:うおおおおおおおおおおおおおおおおいwwwww
:モンスたちがwwwww
:え! なに! これどうなってるの!
:モンスターたちの頭が吹っ飛んでるんだけど!
:石の破片というマシンガンで、モンスたちの頭を吹き飛ばしてるwwww
:ピンポイントで頭に命中させて吹き飛ばしてるぞwwww
:ちゃんと説明されても、なにが起きてるのかわかんない(混乱)
:こうして映像見ててもわけがわからないよぉ(震え声)
:いや、もう意味不明なんだがwwww
:なるほど。モンスターの集団とエンカウントしたときは、こうやって石の破片を飛ばして倒せばいいのか(納得)
:いいわけあるかいwww
:前衛向きの探索者でも、こんな芸当はできねぇぞwwww
コメントが増えて視聴者が楽しんでくれているので、レイカは「よかったです」と安心する。
そこで、レイカはハッとした。
こんなにも大勢の視聴者が見に来てくれているんだ。これはアレをやるチャンス。
レイカは「んっ、んんっ!」と喉の調子を確かめる。
大丈夫。ちゃんとやれる。練習したとおりにやれば問題ない。
レイカは息を吸い込むと、慣れ親しんだメロディに乗せて、歌声を響かせはじめた。
いきなり歌い出したレイカに、真子はギョッとする。
レイカのもとに突進していたモンスターたちも、状況が理解できずに戸惑っていた。
:今度はなんだ! どうした!
:いや、なに? なんなの?
:なんか歌ってない?
:おい、なんかレイカちゃんが歌いはじめたんだがwwww
:錯乱したかwww
:真子ちゃんがドン引きしてるwwww
:モンスターたちもビビってるっぽいwwww
:ちょっwwww この歌ってwwwww
レイカは歌を一時中断すると、頭上に浮かぶドローンカメラに視線を向ける。
「これはアニメ版ダンジョンハンターのオープニング主題歌です。異世界にいたときに何度も練習しましたから、こっちの世界に帰ってきたら、是非ともたくさんの人達に披露したかったんです」
説明を終えると、レイカは再びアニソンを歌い始める。歌いながら手のなかにある石の破片をダダダダダダダダダッと連射して、モンスターの集団をボボボボボボボボボッと蹴散らしていった。
:ダンジョンハンターの主題歌www
:どっかで聞いたことあると思ったらwww
:歌ってみたをやりたかったんだねwwww
:なんでこのタイミングでやろうと思ったんだよwww
:別の配信のときでよかっただろwwww
:絶対このタイミングでやることじゃないwwww
:モンスターを殺しながら歌うんじゃねぇwwww
:アニソン歌いながらモンスたちを吹き飛ばしてるwww
:もはや狂気だろこれwwww
:レイカ……こわいよ(お父さん)
:お父さんの言うとおりwww
:お父さんのメンタルが心配だなwwww
:レイカちゃん、とっても歌が上手ね!(お母さん)
:確かに上手いがwww
:ふつうに歌は上手いwwww
:映像のインパクトのせいで歌が頭に入ってこないのが問題www
:絵面がヤバすぎるwwww
:MV撮影中ですwww
:こんなMVはイヤだwwww
そうして歌い終わる頃には、モンスターの集団は殲滅されていた。
地面に横たわるモンスターが霧散していくと、消え去った後に残されるモノがあった。
ミノタウルスやオーガの角、それにワーウルフの牙といった素材が落ちている。
:なんか出てきた!
:素材だな!
:ダンジョンのモンスターは死亡したら消えるんだけど、ときどきこういった素材を落とす!
:モンスター素材から武器やアイテムをつくりだせる
:ギルドの換金所で売ることができるから、探索者にとっては大切な収入源!
:めっちゃ素材をドロップしたなwww
「たくさんドロップしたようですね」
レイカは落ちているミノタウルスの角を拾いあげる。
すると、レイカの目の前にある空間がグニャリとゆがんだ。そのなかにポイッとミノタウルスの角を投げ入れると、ミノタウルスの角は跡形もなく消えてしまう。
「そういえば、ヒュドラを倒した剣を取り出したときも使ってたみたいだけど、その魔法ってなんなの?」
後ろから見ていた真子が、いぶかしむような表情で聞いてくる。
「これは異世界で使えるようになった【アイテムボックス】というスキルです。異空間にたくさんのモノを収納できるから、とても便利なんですよ」
レイカの説明を聞くと、真子は両目をまん丸くして唖然としていた。
:【アイテムボックス】だと……!
:そんなのこっちの世界じゃ誰も使えないぞ!
:たくさんモノを収納できるって便利すぎる!
:装備とかアイテムを大量に持って行けるし、素材もたくさん持ち運べる!
:探索者としてマジでうらやましすぎる……
:異世界の武器とかも、いっぱい【アイテムボックス】に収納してるのか!
:ヒュドラを倒した魔剣も【アイテムボックス】から取り出したんだな!
【アイテムボックス】のことを伝えると、コメント欄が騒然となっていた。レイカも最初は【アイテムボックス】の性能に驚いたので、視聴者たちの気持ちがよくわかる。
「素材を換金したら、真子先輩と折半にしますね」
「え? いやいや! さすがにそれは悪いって! わたし何にもしてないし!」
「遠慮しないでください。今回の配信に付き合ってくれたお礼ですから」
レイカが笑顔を向けると、真子は困ったように眉根を寄せる。
「いや、ホントに遠慮したいんだけど……」
真子がそう言っても、レイカは「遠慮しないでください」の一点張りで、聞く耳を持たなかった。
それから二人で落ちている素材を拾い集めていく。モンスターを倒すよりも、むしろこっちのほうが時間がかかった。
その後の階層でも、モンスターが出現すると、レイカは石ころを飛ばして瞬殺。歌ったり、雑談したりしながら、凄まじい速度でダンジョンを突き進んでいく。
後方からそれを見ていた真子は、両目を閉じてボソリとつぶやいた。
「……これ、レイカ一人でよくない?」
:やっと気づいたかパイセンwwww
:ワイもそんな気がしてたwwww
:うすうすそんな気はしてたよwwww
:ついにバレたかwwww
:真子ちゃんはリアクション係として必要だよwww
:パイセンは現地でのリアクション担当wwww
レイカのスマホに表示されてるコメント欄には、真子のことをイジる書き込みが大量に流れていった。




