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第9話『入国手続き』




 討伐タイム――――56分28秒。


 魔法の質を変化させた黒曜石の自然王に難儀させられ、最後は自爆した黒曜石の自然王に【転移魔法】の有難みを知った。


「10万DPしか入らなかったんですが」


「よく言われます。黄金ダンジョン突破、おめでとうございます」


 ディジーにそう言われて俺は少しげんなりとした。100万DPのラスボスでは無かったらしい。ゲームクリアの気分を味わわせてくれないのか。


「入国はどうなさいますか?」


「入国しますが、【モンスターランク】を引かないコツとかありますか?」


「ふふふ。無茶をされたのはログアウト不可だからですね? 入国すればまず間違いは起こりません」


「分かりました。先にガチャをやらせてください」


「入国手続きが先ですので」


 ディジーは金色のボタンを取り出して俺に見せてくる。


「このボタンを押すだけです。プレイヤー情報の全てを取り込むためリアルデータへのアクセスにもなります。現実にモンスターが発生することはありません」


「それは良かったです。手続きもボタン式なんですか」


「【黄金の国】では安全なボタンを採用しています」


 ボタンは安全なのか……メニューウィンドウが危険とは思えないが。


 ぽちっと金色のボタンを押すと、モンスターの意匠に作り替わった。ディジーの身に着けている意匠と同じだ。


「モンスターの意匠ですね。こちらがクランメンバーの証となります」


「分かりました。さくっとログアウト不可を解除します」


「そうしてください。ダン伍さんは入国審査場Aで入国された5人目のプレイヤーとなりますね」


 意外と少ないんだな。


「クランメンバーは何人ですか?」


「現在は300人ほどです。ガチャを回すのであればクランハウスに案内します」


「よろしくお願いします」


 俺はディジーの案内でクランハウスに向かった。【黄金の国】ショップと同じ区画にある中央の建物だ。


「一応は入団となるので命令があるまではこの場で待機となります。それで構いませんか?」


「了解です。他のメンバーは全然いないんですね」


「櫓にいますよ。ダン伍さんを含めるとこの演習場に10人います」


 それぞれ持ち場があるかというとそうじゃないらしい。ログイン時間も配置も自由でダンジョンに潜るのも基本的に自由。


「ダンジョンがあるのに少ないんですね?」


「DoDは無数にありますからね。もっと高難度のダンジョンに【黄金の国】の本拠地があります」


「なるほど」


 【黄金の国】は九人類の根強い魔境を本拠地としている。そしてDoDの1つを独占している。


 『セイマン』のDoDは日本各地に出現したダンジョンと位置座標が一致しており、世間では未だにモンスターの発生原因だと騒がれている。

 ゲームを外側から見ると九人類の傘下に【黄金の国】があると思うが、実際にはクラン単位でまとまって九人類と張り合っているんだろう。


「現実世界の拠点も同じ座標になります。まあテーマパークのように考えていてください。入国テスト、お疲れ様でした」


「ありがとうございます。命令とは例えばどんな命令があるんですか?」


「ノルマですね。1か月に1つはスキルオーブを収めてください」


 スキルオーブを収めるのがノルマか。売るってことでいいんだよな? 


 【黄金の国】に入国してもやることは変わらない。ひとまずガチャを回して監獄行きを回避しないとな。


 10万ポイントもあるので腰を据えてガチャを回せる。ディジーは説明を終えてからその場に残った。


「このSRガチャ……DP消費だよな」


「SRガチャですか?」


「あ、はい。スキルで出てきたのでこっちで回してみます」


 ディジーは訝しむように俺を見てくる。


「DPを100倍消費するSRガチャがあるとは噂されています。しかし九人類が有しているのみで他の人間はおよそ獲得していないです。レア度でゴッドですから」


「使うと不味いスキルですか?」


「そうとも言います。九人類、水神のアリベルが獲得したスキルですね。貴方は水神に愛されているのですか」


「一般には知られてないスキルですか。とにかく10倍で回します」


 【幸運な森の民】でガチャを回そう。SPガチャは後回しだ。




 ・【モンスターランク】(+30)

 ・【ダンジョンランク】(+40)

 ・【アタックランク】(+90)

 ・【ブレイクランク】(+40)

 ・スキル 【水魔法】(R)

 ・スキル 【火蜂鍛造】(R)




 【モンスターランク】の上がり方がえぐい。しかし【ダンジョンランク】と【ハンターランク】、【アタックランク】の帳消しが効いている。


 【ハンターランク】+【アタックランク】/2と【ダンジョンランク】の合計値で【モンスターランク】を上回ればログアウトボタンは戻ってくる。現実ではこの四つは密接に結びついている。


「100を超えればSランク冒険者だ。Aランクは後少し」


「残りDPは7万ポイントですか」


「はい。SRガチャは1回だけ引いてみます」


「【モンスターランク】が上がると危険と判断します」


 ディジーには危険だと言われたがSRガチャを回してみたい。リスクを承知でSRガチャを回すか……しかしクランに所属している手前、ディジーの言葉は聞いた方がいい。


「分かりました。全てレアガチャにつぎ込みます」


「SRガチャがレアガチャでは? どちらにするんですか?」


 あれ? 意外とSRガチャに反対ではないのか?


「レア確定の幸運ガチャにします。三回引いてから決めます」


「SRガチャの結果は教えてください」


「【アイテムボックス】を取り戻してやります」


 どちらの方が当たりやすいか真剣に考察した方がいいか? となると、通常ガチャから確かめた方がいい。


 とりあえず3回、ガチャを回してみた。




 ・【モンスターランク】(+20)

 ・【ブレイクランク】(+10)

 ・スキル【魔力探知】(R)




 おっ、スキルが出てきた! そして【モンスターランク】が上がった! まだ問題ないと思いたいが、ここでレアガチャは引けないな。もっと慎重にならなければ。




 ・【ハンターランク】(+40)

 ・【モンスターランク】(+20)

 ・【ダンジョンランク】(+50)

 ・【アタックランク】(+60)

 ・【ブレイクランク】(+10)

 ・スキル【魔槌術】(SR)




 一応は安全圏だ。仮にSRガチャで【モンスターランク】(+100)を引いても問題はない。まあ、(+200)や(+300)が出ると一貫の終わりだ。


「悩むまでもなく通常ガチャです」


「分かっていますよ」


「いいえ。分かっていない顔ですね?」


 10万DPを貯めるところからだと思った俺は悪くないはずだ。


「10万DPを集めてきます」


「せめて30万DPが集まってからにしてください」


「30万DP……何日かかりますか?」


「貴方なら1日です。時間は入国テストとずらしてくださいね」


 ボスとの連戦は疲れる。

 しかしランクが上がって体の調子がいいのも事実。黒曜石の自然王を倒しまくってDPを荒稼ぎするか!





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