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第7話『直轄領の集落』




 称号効果は重複する。殆どの称号は微々たる効果だし、リアルで称号の管理に戸惑うことはない。




 +++


 名前 ダン伍


 【ハンターランク】 11

 【モンスターランク】 SSS

 【ダンジョンランク】 9

 【アタックランク】 7

 【ブレイクランク】 7


 HP 1800

 MP 1900

 SP 3600

 DP 5040


 スキル 【アイテムボックス】、【直剣術】、【混沌魔法】、【転移魔法】、【鑑定】


 称号 【幸運な森の民】、【混沌の転移人】


 +++




 3日間でゴブリン5000匹を討伐した。発生原因は不明だがゴブリンだけ多すぎる。スライムが肩身の狭い思いをするわけだ。


「今日は【モンスターランク】が出ないはず……いや、やっぱり怖いな」


 20倍だ。俺は一発退場を食らってしまう。

 【モンスターランク】が上がってデスゲームになると本当に不味い。警察に目を付けられて一生牢屋の中で過ごす羽目になる。


 最低でも30000DPだ。そしてDPを効率よく集めるなら黄金ダンジョンしかない。


「食べ物も木の実ばかりは飽きてくるな。【黄金の国】か……」


 クランに所属することは考えていなかった。とりあえず所属しておけと言われるが長いものに巻かれているんじゃないかと思えてくる。このゲームでは九人類だ。


「慎重に決めないとな」


 しばらくはゴブリン討伐だ。【ゴブリンキラー】の称号は欲しい。いいや、求めていかなければならない称号だ。


「おっと。ここは芋虫の集落か」


 少しだけ探索範囲を広げると前方に芋虫の集落が見て取れた。芋虫が出てくるし壁上にまで芋虫がいる。


「でも流石に集落は人間が作ってるよな……?」


 怖いもの見たさで集落を訪れる。何処ぞのクランの演習場か?


「うおっ。人間だ」


「すげー。ランクSアバターだ」


「芋虫先生、あれが天才児ですか?」


「いいや、誰でもあの形になれる。俺たちが修練を怠っただけだ」


 色んな芋虫や昆虫、動物たちが集まっていた。芋虫率は五割以上だ。


 集落にはスライムが跳ねており、安全地帯ではないことが伺えた。雑貨屋には『人間専用』と『魔物専用』の入り口がある。


 『人間専用』の入り口から入ると2階に繋がっていた。


「お邪魔しまーす」


 二重になっていた雑貨屋の扉を開いて、ポーションの並ぶ商品棚を見つめる。当たり前だが攻略に役立ちそうな道具が並んでいた。


「……購入ウィンドウとかは?」


「ないですよ。この集落は日本政府直轄領です」


「は、はあ。すいません」


 物々しい言い方をする受付の女性に頭を下げる。


「青ポーションを10本ください」


「畏まりました。素材の買取も致していますよ」


「じゃあ売ります」


「最上位のマジックユーザーですね」


 聞き慣れないことを言われて首を傾げる。マジックユーザー?


「失礼ですが【転移魔法】はお持ちですか?」


「えっと、はい」


「それでは割引しておきます」


 割引してくれるのか。素直にラッキーとは思えないな。


 黄金ダンジョン産のドロップアイテムを手放して青ポーション10本を受け取った。通貨システムを失っているので買い物はブツブツ交換で成立する。ゴブリンの腰布で買うのはタブーだ。


「【転移魔法】持ちのマジックユーザー様には試して貰っているのですが少し宜しいですか?」


「はい。何ですか、その箱?」


 カウンターの奥から重たい箱を取り出して見せてくる。


「この箱を現実世界に送ってみてください」


「……どう見ても怪しい箱なんですが」


「中身はスライムです。こちらとしては出来るのか試して貰いたいですね」


「出来ないと思いたいです」


 あからさまに嫌な予感がする。しかし蛇に睨まれたように動かない。この箱を転移させないと目を付けられそうだ。


「転移先は現実世界。不可能なんですよね?」


「いいえ。これが可能です。九人類に捕まるとプレイヤーすらこのスライムになってしまいます」


「眉唾物だと思ってました」


 ゲーム世界でモンスターとなったプレイヤーを現実世界に送る方法がある。それが【転移魔法】だというのだから恐ろしい。


「今なら魔法の杖を差し上げますよ。現実世界の部屋に送ってみてください。のちのち回収致します」


「いや、絶対に嫌です。【モンスターランク】だけは上げたくありません!」


「そうですか」


 断固拒否すると女性店員は引き下がってくれた。


 俺は慌てて雑貨店を後にして、モンスターに囲まれた集落から尻尾を巻いて逃げ出す。こんな場所で正気を保っていられるか!


「動物の影から離れるべきだったな。この辺りは危険だ」


 周辺マップくらい買っておけばと後悔したものの、いざとなれば【転移魔法】がある。問題はモンスターの区別だな。


 集落にいるモンスターたちも静かに狩りをしている。降りかかる火の粉を払いのけた回数は片手で数えるほどだ。芋虫ののしかかりが一番キツい。人間の顔が張り付いているんだ。


 芋虫プレイヤーを殺しているので自然と【モンスターランク】は上がりやすくなる。Sランクともなるとガチャ頼りなわけで、運に見放されると一発で監獄行きだ。


 ゴブリンのみで10000DPを集めたその日、俺は決心を付けた。


「今日ならやれる気がする……!」


 3000DPでガチャをぶん回す! 狙いはランクだ!




 ・【モンスターランク】(+20)




 うぐっ!? よりにもよって【モンスターランク】!?


「も、もう1度……このままじゃあ破滅だ」


 駄目な空気を出しながらガチャを回す。この1回に賭ける……!!




 ・称号【ゴブリンマスター】




 あ、あはは……ゴブリン称号だ。




 +++


 【ゴブリンマスター】

  ゴブリンをより多く討伐した者の証。ゴブリンのことを知り尽くしているお陰でモンスターとも相容れるようになる。


 +++




 これは駄目な称号じゃないだろうか? モンスターとも相容れるようになる? モンスター除けってことでいいのか?


「最後になってしまった。これで失敗すればリアルで死ぬ……!」


 頼む! 俺は【幸運な森の民】なんだ! この森から追放される方がマシだと思える人生は歩みたくない!!




 ・スキル 【SRガチャ】(GR)




 死んだ……なんだSRガチャって。それにレア度がGR?


「ヤバい。ログアウトボタンを失った」


 黄金ダンジョンに行くしかないが、モンスター認定されないよな……? それだけが気がかりだ。


 とりあえず雑貨屋で確かめようと、モンスターのいる集落に入った。焦っていたので【転移魔法】を使ってしまった。


「今の転移か?」


「すげー。【転移魔法】ってURのスキルだよな?」


「一番欲しいスキルだ!」


 芋虫たちが騒ぎ始める中、2階の雑貨店にお邪魔する。


「先日も見かけた顔ですね。何かありましたか?」


「どうも。ログアウト不可でも人間扱いかと思いまして」


「人間扱いではあるでしょうね」





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