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第5話『トラップ』




 290DP、296DP……302DP。


 2層突破間近で軽く300DPが貯まって俺はすぐさまガチャを回した。A様も同様に1回分のDPが貯まればガチャを回す。




 ・スキル 【混沌魔法】(SR)




 【混沌魔法】……! SRの上級魔法では最高クラスの付与魔法だ! 【身体強化】の数十倍は効率よく魔力を籠められる!


「悪いな。【混沌魔法】だ」


「嘘っ!?」


 俺は【混沌魔法】で馬力を上げると蟻型モンスターを一掃していった。結局道が分からなければ1番は取れないので諦める。


「【混沌魔法】があれば独走も可能ですが、さては攻略情報を知らないのですね~?」


「全く知らないな。A様の付き添いで来たんだ」


「付き添いは止めてよね! そこまで強くないでしょ!」


「いいえ~。SR魔法があると恐ろしく強いですよ~。私は何十回とガチャを引いても【ダンジョンランク】しか上がらなくて~」


 【ダンジョンランク】しか上がらない? 謙遜だろうか? 強力な【魔弓術】を持っているプレイヤーなのは見て分かる。それに初期装備ではなかった。


「ローブは何処で買ったんだ?」


「【黄金の国】ショップです~。誰でも自由に使えますよ~」


「ショップは後で見に行こう! 今は最下層を目指す!」


「モンスターはそこまで強くないですからね~」


 高DPのモンスターはダンジョンの下層にいる。リアルでダンジョン攻略したいものの、縄張り争いが激しいため自然とゲーム内に落ち着く。リアルダンジョンは九人類の縄張りだから問題の火種が多い。


 ゲームダンジョンでも熾烈な争いが繰り広げられる。俺たちは5層でトラップを仕掛ける勢力に飲まれながら何とか6層へと降りた。


「メイスドッグだよ! 尻尾の投擲爆雷に注意して!」


「了解だ!」


 犬の七変化とまで呼ばれた犬型モンスターの派生でもメイスドッグは最終盤に現れる。人間に進化途中で使いやすそうな哺乳類が現れるとそちらに流れてしまうものだ。


 モンスターの特徴はおおよそ把握しているのでマッピングに集中出来るのは大きかった。一度に覚えろというのは無理無謀だが、階層と出現モンスターを一致させることは出来る。


 10層に至る頃にはトップ争いを繰り広げるプレイヤーとそれを邪魔するプレイヤーに別れた。

 モンスターの強さは比肩するまでもないが、魔法スキルで一発撃破出来る相手ばかり。俺は【直剣術】と【混沌魔法】で切り抜けられるし、A様は温存していた【水魔法】で戦っていける。


「【獄炎魔法】は強いなぁ! 羨ましい!」


「言っても火力のみですから~。【水魔法】も持っていますよ~」


「リアル魔導師だ!!」


「リアルはしょーもないです~。ゲームで満足しましょう~」


 のほほんと言いながら10DPエネミーを面制圧するヒマリだ。黄金ダンジョンに潜り始めて2か月目なのだから強くて当たり前だ。【ダンジョンランク】は100を超えているという。


「平然と【アイテムボックス】持ちだからね~」


「私は1か月で習得しましたよ~。ダン伍さんは運がいいですね~」


「運がよかったな」


 自動収納機能の【アイテムボックス】があるとドロップを拾わずに済む。それに嵩張るアイテムを持ち歩かずに済むので、入国テストでは必須のスキルとなっている。


「宝箱があります~。貰ってもいいですか~?」


「いいよ! 私たちは先を急ぐ!!」


「では有難く~」


 宝箱を開けるのに5秒とかからなかったのでヒマリは追い付いてきた。スキルオーブを握り締めている。


「スキルオーブだよね!?」


「そうですよ~。不要なスキルは入れて売るのが得策です~」


「宝箱から出たのか!」


「スキルオーブは宝箱からの産出のみですね~」


 ヒマリはスキルを封入すると【アイテムボックス】に仕舞った。


「黄金ダンジョンはスキルオーブの産出地です~。魔法スキルだと飛ぶように売れますね~」


「魔法スキルってさっきの【獄炎魔法】?」


「そうです~。【魔力操作】と【火魔法】があるので似たような技は使えるんですよ~」


 スキルオーブにして換金するという手段が取れるからフロアを広く探索しているプレイヤーがいるのか。

 それにしては参加するプレイヤー数が少ない。黄金ダンジョンにプレイヤーが殺到してもおかしくはない。【黄金の国】が護っているので人外プレイヤーはまともに来れないのか。


 残りタイムは30分を切った。

 順調に行くと15層までは辿り着けるが、ボス討伐までは漕ぎ着けられない。トップ争いをしているプレイヤーをどうやって足止めするのか悩んでいるとその必要はないとヒマリは言った。


「ソロ討伐出来る人はいませんね~。15層のボス部屋にいるのは100万DPのゴーレムなんです~」


「「100万DP!?」」


 時間内にソロ討伐は不可能だと?


「スキルが100個あっても勝てない敵なんです~。私も討伐は諦めていますね~」


「【黄金の国】は大きくなり過ぎた……?」


「入国テストをクリア出来る人間は間違いなくSランクです~。【黄金の国】が求めるのは計り知れない強さですから~」


「計り知れない強さ、か」


 ゲームだからこそ絶対の覇者を求める。その理論で九人類は生まれたのだから【黄金の国】がどちらの側かは察せられよう。


「プレイヤーが少ないのは?」


「入国審査場Aです~。フロントラインから遠いんですよ~」


「街まで5日はかかる距離だよ? 言ってなかった?」


「辺境にありますからね~。選ばれし者のみが立ち入れる場所です~」


 悪く言うと九人類発祥の地だ。選ばれし者とは思わないな。


 フロントラインは人間と異形の境界で、この辺りでは異形種が滅多にスポーンしない。街では聖域扱いだ。

 フロントラインを超えると魔境となっていて、九人類のしでかした崩壊の連鎖が見られる。


「選ばれし者が私たちだよ!」


「それは死亡フラグです~」


「黄金郷で死んでもデスペナはない!!」


 【黄金の国】をいたく信奉しているA様の横でモンスターを倒し続ける。道が分からないと一瞬で迷いそうなダンジョンだ。A様とヒマリを頼りに最下層へと行くほかない。


 ダンジョン最深部に辿り着いたのは残り10分を切った時だった。


「あっ、戦っていますね~」


「うわぁ、強い!!」


 戦闘音が響き渡る。

 1人のプレイヤーが黒曜石のゴーレムと一騎打ちで戦っていた。どちらが強いのかは明白だ。


「……くっ! 倒せないな!」


 黒曜石の硬い防核に傷一つ付けられず、ソロ討伐が困難なことが伺えた。しかし本当に100万DPなのか?


「あれを倒せってことか」


「30分かけて倒せないってプレイヤーが大半です~」


「まあ最深部で稼げるしいいでしょ!」


 ここらでDPガチャを回すか。





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