第3話『大手クラン』
検証込みでやってみたがやっぱりゴブリンやホーンラビットだと【ハンターランク】しか上がらないようだった。
「ゴブリンを倒し過ぎて肩が凝ってきた」
「寝不足じゃない?」
アバター越しでも一発で見抜いてくるA様に一言物申したくなる。A様で登録したSランク冒険者の卵だ。
「それで【ダンジョンランク】が上がったの?」
「ああ。3回引いて全部ランクだな。そっちは?」
「称号をゲットした!」
Sランクダンジョン、『セイマン』に潜って3日目のA様は称号を手に入れていた。パーティーメンバーのステータスくらい見せろと言いたい。とかくこのゲームは狂っている。
+++
名前 ダン伍
【ハンターランク】 9
【モンスターランク】 SS
【ダンジョンランク】 4
【アタックランク】 4
【ブレイクランク】 S
HP 1500
MP 1100
SP 1900
DP 0
スキル 【アイテムボックス】、【直剣術】
称号
+++
【ハンターランク】(+2)が2つと【ダンジョンランク】(+3)が午前中の結果。
初期ステータスだと【ハンターランク】と【モンスターランク】が上がるとHP増大とSP増大、【ダンジョンランク】と【アタックランク】が上がるとMP増大とSP増大となる。【ブレイクランク】ではDPの上昇だ。
専用スキルや専用称号があるとランク上昇による能力値の上昇幅や対象が変わる。A様はきっと称号獲得を優先したかったんだな。
「【スライムキラー】だよ」
「どんな効果だ?」
「スライム討伐時のDP上昇! ダン伍はゴブリンばっかり倒した方がいいよ。ホーンラビットは無視してさ」
「俺は目前のDPを優先する。お前こそ偏食するな」
「むーっ。じゃあ交代で」
A様はあっさりとスライムの密集地を譲ってくれた。称号関連で何かあったか? スキル周りしか調べて来なかったからな。
命に係わるのはランクとスキルだ。
称号は二の次にしていたので、スライムの乱獲には興味が無い。しかしパーティーを組んでいる手前、A様は気を使ってスライム以外のモンスターを倒してくれた。
「称号系は【モンスターランク】の上昇防止になるんだよ。知らないの?」
「初耳だ。【モンスターランク】は一度上がると監獄行きだからな」
「怖いよね。人間アバターってことはゲームとして初めてないよね?」
「そうだ。始まりの森でランクSの人間しかいない場所だしな」
「たまに変わったモンスターが湧いて出てくるけどね」
Sランク冒険者に成り上がれば将来安泰と言われる時代が来ている。Sランクダンジョン攻略として始めたんだ。
「多少は【モンスターランク】が上がった方がいいとは言うけど」
「【モンスターランク】が低い冒険者も珍しいとか」
「珍しいけど安全でしょ。私は称号で安全を買う!」
「まあいいんじゃないか?」
無茶をせずにスライム討伐で一生を終えたいプレイヤーが各地に集落を造った。サービス開始から1年が経っているのでモンスター化を極めたプレイヤーもいれば牧歌的な生活をしているプレイヤーもいる。
古参プレイヤーが人知れず厄災の種を撒いたとするのが九人類説。
九人類説によると、モンスターの出現は意図的ではなく天災で、システムの改ざんはご法度だとしている。政府の介入でシステムの仕様が変わり、古参プレイヤーの反感を買ったのが伺えた。
【モンスターランク】が上がると強制デスゲームはあまりに酷い。それでもなおプレイ人口を増やしている。初期画面勢が何万人控えていることか……考えるだけで恐ろしいゲームだ。
「よし! DPは貯まった!」
「こっちも貯まったぞ。一緒に回すか」
「回そう! 第1回ランクアップガチャ!」
「開催だな!!」
たった3回のガチャでテンションを上げまくる。
ノリノリでガチャを引いて俺たちは結果に幻滅した。
・【モンスターランク】(+2)
・【ダンジョンランク】(+1)
・スキル 【鑑定】(R)
【モンスターランク】来たる……【ダンジョンランク】も上がってくれたが【モンスターランク】を上げると不味いんだ。監獄行きだとひやひやする。
「【鑑定】スキルだ」
「こっちは【採取】スキル。あんまり使えないよね」
「【火魔法】くらい欲しかったな~」
魔法スキルはR以上だが、スキルは10回に1回出ればいい方。A様は既にスキル5つを有する。
「雷魔法なら持ってるよ」
「雷魔法は凄いな。100日後が楽しみだ」
「楽しみだね!」
身体能力ばかりか魔法技能まで徐々に上がっていく。リアルに反映されるということは狂暴なまでにリアルに忠実だということ。
100日後にはSランク冒険者だ。
Sランク冒険者と言えば昨今では高給取りである。
午後から少し休んでA様とパーティーを組みながらスライム討伐に勤しんだ。パーティーを組むのは極論すると称号欲しさだ。
「【モンスターランク】対策になると称号が欲しくなるな」
「絶対に必要だよ。スキル譲渡があれば【魔剣術】を渡せるのに」
「さては【アイテムボックス】欲しさか」
「うん! 【アイテムボックス】が欲しい!!」
【アイテムボックス】は人気のスキルで、スキル譲渡を考える人間が一定数いる。スキルオーブなどの譲渡アイテムが見つかると、リアルマネーで高額取引されるから恐ろしい。
「俺は【剣術】で十分だけどな。改めてスキル構成を聞いてもいいか?」
「いいよ! 【長杖術】、【魔剣術】、【氷耐性】、【水魔法】、【採取】の5つ! 【魔剣術】は使いこなせないかな?」
「スキルトレードにいくらかかると思う? 100万だ」
「スキルオーブは2つ持ってるんだよね」
俺が訝しむように見ると、A様は慌てて口を閉ざした。
「今のなし! 私は何も持ってないよ。だけど交換出来たらする?」
「いや、しないな。URはURのスキルとトレードだ」
「ケチ! 私は情報通だよ? 恩を売って損はないと思う!」
結局は100日後なんだし、とA様は付け加えてくる。
「情報の対価にしては高すぎるぞ」
「む~っ。【黄金の国】を味方に付けないと100日後には差が付くからね?」
「【黄金の国】って最大手クランの【黄金の国】か?」
国内有数のクランでも間違いなくSランク冒険者のみを囲っており、手堅くゲーム内で訓練を行っている【黄金の国】だ。集落と思った場所が実は演習場だったなんてザラにある。
「私は【黄金の国】に行く。着いてくる?」
「……いいや。俺は止めとく」
【黄金の国】はSランク冒険者の囲い込みが激しいクランだ。俺には無縁の場所だと思っている。
「私は【黄金の国】に入る。ダン伍もそうした方がいいよ」
「それは分かるがSランク冒険者じゃないだろ」
「入国テストがある。行くだけ行ってみよう!」
入国テスト? ゲーム内で国を築いているとは真だったか。
【アイテムボックス】を便利に使いながらA様のロケートに従って移動する。【黄金の国】がどんなクランなのか俺は知ることになる。




