第2話『ゴブリン討伐』
インベントリすらないことに戦慄を覚えたプレイヤーは【アイテムボックス】を得るまでガチャを回し続ける。【アイテムボックス】は序盤から必要なスキルとして知られている。
ゴブリン1匹で1DPと判明して、他のモンスターも検証してみた。
ホーンラビットは何故か2DP。スライムは何故か3DPだった。人外スタートのプレイヤーが大多数を占めているため、通常モンスターでDPを稼ぎやすい土壌がある。
ゴブリンの個体数は異様に多く、スライムはレアモンスター枠だった。ホーンラビットはその中間。ドロップアイテムは基本的にその場で消費される。
芋虫プレイヤーはゴブリンに体当たりするしかなく、ホーンラビットやスライムと戦うには分が悪い。ホーンラビットは角を向けられると体当たりが効かず、スライムは体当たりに強くてしぶといのが特徴だった。
【直剣術】と直剣、それとオールランクSのステータスで序盤のモンスターは倒せる。ノーダメージで切り抜けられるフィールドだ。
「ようやく100DPだ。このゲームはダンジョンのくくりですってな!」
プレイすると命の危険が及ぶという曰く付きのVRMMO。
各国政府が公式にダンジョン認定したVRゲームで、命の危険を伴うデスゲームとして世に出回っている。
『セイマン・アース・オンライン』を出発点とする世界の異変、モンスターの発生はこのゲームを取る者を増やし続けた。今や全世界で100万人がプレイしているVRゲームだ。
100万人がデスゲームに参加してDP、ダンジョンポイントを集めている。その理由はスキルを得ることにあった。
「【アイテムボックス】。アイテムの出し入れは重要だ」
ゴブリン3匹をまとめて倒してドロップアイテムの短剣を拾う。【アイテムボックス】に入れてからすぐに取り出してみた。
「ゴブリンやスライムを倒していればいいんだよな」
政府公認のダンジョン。
入り口には死傷者多数の看板だ。Sランク指定されているためSランク以外は強制退場というゲームシステムになってしまった。
蜘蛛でSランクに至るのは至難の業だ。一瞬、プレイヤーと思ったけど案外モンスターかもしれない。
モンスターの発生原因と揶揄される『セイマン・アース・オンライン』だが、技術的に不可能だとする見解が多数あって今現在は宙吊り状態。サービス終了までに「やっておくべきこと」を知人に教わった俺は、異形だろうと正しい姿勢を貫いて真人間になった。
そのお陰で殆どのモンスターは1撃で倒せるという無双っぷり。リアルに反映されるとなおいい。
しかし【モンスターランク】が上がってしまった。ログアウトボタンは消失している。
「……はぁ。リアルモンスターと戦いたかったのに」
モンスター発生から早1年。政府がひた隠しにしていた異常現象が公になって、VRマシンが異星人に汚染されたとする都市伝説すら取り沙汰される。
地上に溢れるモンスターを討伐してもステータスは見えないが、『セイマン・アース・オンライン』に登録するとステータスが見える。
それにモンスターの発生原因などが酷似している。『セイマン・アース・オンライン』では「ゴブリンが悪しき種を蒔いてアンデッドが出現するようになった世界観」だ。
ゲーム内で死んだプレイヤーがアンデッド化するとは思えない。しかし現実に起こりうる可能性があるという。
「ログアウトがないのは鬼畜だな」
【モンスターランク】がSSだと厄災種扱い。リアルステータスに反映されるまで100日あるというが、それは【ブレイクランク】がSだと100日というだけのこと。
「日が昇ると焦りそうだからな……落ち着いてゴブリン討伐だ」
DP集めでゴブリンを倒して目標である1000DPを貯めた。この辺りにいるゴブリンは狩り尽くしたようで、スライムばかりのいるエリアでDPを効率よく稼げた。
朝日が昇る中、DPガチャを回す。【モンスターランク】だけは回避だ!
・ランク 【ハンターランク】(+3)
・ランク 【アタックランク】(+3)
・ランク 【ハンターランク】(+1)
【ハンターランク】と【アタックランク】……!! 合計値は+7!! デスゲームをクリアした!!
「よっしゃあ!! デスゲームクリア!!」
【ダンジョンランク】は等倍、【ハンターランク】と【アタックランク】は2分の1で相殺するデスゲーム。ステータス異常が起きてしまえば永久退場というリスクを背負ってきたんだ! 永久退場は免れた!!
俺はログアウトして記念のソーダを飲む。常温だけど美味いぜ。
「はぁ~。焦った! マジでデスゲームかと思ったな」
今日は休日。Sランク冒険者としてやっていけるわけだが、100日ルールがあるので100日後までは晩成期間だ。
ゲームで遊んでいた方がいいとする冒険者が多数派なので、俺は右に倣えでその日をスライム討伐に当てた。
「あ。狩り場が被った」
「人? ごめんなさい」
杖でスライムを撲殺する美少女とエンカウントして驚いた。フィールドでは人と出会わないようにするのが礼儀っぽいからな。モンスターは勝手に寄ってくる。
「この場所を狩り場にしてたの?」
「ああ。【ハンターランク】は奇跡の5だ」
「私は【アタックランク】が15。5連続で【アタックランク】が上がった」
「はあっ!?」
「【アタックランク】は上がりやすいよ」
【アタックランク】15の美少女で俺の目は覚めた。2桁アタッカーか! 戦力として考えるべきでは? 始まりの森を突破するには最低でも【アタックランク】が20以上いる。
「【アタックランク】は4だ。5連ガチャでやったのか?」
「1回ずつ回したけど。【アタックランク】20はいるんだよね? スライム狙いだと【アタックランク】が上がりやすい」
「ゴブリン狙いだと【ハンターランク】だったな。それくらいは知ってるぜ」
【ダンジョンランク】は滅多に上がらない。リアルでダンジョン攻略しないとな。今はその真っ最中な訳だが。
「赤いボタンがパーティー申請だよね」
「えっと、そうだったな? 俺とパーティーを組むのか?」
「ゴブリンだけ倒してくれるなら」
「ゴブリンだけ除けるのが俺の役割か」
「うん。【アタックランク】を上げさせて」
俺は仕方なくA様とパーティーを組んだ。
政府公認のダンジョンとなってから通常のメニューウィンドウが消えたからな。全部ボタン式だ。
黒色のボタンがログアウト。赤色のボタンがパーティー申請。もう一度押すと即解除される。
操作は大真面目に2つのみに削られた。プレイヤーキルし続けると赤色のボタンを失うらしい。
頼みの綱であるボタンを失うことがどういうことか。ダンジョンではどんな試練も待ち受けている。危険なゲームに囚われたプレイヤーの末路は悲惨だ。
なおステータスウィンドウは常時展開。常に視界へと収まっている。
「リアルで学生か?」
「学生。そっちもでしょ?」
「まあな」
A様からゴブリン退治を引き受けて、ぼちぼちゴブリンを倒すことにした。




