第19話『討伐する3人』
視聴者、1万2000人。
志穂が霊域の主討伐と宣言して集まった人数である。配信するのはSランクダンジョン開拓のためで、霊域の主と戦う場面を大々的に映すのはリスクがある。
しかし志穂はあえて気にしなかった。霊域の主から少しでも情報を得ることが結果としてダンジョン攻略に繋がるからだ。
「黄金ダンジョンなのが救いだよな!」
「他のダンジョンは開放的だからね」
【黄金の国】が所有する閉鎖的なダンジョンで、攻略プレイヤーに限りがあるからこそ、俺たちは安心して霊域の主討伐に挑めている。
先発したパーティーが死んでいるという状況ではないし、助っ人で志穂が来てくれた。2人で倒そうと思ったのは無謀だったな。
【現実でも突然変異してるのか?】
【ヤバすぎ。黄金ダンジョンは立ち入り禁止じゃない?】
【【黄金の国】、万事休す】
【いや、助けに行ってやれよな】
【まだ1つしか魔法を使ってないんだろ?】
【討伐と言ってもゲーム内ではなぁ】
【霊域の主は倒された例ないんですけど?】
討伐例がないのはSランク冒険者でも討伐を渋りたくなる異次元の強さだから。師匠の言葉は嘘っぱちだ。しかし騙されてここまで来てしまった。
「【王魔法】を連発してくる」
「毒茨も【王魔法】だよな! 危険極まりない!」
「覚醒後のフロアボスを覚醒前のプレイヤーで倒そうとするのはどう考えても自殺行為」
「偶然居合わせたから仕方ないでしょ!」
「それは大して理由がないってことじゃない? 馬鹿なの?」
「俺はリアルで監獄にいるんだ! 理由の1つだろ!!」
そう言うと、視聴者が騒ぎ始めた。
【リアルで監獄にいる!?】
【相当苦労してきたんだな……】
【いや、もしかしなくても霊域の主討伐のために?】
【普通、モンスターに襲われるもんな】
【そして食われる】
【霊域の主倒すためにそこまで……】
応援コメントも増えてきて、追い風を吹かせて攻撃を仕掛ける。志穂のバフ魔法の一部で、配信には【付与師】の効果が表れる。
【完全覚醒やんけ!】
【状態:神だな!】
【神じゃなくてバサラだろ!】
【未覚醒の奴を完全覚醒させるバフか~!!】
【モッホさんすげー】
【モッホさん神】
全身にエフェクトが纏い始めて、完全覚醒したのだと体感で分かった。
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名前 二木探吾
【世界最速の剣士】
【金剛と混合の黄金翅】
【技能通過事項書】
【塵積山な戦闘技能】
【無限格納庫】
HP 154700
MP 149900
SP 324300
DP 110449
スキル 【冒険家】、【直剣術】、【魔剣術】、【魔棍術】、【転移魔法】、【空間魔法】、【光魔法】、【水魔法】、【火蜂鍛造】、【霊域探知】、【魔力探知】、【即死耐性】、【鑑定】、【SPガチャ】
称号 【幸運な森の民】、【混沌の転移人】、【ゴブリンマスター】
+++
【世界最速の剣士】で【金剛と混合の黄金翅】……【水魔法】が不得手だったのは別の要因だろうか? 初めて見るステータスばかりだ。
「しかし黄金石の自然王と似たような特性か……?」
「【金剛と混合の黄金翅】はそうかも」
「勝手に見るな」
「ごめん。戦力分析」
志穂も俺のステータスを見て【金剛と混合の黄金翅】が黄金石の自然王と似たような特性だと考えた。
縛りは上位スキルしか使用出来ないこと。
上位魔法は使えるが下位魔法は使えない。なので、俺には水魔法が使えないと分かった。黄金石の自然王にしてもそうだろう。
「また回復された」
「魔法を盗めるスキルはないの!?」
「ないに決まってるだろ!」
ガチャを回すのは止めだ。その間に黄金石の自然王は回復する。
A様改め海乃は後衛の志穂が増えて喜んでいる。ライブ配信で味方が増えることはあって欲しいが、最悪このまま3人で討伐することになるわけだ。俺たちで倒せる敵だと自信を持っている。
「速い!! いつの間に覚醒したの!?」
「ついさっきだ!!」
覚醒ステータスで黄金石の自然王をその場に縫い留めていく。【世界最速の剣士】であり、【技能剪定事項書】を持つからこそ、スキルの取り回しや瞬間的な速力が向上した。
【うおお、速ええ!!】
【覚醒ステータスぱねえな!!】
【何をインストールしやがったんだこいつ!?】
【敵の回復が追い付いてねえぞ!!】
オリハルコンの剣に熱が籠る。
【火蜂鍛造】を併用したことで赤褐色に染まった剣身が黄金色に染まると途端に鈍重となった。
「これも【王魔法】の仕業か!!」
「剣が重たくなった?」
「ああ! オリハルコンだから耐えられそうだけどな!」
「覚醒ステータスの効果だよ」
斬れ味はとうに失っていたので鈍器のように使っていく。【魔剣術】があるのでよく斬れる鈍器となった。
「【転移魔法】! 気を付けて!」
最上位魔法で最もコストのかかる【転移魔法】を使ってきた黄金石の自然王を【転移魔法】で封殺する。
当たりのゴーレムだ。頭にはそのことしかない。
討伐まで見据えたのはつい先ほど。完全覚醒してから【霊域探知】で黄金石の自然王の弱点が見えた時だった。
【ぶっ倒せ!!】
【しっかり倒せよな!! 俺たちが視てるぞ!!】
【初の霊域の主討伐なるか!?】
【初戦で初々しい槍使いまでいるんだぞ!? どうなってる!?】
【これって倒せるのか!?】
最初で最後の大博打だ。
霊域の主を倒そうなど安易に考えるものじゃない。それでも倒すべき理由が出来てしまった。
視聴者……3万5000人。
ライブ配信を行うアマチュア冒険者が霊域の主を討伐する瞬間を今か今かと待ち望んでいた。
オリハルコンの剣を巧みに操って防御に徹する。【金剛と混合の黄金翅】は鎧のように硬い防殻を作り、【世界最速の剣士】と合わせて攻防一体と化した。
黄金石の巨腕を跳ね返して毒茨を封じると、海乃が【王槍召喚】でスパートをかける。防御を捨てた危なっかしい戦い方だが、援護に回ってくれる志穂がいる。
志穂が現れてから2時間の格闘の末、ようやく黄金石の自然王はボス部屋に倒れた。
「倒したぁー!!」
「……倒せたな」
「霊域の主討伐。DoDだけど達成感がある」
「DPを見て!! あっ、宝箱も!! 凄い凄いやったぁっ!!」
黄金石の自然王が光の粒子になってドロップアイテムと宝箱が姿を現した。海乃の喜びようには苦笑いである。
「討伐おめでとうございます」
「ディジー。来ていたなら参戦すれば良かったのに」
「流石に躊躇います」
何の防備もなく戦うのは気が引ける相手だ。デスゲームだからな。
ディジーのお陰で宝箱が出てくれたのかと後ろ向きになりながら、俺たちは黄金石の自然王が残したアイテムを持ち帰るのだった。




