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第17話『国の重要施設』




 監獄とはモンスターと化した国民を収容する施設のことで、モンスターに狙われる国民を保護する場所である。


 霊域の主が誕生して、俺たちは攻略を迫られた。しかし霊域の主が持つ力は絶大で、現実世界へと超越する【霊能】が数多の冒険者を阻んできた。


「それで到着したわけだが、手続きを踏めば施設に入れるらしいな」


「モンスターに狙われたんだ。俺も入るしかない」


「そんなことはないだろう。何故、マイナス方面に考える?」


「霊域の主を倒すためだって。そいつを倒さないとならないんだ」


「クランに所属したんだろう? 仲間たちに任せておけ」


 父さんは頑なに俺の施設入りを拒んだ。俺には一石二鳥だとしか思えていないし、コサメを厄介払いするわけにはいかない事情がある。


「俺はトレーナーになりたいんだ。コサメ自体に危険はないし、他の奴らにしてもそうだ。【霊能】とやらをここで調べたい」


「そういえば覚醒中だったな……分かった。この施設なら問題ないだろう」


「さっきから笑えない会話なんだけど」


 お前に決定権はないんだ、コサメ。いいから黙って施設に入れ。


 山中に造られたモンスター管理施設、通称監獄はモンスターの自然発生する危険地帯に兵士を駐留させるために築かれている。【黄金の国】の本拠地もここにあってクランハウスが軒を連ねる。


「お前には学校だろ?」


「違うし」


 俺はコサメを連れて施設に入っていった。


 モンスターの管理を担う中枢であり、ダンジョンの発生原因を調べる機関だ。モンスターの自然発生は霊域の主が原因と判明しており、霊域の主を討伐する目標を掲げるクランもいる。


「ようこそ、モンスター管理局へ」


「俺たち、施設に入所したいんですが」


「そうですか」


 監獄の厳かな受付では可哀想な目で見られた。


「覚醒前ですか? でしたらC棟で数日間、様子を見ることになります。そちらのモンスターは人間ですよね……?」


「私、人間」


「C棟にも羽虫やゴキブリがいますので安心してください」


「安心出来るわけない!!!」


 人間の形を失ったモンスターがこの監獄に捕まってるんだ。俺は心配いらないだろうが、おぞましい見た目だと本当に捕まる。


 C棟は見た目で捕まった者が集まるようで、檻の中には気味の悪い昆虫顔が沢山あった。【モンスターランク】ばかり上がるとモンスターに襲われてああなるんだよな……『セイマン』は怖過ぎる。


 俺にもその予兆があったのは事実だ。ゲームでどうにかするしかないため、房には備え付けのVRマシンがあった。


「同房か。よろしくな」


「お前嫌い。私を監獄に連れて行った初めての人間!!」


「俺が人間で良かったな」


 コサメのせいで化け物になりかけたのは言い含めておく。とっとと霊域の主を倒して監獄から出して貰うか!


「そうだ。【鬼人化】が使えるだろ?」


「うん。人間の姿にもなれる」


「角があったら人間じゃないだろ。何かあれば【鬼人化】を使ってくれ」


「ふんっ! お前は私の栄養で命令は私が出すの!!」


「そう言うから監獄に来たんだぞ。俺の自己犠牲を理解してくれ」


「私なんてそこら辺に捨てれば良かったのに!」


 それはそれで心が痛むんだ。


 俺は備え付けのVRマシンで『セイマン』にログインした。ネカフェより居心地は悪いが、俺の手で霊域の主を倒すためだ。


「おっ、A様だ。こんな時間にいるんだな?」


「まあね。こっちを優先しないと昆虫になっちゃうでしょ?」


「その通りだけどな」


 A様もログインしていて少なからず驚いた。


「しかし入国テストはやらないと思うぞ。事件があったんだ」


「事件って?」


「霊域の主だ。これから倒しに行く」


「倒すって霊域の主を!?」


 正気じゃないとA様は俺に言い放った。


「だって霊域の主は通常のフロアボスと比肩しない強さを持つモンスター! 自衛隊パーティーが何度も全滅させられて、基地がモンスターハウスになったって有名じゃない!!」


「それでも攻略情報がいるだろ。1人で行くしかないんだ」


「1人でってそんな無茶な」


 発見者である以上、討伐するまで関わるしかない。Sランク冒険者に任せるという選択肢はクランの助けを得られない時点で望み薄だ。


「私も行く。地下シェルターにいるから安全だしね」


「地下シェルターってどんな金持ちだ」


「モンスターに汚染された地区なんて山ほどあるでしょ。『セイマン』攻略用の地下シェルターがあるの」


 たかがゲームのために地下シェルターを造る金持ちの気が知れなかった。『セイマン』攻略用っていくらするんだろうか?


「本当に大丈夫か? 俺は施設に入ったぞ」


「貴方こそ頭大丈夫?」


「さあな。近くに喋る芋虫がいる」


「監獄に入るくらいなら私に相談してよね~!」


 武器装備を整えて、俺とA様は最下層に降りた。


「昨日と明らかに違うよ!」


「金ピカの扉になったな。これは当たりなのか?」


「当たりかも!!」


 ボス部屋の扉は金色に染まっていた。1日経過して霊域が広がったと見るべきなのか? 霊域の主は現実にすら作用する。


「金ピカのゴーレムだろうな」


「殴れば勝てる相手かな~。しかしデスゲームだよね」


「【即死耐性】はあるけどな……そっちは?」


「ない! だけど種族特性があるかな?」


「種族特性? それってお前」


「うん。私、リザードマンなんだよね」


 リザードマン……霊域の主で最も有名なドラゴン種の【霊能】が厄介なことに【変異】だった。範囲内にいた人間は冒険者によって討伐されたドラゴンの血を吸ってしまい変異を遂げたとされている。


「変異の程度はフェーズ4。顔以外は鱗肌だよ」


「それでシェルター暮らしなのか……」


「そういうこと。監獄にいるなら同じ穴の狢だよ」


 命を賭して戦う理由があるようだ。霊域の主であればなおのこと。


「霊域の主を倒せば治るかもしれないね!」


「だな! 俺たちで倒すか!」


「武器はちょこっと不安だけどね~! 何かいいスキルない?」


「お前な。交換出来る代物はあるのか?」


「あるから聞いたの! URの【アイテムボックス】!!」


「俺が上げた奴じゃないか!!」


 しかし同じURで【王槍召喚】があったか……スキルトレードをしまくるとそれはそれで問題がある気がする。【無限格納庫】もあるんだし。


「はぁ……分かった。トレードしてやる」


「やった! 何のスキルと?」


「【王槍召喚】だ」


「【槍術】なら持ってる! 【王槍召喚】とトレードだね!!」


 【アイテムボックス】と【王槍召喚】をトレードして、戻ってきた【アイテムボックス】に少なからず安心する。


 黄金に支配されたボス部屋を軽い気持ちで覗いてみる。


 意思を持った黄金の眼が俺たちを捕捉すると、獣のような姿形で咆哮を上げた。





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