第14話『配信する2人』
幻のGR。
100万人のうち1人が持っているかというスキルがこの世には存在する。スキル目当てに芋虫で戦うプレイヤーがいるのも事実で、人間と芋虫にスキルガチャの優劣はない。
しかしDPを大量に稼げるのは人間のみだ。俺も志穂も人間アバターで『セイマン』を始めている。
「入国テストは以前から有名だったけど私はクリア出来なくて」
「【黄金の国】にはお世話になったわけだ」
「そういうこと。ランク上げでは黄金ダンジョン。DoDだとEランクより下ってことになるから独占されやすい」
「うっかりプレイヤーを殺さないだけいいぞ」
「たまにある」
志穂は言葉少なにそう言う。
「ランクが上がらなくなるとダンジョンに潜るしかないよな」
「私もランクが上がりにくくなったかな」
放課後にそんな話をして、俺たちはそれぞれ帰宅した。
帰宅して流れるように『セイマン』にログイン。大智はリアダンの方にかかりきりなので、ゲーム内で会うことはまずないだろう。
入国審査場Aで志穂を待っていると夜の八時過ぎにやってきた。
「到着。待たせてごめん」
「そんなに待ってないぞ。GPは持ってるんだな」
「国の系列店が多いからね」
国と一文字で呼ばれるのも【黄金の国】がトップクランだからだ。
「それと配信してる。【再生連合】だからノルマ5時間がある」
「キツいノルマだな~」
「Sランクダンジョンを映すのが目的だから仕方ない」
【再生連合】は【黄金の国】と並ぶ大手クランだ。イロモノプレイヤーばかりが集まっていて、昆虫から人型に進化したサイボーグとかいたりする。人外から始めたプレイヤーが多く集まるのが特徴だ。
「どうして【再生連合】に入ったんだ?」
「昆虫に悩まされて。黄金ダンジョンはちょっと無理かな?」
「入国許可は取れるだろ」
「厳しいと思う」
クランハウスに招待すると、ディジーに仮入国許可を取った。
「配信はいいですね。ダン伍もしてみてはどうですか?」
「俺がですか」
「クラン内にも真楠さんや旅五郎さんがいます」
【黄金の国】配信はいつも見ている。オーブハンターがいるからな~。
「じゃあバトンタッチで」
「いきなりか!」
何かのスキルで相互の状態がひっくり返った。覚醒ステータスの力か? 配信状況を付与出来るとは恐れ入った。
「えっと、ダン伍だ。視聴者多いな!」
「友達が見てる。私はモッホ。よく名前で弄られる」
「そうだったのか……大変だな」
視聴者は2万人。気軽にバトンタッチする人数じゃない。
【視聴者は芋虫】
【八割は芋虫】
【黄金ダンジョンに来てるってマ?】
【モッホモッホ行くで】
【どの集落だっけ? 南?】
2万もの芋虫がいる集落には心当たりがある。ここから1日の距離か……心配になってくるな。
「ディジーさん。後で襲われたりしないですか?」
「地上の探知狩りが済まないことには下手に動けないです」
「探知狩り?」
「地上に……現実世界に溢れ返ったモンスターの狩りですね。その手のモンスターは九人類が広めたとされています」
【転移魔法】で現実世界にプレイヤーを送る手段があるとは聞いた。芋虫アバターだと芋虫のまま囚われる。
「探知狩りはSランク冒険者のお仕事」
「そういうことです。【黄金の国】の精鋭部隊が探知狩りに当たっていますが、根源であるSランクダンジョンを封じなければならない状況です」
DoDを封じられるのか? 疑問は尽きないが、システム本体をシャットダウンするよりはと考えられている。海外のSランクダンジョンはもっと苛烈な環境だからな。
地上と天上の境を広げたのが九人類。天上とはゲームのことで、DoDの由来でもある。
「黄金ダンジョン、攻略してきます」
「ええ。気を付けてください」
ディジーに許可を貰えたので、俺と志穂はダンジョンに入った。
「これ、リアルだと死ぬ案件」
「いきなりどうした?」
「虫が嫌いで四堅ダンジョンにいたの知らない?」
「知らなかったな」
四堅ダンジョンすら知らないからな? 虫がいないのか?
【まさかリアルで黄金ダンジョンに……】
【嘘だろ俺たちじゃん】
【黄金ダンジョン、割とおしゃれだよな】
【ゲームで潜れないけどリアルで潜れる優越感】
【地上で潜った方がいいべ】
これってリアルバレしないか?とふと疑問に思った。
「黄金ダンジョンってリアルだと人気だったな~」
「Fランクで誰でも入れる。いもむし組が多いのもある」
「いもむし組か~。酸っぱいイメージしかないな」
「食べたことあるの?」
芋虫から始めた時はこのゲームは間違っていると思った。しかし正しい姿勢を取り続ける中で俺は悟ったんだ。
それと芋虫、食べたことがある。未来のこんにゃくだ。
「意外と美味しかったな」
「悲鳴上がってない?」
配信コメントで悲鳴が上がった。志穂は慣れてるなぁ~。
「黄金ダンジョンに行ってみよう。レッツゴー」
「緩いな~」
「いもむしと話してるといもむしに戻れるらしい。どうする?」
「視聴者が減る前に戻すべきだろ」
「リアダンに潜るからどっちでもいいんだ」
そういうものか? 黄金ダンジョン攻略は今更とか言われてるぞ?
「リアダンでは配信しない。しないったらしない」
「すればいいだろ。戦うのは俺と奴に任せろ」
「奴ってダン伍の友達? 名前なんだっけ?」
「タツノオトシゴだったな」
大智は【筋肉馬鹿】だ。それ以上でもそれ以下でもない。配信すると言ったら喜んでダンジョンに潜るような奴だ。
【何万人というプレイヤーが再起をかけてトライしてるんだ】
【俺たちあの苦行に耐えられんかった】
【いもむし組って可愛いよね】
【辺境配信はいいけど配信バトンをください】
配信するには配信用の回線がいる。それを覚醒ステータスで補えてしまったから『セイマン』ではライブ配信が流行りに流行っている。
「ダン伍はどうやって黄金ダンジョンを攻略したの?」
「剣一本で攻略した。【魔剣術】があると向かうところ敵なしだからな」
「剣はオリハルコンだよね?」
「ああ。【黄金の国】ショップで買えた一番高い剣だな。250mだった」
「リアダンでは使えないから注意してね」
それもそうだな! 【黄金召喚】でワンチャンあったが、ヒマリとスキルトレードをした。レア度はSRだしもう一回引けるだろ。
【ガチャ引きてえ】
【ガチャ引こうぜ、魔剣士!】
【魔剣士ガチャだ!】
【いもむし組にDPを恵んで欲しいの】
【オリハルコンの剣なんてドブに捨ててしまえ!】
言いたい放題の芋虫たちに俺は己のDPを見た。
DP 360449
【SRガチャ】を10回は回せる。そのうちスキルは1、2個だ。ランクばかり上がって化け物級のステータスと化している。
「レアガチャを回してみるか」
「回すの?」
「ああ。攻略しながら20回は回すぞ!」
1層降りるごとに1回回してフロアボスを討伐してから5回回す! ゲン担ぎには丁度いいだろ! 唸れ、俺のガチャ魂!!




