第12話『黄金と青王、そして瞑主』
【黄金の国】は活動範囲を2つのダンジョンに絞っている。黄金ダンジョンと青王ダンジョンだ。
「覚醒者の強みは人外のステータス。【黄金の国】ならまだいいけど」
「とは言ってもダンジョンを独占するタイプなのは変わらないよ」
金萌はそう付け加える。
「2人はクランに未所属なのか」
「未所属だよ。僕は『セイマン』を始めた時期が速かったからね。もちろん人間アバターから始めた」
「まあそうだよな。俺も頑張ってるけどリアダンで忙しい!」
「DoDも立派なダンジョン」
志穂はDoDメインで活動しているゲーマーで、冒険者とはならずにダンジョンを攻略している。
「魔境には行かないからな。ダンジョンにも早々行かないだろ」
「そんなこと言うなよ~。ダンジョンに行こうぜ!」
「DoDで満足してるんだ。ガチャを回すのが目的だな」
「私は一応、【再生連合】の所属」
「【再生連合】だったんだ。てっきり未所属と思ったよ」
金萌は驚きの声を上げる。
「【再生連合】って超有名クランじゃないか!」
「ゲーム内では有名じゃないけどDoDの攻略部隊は強いから。ソロ攻略よりはパーティー攻略」
「まあそうだね。【黄金の国】は独自色が強いと聞いたし、パーティーは早々組まないだろう?」
「そうだな。入国テストではソロの実力を図られた」
「僕だってパーティーを組んで攻略してるよ。ソロ攻略だと中盤のフィールドボスで躓くからね」
九人類の作った魔境を攻略する気はないんだ。Sランク冒険者になって芋虫アバターのプレイヤーをどうにかしてあげたい。それで金を稼げるなら儲けものだ。
「大智が芋虫アバターでも俺は見捨てないからな」
「芋虫アバターでは始めないって!」
大智の反応に志穂はくすくすと笑う。
「今はどの辺りなんだ?」
「タツノオトシゴだぜ。35進化だ!」
「ウニになると楽だからな。気を引き締めていけよな」
「俺だってSランクになる!!」
35進化だとCランクだ。人外ではあるものの余裕でゴブリンを倒せるランク。ただまあキャラメイクも装備選択も出来ない。
覚醒者となれるのはランクS以上のみ。【ブレイクランク】が低いと覚醒まで時間がかかるため、全体的にステータスが上昇する初期画面の状態が最良だ。
初期画面勢が多いのもステータスの覚醒が目的で、【ブレイクランク】の上昇をさせたいからだ。
リアルで【ブレイクランク】を上げようと思ったら、ダンジョンを突破する必要がある。それをゲームで可能としたのが『セイマン』だ。
俺はDoDにしか潜ったことがないため冒険者の風上にも置けない。しかしいずれは冒険者登録をして活動することになる。
「完全覚醒まで時間がかかる。その時が楽しみ」
「楽しみにしててくれ」
「冒険者ギルドに登録するなら一緒になる」
「志穂!? どういう風の吹き回しかな!?」
金萌も志穂と同じく冒険者ギルドの登録を先送りしている。Sランクダンジョンをゲームとして攻略している性質だ。それに金萌には馬鹿でかい天使の翼が生えている。冒険者向きでは無かった。
「【霊域探知】で見れば分かる。二木君は最短で覚醒した。完全覚醒すればSランク冒険者になれる」
「黄金ダンジョンをソロ突破したから着いて行くと言うのかい? Sランク冒険者になるにはAランクダンジョンを突破しなければならないんだ! この辺りのAランクダンジョンと言えば荒神ダンジョンしかない!」
「荒神ダンジョンをクリアする」
にっこりと微笑みかけてくる志穂に俺は居たたまれなさを覚えた。【霊域探知】ってレア度SRのスキルだよな? 何を見られたのかは分からないが【鑑定】で詳らかにされてしまうか。それよりもだ。
「えっと、一緒に攻略するのか?」
「一緒に攻略したい。私だってかなり戦える」
DoDを攻略するのとはまた異なる。冒険者の死や九人類の争いで問題の火種となっているAランクダンジョンを攻略するためにパーティーを組むのか。
「ゲーム内で会えるか? 俺は入国審査場Aで待機と言われてるんだ」
「分かった。会いに行く」
「助かる。覚醒してもゲーム内では変わらないよな」
「変わらないけどスキルの恩恵がある。同じ身体能力で同等の戦闘力。貴方の強さを確かめるにはゲームしかない」
「志穂」
金萌は純粋に志穂を心配して言っている。志穂は俺のことを【冒険家】だと見抜いてAランクダンジョンに誘ってきたんだ。
「クランの縛りはこの際気にしないで」
「そこまで気にしてない。俺は【黄金の国】に入ったばかりだ」
「じゃあ二人とも冒険者登録するんだな!」
大智は嬉しそうな声で言った。
「ゲームでDoDを攻略すればAランク冒険者にはなれるが、二人ともそうするわけじゃないんだろう?」
「荒神ダンジョンをクリアするつもり。ゲームでクリアしたダンジョンは特例で入場出来るから先にDoDを攻略する」
「何も危険を冒す理由はないだろう。黄金ダンジョンに行くなら黄金ダンジョンを攻略すればいい」
金萌の言葉に俺と大智も頷く。
「金萌の言う通りだな。先に黄金ダンジョンをクリアしないか?」
「……分かった。その次は私のいる瞑主ダンジョンで」
「互いに知っているダンジョンを攻略するのであれば問題ないだろうな」
「金萌はリアダンに潜ったことないだろ!」
「そんなことはない! と言いたいが、潜ったことはないな!」
黄金ダンジョンはEランク指定のダンジョン。
冒険者登録ではどれだけゲームの腕が立ってもEランクから始まる。通常はHランクから始まるが、ランク3つを飛ばせるステータスはある。
覚醒後に冒険者登録することになり、覚醒するまではゲームでランク上げだ。1週間でどれだけランクを上げられるかにかかっている。
「倒していますね」
「ディジーさん」
入国テストと時間をずらしてボス部屋に籠っているとディジーが現れた。
「ドロップは平凡ですか?」
「まあそうですね? 換金アイテムだと思っています」
「レアドロップしない理由は私にあります」
そんなカミングアウトをされてスキルと称号のことを教えて貰った。
「私の持つ豪運スキルと【豪運の強天使】という称号の効果でこの場の幸運が私に向かいます。なので貴方には宝箱が出ません」
「それはスキルオーブを得られないということですか」
「はい。他のダンジョンでも同様の現象が起こると思っていてください」
「クラメンから幸運を吸い取るんですか……?」
【モンスターランク】が真っ先に上がった己を憎んだが、ディジーの幸運を憎むべきだったのかもしれない。
「ボス部屋には宝箱が出ます。試してみますか?」
「試します」
黒曜石の自然王を100万DPと勘違いしたのは入国審査組だから。このディジーは何も悪くないと言い聞かせてパーティーを組んだ。




