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スレンダーなのに色々でっかい地味で気弱な中田さんをクズ彼から救った俺は、全力で彼女を可愛くしてあげたい。  作者: ファッション捜査課のスカリー


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第7話 急接近した距離、開く心の扉

気がつけば、目の前にはきれいに空っぽになった食器がずらりと並んでいた——


「はぁ〜……凄い美味しかったよ中田さん」

「えへへっ、ありがとう雪村くん。こんなに沢山食べてくれて…私嬉しいなっ」


中田さんの料理はまさに絶品で、俺は夢中でそれを味わっていた。

満たされたお腹とともに心の緊張も少しずつほどけていく。


そんな俺の様子を見ていた中田さんは、優しい笑みを浮かべながら静かに立ち上がって食器を片付け始めた。


「じゃあこれ片付けて食後の飲み物持ってくるね!」


そんな健気に手を焼いてくれる彼女の姿に、俺はいても立ってもいられなくなり立ち上がって声を掛ける。


「中田さんちょっと待って!俺も手伝うよ……そんな全部やってもらうなんて申しわけないし……」

「でも、雪村くんはお客さんだし……」


「中田さんっ、俺はお客さんじゃなくて……友達……でしょ?だから手伝うよ!」

「雪村くん……」


一瞬だけ大きく揺れた彼女の瞳。

それはすぐに花が咲くような柔らかな笑顔へと変わっていった。

その変化に俺の心は不意を突かれるように揺らいでしまう。


「うんっ……!じゃあ、この食器持って一緒にキッチンまでついて来てっ」


そう言って楽しそうに肩を揺らしながら先に部屋を出て行く彼女の背中を、俺はクスリと笑いながら追いかけた——



————



それから中田さんと一緒に洗い物を済ませ、コーヒーを淹れ、それを手に彼女の部屋へ戻った俺たちはさっきと同じく隣り合って座り、湯気の立つカップを手に取りながら他愛もない会話に花を咲かせていた——


料理の話、学校の話、好きな漫画の話……


敬語をやめた中田さんはまるで押し込めていた言葉があふれ出すように、止まらないくらい喋ってくれた。

その姿に俺は急に彼女との距離がぐっと近づいたような感覚を覚える。


思っていた以上に話が弾んで、女の子とこんなにも長く会話するのはたぶん人生で初めてだ。

視線を向けると彼女はそっと微笑んでくれて、それがやけに優しくてあたたかい。


そして、カップの中のコーヒーが冷め始めた頃——


中田さんはふぅと息を吐き、ポツリと話し出した。


「こんなにいっぱい誰かとお話したの本当に久しぶりだよ。雪村くん、私のわがまま聞いてくれてありがとねっ」

「そんな、俺の方こそ怪我の手当どころかこんなにご馳走になっちゃって……」

「全然いいんだよ……私、嬉しかったよ……」


そう口にした瞬間、どこか憂いを帯びた表情を見せた中田さんに俺は小さな違和感を覚える。

そして彼女は静かに息を整えると、改まった様子で口を開いた。


「ねぇ、雪村くん……ちょっと聞いてもいい?」

「ん?いいよ、何でも聞いて?」


「何度も聞くのってよくないかもしれないけど……雪村くんはなんで私を助けてくれたの?……なにか、特別な理由はあったの?」


その一言で空気がふっと変わった気がした。

中田さんの口から出たその質問は、今日、彼女と初めて言葉を交わしたときにも聞かれたものだ。


そのとき俺はこう答えた——


『中田さんが怖がってたから』


あの言葉に嘘はない。

だが……本音は寧々さんの事などもあり、もっと複雑だった……

中田さんはそんな俺の気持ちを見透かしていたのだろうか?


「それは………………」


その先の言葉が出てこない。気の利いたセリフなんてなおさら。

黙り込んでしまった俺を見て、彼女は少し寂しげな笑顔を向けてきた。


「ごめんっ、変な事聞いちゃって……もしかしたら、私のこと前から気にしてくれてたのかなぁ…?なんて思っちゃって……バカだよね私……ごめん今の忘れて!えへへっ……」


作り笑いだった……無理やり笑ってみせたその顔に俺は言いようのない胸の痛みが襲う。


「あっ……えっと……」


俺の情けない声が部屋に小さく響く。

こんなときドラマの主人公ならきっと言えるんだろう。


『実は君のことをずっと見てた……ずっと好きだった』なんて。


でも俺には、そんなセリフを堂々と口にする甲斐性も図太さもない。


確かに中田さんはめちゃくちゃ可愛い。いや可愛くなる素質がたっぷりある。

だけど、今日初めて話したばかりの彼女に急に『好きだ』と言えるほど俺は軽くない。

むしろ、それはこれから彼女を知っていく中で育まれる感情のはずだ。


しかも、今の彼女はクズとはいえ元カレにフラれたばかりで心はきっと弱っている。

それに付け込んで気持ちを揺さぶるなんて……それは俺が一番嫌っていたやり方だ。


そしてなにより……


まだ、寧々さんへの想いが完全に消えていない。

あんなにひどくフラれたくせに、文化祭や体育祭で一緒に笑った記憶が今でも頭にこびりついている。


グルグルと巡る思考の中、黙り込んだままの俺を見つめていた中田さんは少し申し訳なさそうに目を伏せ、そっと口を開いた。


「ごめんね、せっかく楽しくお話してたのに変な感じになっちゃって……私いつもこうなんだ、空気が読めないっていうか……」

「……。」


「雪村くんに助けてもらって、私……甘えちゃってるのかな?今日会ったばかりの雪村くんにこんなこと話すなんて、ちょっと変かもしれないけど……。私ずっとひとりぼっちだったから誰にも話せなくて……気持ちが溢れちゃって……。幻滅してもいいから聞いてほしいことがあるの……」


「………大丈夫、幻滅なんてしないから聞かせて。中田さんの話……」


俺は彼女を見つめて、そっと言った。

自分のことは上手く話せない。でも彼女の話なら受け止めてあげられるかもしれない。


いや、どこか昔の俺に重なってどうしても受け止めてあげたかった。

ひとりぼっちの辛さは十分知ってるから……


中田さんは視線をどこか遠くへやり『雪村くん、ありがとう』と呟いたあと、どこか苦しげな様子で心の扉をそっと開いた。


「私ね、中学の頃からこんな感じで色々無駄に大きくて地味だったから……よくデカ女とか言われて虐められてたの。それがすごく辛くて……それからだんだん周りとの関わりが怖くなって、避けるようになっちゃって……気付けばひとりぼっちになってたんだ」


「………。」


「それでね、こんな地味で取り柄もない私でもやっぱり、心のどこかには女の子な部分があって……。いつか私を見つけてくれる王子様みたいな人が現れて、私を幸せにしてくれる……なんて、おとぎ話みたいなことを考えたりしてて……。そんなときに先輩が私の前に現れたの」


淡々と話そうとしているのに、彼女の口元はかすかに震えていた。

先輩……その一言が中田さんの声に深い影を落とす。


「それで……ずっとひとりぼっちだった私が人生で初めて『好き』なんて言われて……初めて、誰かと一緒にいていいんだって思っちゃって……それだけで嬉しくて浮かれちゃって……気づいたらあんな酷い人と付き合ってた……私、ほんとバカだよね」


「……………。」


「……ほんとは、わかってた……先輩が私のことなんて好きじゃないって。雪村くんみたいに目を見て話してくれたことなんて一度もなかったし、すぐ体に触ろうとして、エッチなことばっかりしようとしてきて……。先輩、酷いんだよ?私が頑張って作ったお弁当だって、ひとくちも食べないで全部捨てちゃったの。だから雪村くんがおいしいって食べてくれるの、ほんとにすごく嬉しくて……」


許さねぇ、あのクソ野郎……!いつか絶対、地獄見せてやる……!

気づけば俺の拳はガチガチに握りしめられていた。

目を閉じればすぐ、あのゲスな後藤の面が浮かんできて吐き気すらしてくる。


「私ももう子供じゃないし、先輩の目的がそういうことだってわかってた。だけど絶対にそれだけはさせなかった……私なりの抵抗だったのかな?……でも、それでも、どこかで信じたくて。好きって言ってほしくて…必要とされていたくて…ひとりに戻るのが怖くて……だから私は、離れられなかったの…………」


涙が溢れ、眼鏡の奥のその美しい顔がくしゃくしゃに崩れていく。

抑えていた心の叫びがついにこぼれたかのように、彼女は俺の方へ振り向き震える声で……でも真っ直ぐに言葉を紡いだ。


「雪村くん……こんな私を助けてくれて、ありがとね………雪村くんが来てくれなかったら私……もうダメだったよ……」


トクンと鼓動が彼女の涙に共鳴するように震える。

だが、どんどん激しさを増す彼女の嗚咽に俺はただ黙って向き合うことしかできなかった。


そっと手を伸ばしてあげたい。優しく抱きしめてあげたい……でも……なぜかそれが怖くて出来ない。


すくんだ身体が情けなくて、俺は無力な自分を噛みしめながら陰った表情で彼女の言葉を聞き続けていった——




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