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スレンダーなのに色々でっかい地味で気弱な中田さんをクズ彼から救った俺は、全力で彼女を可愛くしてあげたい。  作者: ファッション捜査課のスカリー


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第32話 レッツメイクアップ!

初のジムトレーニングを終えた俺は、全身の筋肉痛に悲鳴を上げながらも、気づけば木曜日の放課後を迎えていた——


カレンダーを見れば9月もそろそろ終盤。文化祭まで残すところ約1ヶ月だ。


俺はひたすら地獄の身体作りに励み、栞はトレーニングと並行して改善できるところは早めに手をつけていかないと間に合わない……そんな段階に入ってきた頃合いだった。


そして、今日の放課後は彼女のメイクの方向制を決めたり、実際のやり方を教えるということになっていて……なぜか流れで人生で2回目となる栞のお宅にお邪魔していた。


道具を持って学校やカフェでやることも考えたが、『おうちでやろっ♡』なんて可愛く言われたら断れるわけもなく……


相変わらず栞の部屋は整然としていて、女の子らしい柔らかい空気が流れている。

以前と違い、ベッドの上にブラジャーが無いことに妙にホッとしながら俺は栞と向かい合うように座っていた。


「で、今日はメイクをやってくんだけど……栞って普段メイクはどんな感じでやってるんだ?」


「メイクはね、殆どやってないんだよね……」


「そっか……じゃあ普段はどのメイクアイテム使ってるか簡単に教えてくれるか?」


「えっとね……コレ使って眉毛描いて、このリップ塗ってるだけなんだよね……えへへっ……」


机に並んだメイク道具をどこかバツが悪そうに指差す栞。

という事はほとんどノーメイクのままでこの可愛さ。栞の底力は計り知れない……


「おっけ……じゃあ今日はがっつりメイクを教えていくから、ちゃんと覚えて明日から実践してこれるか?メイクってくり返しが大事だから……」

「………うん、がんばる!……できるだけ……」


一瞬、栞が何かを迷うような間があって俺の脳裏に不安がよぎった。


栞ってオシャレにはマジでズボラなタイプなんだよな……でもここは頑張ってもらわないと……


そんな不安を棚に上げ、俺は栞の顔をじっくりと見つめ彼女を最高に可愛くするためのメイクイメージを思い描いていく。


白く透き通るようなニキビ一つないキメ細やかな肌。整った眉に、吸い込まれそうな二重の瞳。鼻筋の通った小さな鼻、そして艶やかな薄い唇……


正直、ほとんど何も手を加えなくても十分すぎるくらい綺麗だ。

けど、俺ならこれをもっと可愛くできる。自然体のままもう一段階上の魅力を引き出してみせる。


そんなイメージを描きながら栞を見つめていると、彼女はなぜか目線を泳がせはじめ、次第に頬を染めていった。


「かかかっ……薫くんっ!?……ちょっ、ちょっと近すぎだし、見つめすぎだよぉ…………そんなに見つめられると恥ずかしいよぉ………」


「あっ……ごめん!?つい真剣になっちゃって………」


栞の言葉にふと我に返る。


気づけば息が触れそうなほど彼女の顔が近くて、思わず俺も照れながら謝ってしまった。やっぱり俺はオシャレに本気になると周りが見えなくなるらしい。


そんな俺から視線を逸らしてモジモジと照れ隠しする栞……めちゃくちゃ可愛い。

でも方向性はある程度固まった。栞が我慢してくれたからこそ、だ。


「よしっ……とりあえず方向制は決まったから、実際にメイク始めてもいいか?」

「うっ、うん……よろしくお願いしますっ!」


栞が緊張気味にコクリと頷く。

その様子を確認してから俺はそっとメイク道具に手を伸ばし、真正面から彼女と向き合った。


「よしっ!………じゃあ、俺が栞をもっと可愛くしてやるからな!!」——



————



わずか10分ほどの作業だったはずなのに、俺の心はまるでマラソンを走り終えたかのように消耗していた——


栞の肌に触れるたび、指先に伝わるやわらかな熱と感触に緊張が走り理性がぐらつく。

その可憐な横顔、透き通るような白い肌に近づけば近づくほどときめきで息が詰まりそうになる。


童貞ってこういう場面では致命的だなって痛感した。

それでもフェイスパウダーまで終えた自分を今日はちょっとだけ褒めてあげたい。


そして今、俺の目の前にいるのは……まさに天使そのものだった。


陶器のような滑らかさを宿す肌。くりっとした瞳をより深く際立たせる繊細なアイライン。ふんわりとのせられたチークは、穏やかな色香を纏い彼女の優しさを際立たせている。


それを作ったのが自分だというのに、あまりの可愛さに目を合わせることができないほどだった。


「栞、できたぞ?」

「…………………」


完全に無反応。まさか聞こえてなかったのだろうか?


「栞?出来たぞ…………?」


「…………………」


「おーい……栞??」


まるで銅像のように固まったままの栞の前で、試しに手を振ってみたが……やはり反応はない。


えっ……マジでどうしたん?


そう思った俺は、おそるおそる彼女の肩に触れてみた。その瞬間——


「………はぅ!?」

「うおっ!?」


栞がビクッと肩を震わせ、驚いたように声を上げた。

その反応に逆に俺のほうが驚いてしまう。


「栞、どした?大丈夫か?」

「あっ……うん………その、なんか緊張しすぎて……完全に魂が抜けちゃってたみたい……」


えっ……そんなことあるぅ?


とは思うものの、確かに俺も栞にずっと至近距離で見つめられたら同じようになるかもしれない……


まだ完全に平常に戻りきっていない栞を横目で見ながら、俺は机の上に置かれていた手鏡を手に取り彼女に向けてそっと差し出した。


「ほら、どうだ?………俺的には最高に可愛くしたつもりなんだけど……」


ジーッと鏡を見つめて数十秒……

栞は驚いたように目を見開き、その目は手鏡と俺の顔を交互に行ったり来たり。


「えっ、これ私!?………薫くんめっちゃメイク上手くない!?これ魔法だよもう!?肌とか目元とか別人だよっ!?」


「そっ……そうか?喜んでくれてよかった…………じゃあこれを自分でも出来るように今から練習していこうな!」


「私に出来るかなぁ……?」


「大丈夫!出来るまで教えるから!ミスコン当日は俺がしてやってもいいけど、なにかあったらマズいから最低限覚えような?」


「うんっ!こんなになれるなら……私……頑張るっ!」


両手をぐっと握って、やっといつもの笑顔を見せてくれた栞に少しだけ安心することができた。


その言葉を皮切りに俺はメイクの指導を始め、思った以上に苦戦しながらもなんとか彼女にスキルを会得させることに成功した——


気付けば、外はすっかり暗くなっていた。


やべっ……そろそろ帰らないと栞に迷惑かけちゃうよな……


そう思い、急いで荷物をまとめて帰る準備をしていた俺の視界の端で、栞がこちらをじっと見つめているのがちらつく。


そして彼女はおもむろに俺の制服の裾をキュッと掴み、恥ずかしそうに頬を染めて上目遣いで一言……


「ねぇ薫くん……今日も一緒に……ここでご飯食べていかない……?」——



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