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スレンダーなのに色々でっかい地味で気弱な中田さんをクズ彼から救った俺は、全力で彼女を可愛くしてあげたい。  作者: ファッション捜査課のスカリー


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第33話 ○○童貞卒業

栞の部屋のローテーブルの上には、先ほどまで並んでいたメイクアイテムは姿を消し、代わりに平らげられた皿たちが所狭しと並んでいた——


結局というか当然というか、栞の提案を断ることなんてできず、今回もその美味しい手料理に舌鼓を打っていた俺。

もちろん隣には栞。いつもの定位置だ。


最近はようやくこの距離感にも慣れてきたつもりだったけど、今日の栞は一段と可愛くて、その慣れがまったく通用しないのが辛い。栞、どんどん可愛くなる……


一通り食事を終え、くだらない雑談をしながら過ごす中で、ふと以前から気になっていたことを思い出した俺は、それとなく栞に尋ねてみた。


「なぁ栞……そういえば、ミスコンのパフォーマンスって何する予定なんだ?」

「………あ………」


俺の問いかけに目を逸らしながら固まる栞。


そもそもパフォーマンスというのは、うちの高校のミスコン独自のルールで、出場者には1〜2分ほどの時間が与えられ、その中で特技などを披露しなければならないというもの。

単にステージに立つだけじゃなく自己アピールまで求められるという、なかなかのハードルの高いコンテストなのだ。


「もしかして……なにも考えてなかったのか?」

「……うん……完全に忘れてたよぉ……」


「そうか……でもまだ1ヶ月もあるし、せっかく今二人でいるんだし俺となにか考えないか?」


「そっ、それいいね!そうしようっ!………ちなみに、薫くんはどんなことをするつもりなの?」


栞はぱあっと顔を輝かせ、嬉しそうに笑うと俺に興味津々な様子で訊いてくる。

実は俺、ミスターコンに出ると決めた日からパフォーマンスの内容はもう決めてあった。


というか、正確にはそれしかできないから選択肢が一つしかなかっただけなんだけど……


「俺は今日みたいに誰かにアートメイクしてあげるパフォーマンスにしようかなって」


「ふえぇ〜!確かに、こんなに女の子を可愛く出来るのは才能だもんねっ!しかも男の子でそれが出来るの、なんか格好いいし!………でさ、当日は誰にメイクしてあげるとかもう決めてるの?ねぇねぇ?」


「それは……えっと……」


ずいっと身体を寄せてきて上目遣いでこちらを見上げてくる栞に、思わず心臓がキュッとなってしまう。


肩が触れそうなほどの距離感。視線を少し下げれば彼女の自慢の魔乳がぽよぽよと揺れているのが目に入ってくる。


……これ、つまり声かけてってことぉ?


実のところ誰にメイクするかは決めていなかった。どちらかと言えば麗奈あたりに頼むつもりだった。

でも今のこの空気は……


「まだ決めてないんだけど……栞がよければ……手伝ってくれるか?」

「やるっ!!私やるっ!!絶対!えへへっ♡」


よしっ……正解だった……空気読めた……


俺の言葉にかぶせるように即答した栞がまるで花が開くみたいに微笑んでくれて、その笑顔を見てようやく俺は胸をなで下ろした。


でもいつもわからない。栞って、なんでこんなにも俺に距離を詰めてくるんだ……?


「じゃあ、また時期が近づいて来たら頼むな!……で、だ……栞はどうするんだよ?」


「あっ、そうだった……どうしよ?私どんくさいから得意な事とかあんまりないんだよねぇ……」


「そんなことないだろ?」


「「うーん………」」


二人して顎に手を当て真剣に考え込む。

そして、1分ほどが経った頃だろうか……突然俺の脳裏にアイデアが閃き、その沈黙を破った。答えは最初から目の前にあったんだ……


「そうだ!栞には料理があるだろ!こんなに美味しい料理が作れるんだから……それでなにか出来ないか?」


「料理は確かに得意だけど……1分ちょっとしかないんだよ?」


「それはそうだけど……パフォーマンス的にサッと作れるなにか……ないのか?」

「う〜〜〜ん………」


口にしてはみたはいいが、料理スキル皆無な俺にはそれ以上の提案なんて出てこない。再び訪れる沈黙。

頭を悩ませる俺たちの前で今度は栞がふと口を開いた。


「あっ!もしかしたら出来るかも!!……薫くん、もう少しだけ私に付き合ってくれる?」

「ああ、いいけど……?」


「じゃあ、ちょっと一緒にキッチンまで来てっ!せっかくだしこのまま試してみたいことがあって………」

「試したいこと??……おいっ栞!?」


何かを思いついたのか栞はおもむろに立ち上がり、俺の腕を引いて部屋を出る。

そしてそのまま、1階のキッチンへとグイグイ俺を引っ張っていった———



————



目の前ではものすごい手際で卵を溶いていく栞の姿があった——


銀のボウルに菜箸を突き立て、リズミカルに混ぜ合わせるその動きは俺からすればまるで曲芸のようだ。


「1分ちょっとで作れる料理、一つだけ思いついたの!厚焼き卵!それでどうせなら薫くんに時間も計ってもらって、味見もしてもらいたいなって思って……」


「全然いいけど……味は舞台上では関係ないんじゃ?」


「ダメだよ!美味しくなきゃ!私のプライドが許せないのっ!」


「おッ……おう………そっか……そうだよな……」


どうやら俺は栞の琴線に触れてしまったようだ。

ファッションに夢中になると我を忘れる俺と同じで、栞も料理になると人が変わるのかもしれない。


俺はこれ以上余計なことを言わないように気をつけながら、じっと栞の姿を見守っていると……


「よしっ、卵準備完了……薫くんっ、時間計ってもらってもいい?」

「おっけ、まかせろ!」


栞のあまりの真剣な表情につられて俺まで背筋が伸びる。


コンロに火をつけた彼女は、深く呼吸を整えるように一度だけ大きく息を吸い……そして吐き出すようにポツリと一言。


「じゃあいくよ……ふっ!」


静かな部屋にジュッという音が響く。

フライパンに注がれた卵が香り立ち、俺の五感を刺激する。


栞の動きは一分の隙もなく、流れるように卵を巻いていく姿は圧巻だった。

それを見ているだけで時間が止まったように思えた。


「はいっ完成っ!これで何分くらい!?」


パッと俺に現実が戻り、彼女は皿を掲げて俺の方を見つめてくる。


「えっと…………おっ!ほぼ二分だ!」

「やったぁ!!じゃあ大きさとかを調整して練習すればこれでいけそうだねっ!」


ピョンッと跳ねそうなくらい喜ぶ栞が可愛すぎて俺もついニヤけてしまう。

ようやくパフォーマンスの目処が立ち安心できる……そう思ったその瞬間——


栞は出来たての卵焼きにそっと箸を入れ一口分に切ると、それをまるで宝物みたいに丁寧に持ち上げはじめた。


「じゃあ次は味だねっ!……薫くんっ………あ〜〜〜ん♡」


えっ?栞?なに?……まてまてまて……こっ……これは!?これは世に言うあ〜ん!?


ほんのりと頬を染めた栞がちょこんと開いた唇のまま、なぜか恥ずかしそうに厚焼き卵をつまんだ箸をこちらに伸ばしてくる。


「しっ!?栞!?自分で食べれるって!?」


童貞特有の防御反応が思わず発動してしまい俺がそんな事を口走ると、栞は明らかに不満げな顔で頬をぷくっと膨らませ、唇を尖らせてこっちを見つめてきた。


「むっっすぅぅ……いいじゃん、誰も見てないんだし……食べてくれたって……」


「あっ、えっ、えっと……」


拗ねた。完全に。

そして俺は……観念した。


拒否権なんてもうとっくに消えてたんだ。なら覚悟を決めるしかない。


「……あっ………あ〜〜ん」

「えへへっ♡そうそう、初めからそうしてよっ……あ〜〜ん♡」


栞にあ〜んされた厚焼き卵がそっと俺の口へ運ばれる。

味なんてわかるはずない。ただ心臓の音だけがうるさくて。


こうして、その場の流れで俺はあ〜ん童貞を無事に卒業したのだった。

幸せ——


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