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スレンダーなのに色々でっかい地味で気弱な中田さんをクズ彼から救った俺は、全力で彼女を可愛くしてあげたい。  作者: ファッション捜査課のスカリー


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第27話 残酷さと優しさの狭間で

栞が無事に一歩を踏み出し胸を撫で下ろしたのも束の間。教室の空気はすぐにミスターコンの話題へと切り替わっていた——


「ではミスターコンの出場者についてですが、同じく推薦したい人はいますか?」


冷静な声で告げる委員長の言葉にクラス全体がしんと静まり返り、互いに顔を見合わせるも誰ひとりとして口を開こうとしない。


男同士の推薦は冗談にしても少し悪ノリが過ぎるし、かといって女子からの推薦は好意の表れとも取られかねず、誰もが言い出しにくいのだろう。


そんな重苦しい空気を破ったのは、やはり栞だった。


「あのっ!私、推薦したい人がいますっ!」

「中田さん……?どうぞ、誰を推薦しますか?」


いまだに冷静さを崩さない委員長と、あまりに意外な推薦者に驚きがクラスを包む。


(えっ?中田さんが?)

(誰誰っ!?)


そんなざわめきの中、栞は懸命に声を振り絞り俺の名前を呼んでくれた。


「わっ、私……薫くんと一緒にミスコンに出たいんですっ!だから、薫くんを……雪村くんを推薦させて下さい!」


予想外だった……

彼女の放ったひと声が、まるで火種のようにクラス全体に広がり今までにない騒然としたざわめきが巻き起こる。


(はぁ!?雪村!?あの変人の!?)

(うわぁ……マジかよ?大丈夫か?一応クラスの代表だぜ?)

(えっ!?中田さんって……そういう趣味なの!?)

(なになに?あのふたりってどういう関係なの?)


あのときの温かな拍手を送った人達はどこへ行ったのか。

今はただ、棘のような言葉が空気を裂いていた。


俺のことをどう言われようが構わない。もともと、そう思われても仕方ない人間だ。

だが、その矛先が栞に向いた瞬間、言葉にできないほどの罪悪感と申し訳なさが胸を満たしていく。


変わろうと必死に頑張っている彼女を、邪魔しているのは俺じゃないか……

栞、ごめん。俺がこんなんだから……


悔しくて、不甲斐なくて、気付けば歯を食いしばりながら拳を握りしめていた。

世の中は残酷だ。誰もが認められるわけじゃない。


そんな心ない言葉は栞の耳にも届いてしまったのだろう。

彼女の顔から笑みが消え、悲しげに唇を引き結ぶ姿が視界に映った。


「えっと、でも、薫くんはそんなっ……凄くいい人でっ……そんなっ……変人なんかじゃ……」


必死に俺を庇おうと、震える声で言葉を探す栞の姿が痛いほど胸に刺さる。


もういい……これ以上、無理しなくていい……


俺がなんとかすればいいだけの話だ。あんな辛そうな栞の顔を見ていられるわけがない。


どうにか今の状況を収める方法はないかと頭をフル回転させる。

臆病なフリをして推薦を断りながら栞をフォローしつつ、俺がダサい奴として笑いものになる……

それが最善策かもしれない。


そう思って口を開こうとしたその刹那——

教室の空気を裂くように鋭く低い声が響き渡った。


「なぁ……あんたたちさ、薫の何を知ってるわけ?さっきから黙って聞いてれば想像だけで好き勝手言いやがって……あーしの親友をそんなふうに言われるの、マジ最高に気分悪いんだけど?」


れっ……………麗奈!?お前、そんな事したら……


椅子にもたれ、腕を組み、普段の明るさが嘘のような鋭い視線でクラス中を睨みつける麗奈。

その威圧感に誰もが息を呑み、教室がピタリと静まり返る。


それでも彼女はその沈黙すら意に介さず、冷ややかな目で教室全体を見回しながら言葉を重ねていった。


「で?薫のどこがダメなんだよ?言ってみろよ?他に推薦したいヤツいんの?あーしから見たら、あんた達みたいな心も見た目もダッサいやつよりよっぽどイケメンに見えるけど?しかも髪型変えて超カッコ良くなってんじゃん?……そこの女子たちもカッコいいって言ってたよね?」


へっ……?それ、さすがに言い過ぎじゃ?……てか俺ってそんなこと言われてたの……?


つい口に出しそうになるが今の空気に口を挟めるはずもなく、俺はそっと口をつぐむ。


その後も誰ひとり麗奈に反論するヤツは現れなかったが、それでも麗奈は言葉を止めなかった。


「見てみなよ中田さんの顔。勇気出して薫を推薦したのに、自分の推しがこんな目にあって可哀想じゃん?誰も手ぇ挙げなかったくせに、いっちょ前に口出ししてんじゃねーよ!……委員長!あーしも薫を推薦するよ!むしろこのクラスで一番カッコいいって思ってるし……中田さん見る目あるよね〜!ねっ、中田さん!」


「かっ……片桐さんっ……!?」


栞にそっとウインクを向けた麗奈。

それはいつもの彼女らしい明るくて茶目っ気たっぷりな仕草で……栞の表情が少しだけ柔らかくなったように見えた。


いまだ張り詰めた空気感の中、委員長も流石に動揺しているかのように言葉を詰まらせながら俺に問いかけてくる。


「えっ……えっと……で、では雪村くんは推薦を受けますか?」


栞と麗奈の気持ちに応えるためにも……引くわけにいかねぇだろ!

そんな思いは声にも乗っていたんだと思う。


「もちろん!受けます!」


いまだ騒然としたままのクラス。

このままではさすがに良くないし、何よりわざと悪役を買って出た麗奈を放っておくわけにはいかない。


そう思った俺は拙いながらも空気を変えようと、そのままの流れで必死に声を張り上げた。


「みんなっ……そのっ、麗奈は本当にいいヤツなんだ。だから俺のことを庇ってあんなふうに言ってくれたんだよ。だからお願いだから麗奈のことは悪く思わないでくれ!……それにみんなの言う通り、俺はちょっと変わってるって自覚もあるし、そう思われても仕方ないとも思ってる……でも、出るって決めたからには本気でやるつもりだから……だから俺にチャンスをくれないか?」


思いきってぶつけた言葉にクラスの空気が変わった。

戸惑いながらも優しさが滲む声が徐々にこぼれはじめ、やがて俺の背中を押すような応援の声も届いてきた。


(ごめんな雪村、片桐……俺たちそういうつもりじゃ……)

(わるい……ついその……みんなに流されてあんなこと言って、すまんっ雪村!)

(麗奈……ごめんね……)

(雪村くんっあたし応援してるよ!)

(私は雪村くんのこと、隠れイケメンって思ってたし応援するわよ?)


いつの間にかクラスは一つの空気で満たされていた。


安堵と共に漏れた俺の小さなため息は、周囲から湧き上がる応援の声にあっさりと飲み込まれていく。


こうして俺と栞はミスコンとミスターコンに出ることが正式に決まり、それが、二人の青春を大きく揺さぶるきっかけになる——



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